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話し合い

「それで、この後どうするの?」

正直どうでもいいけど、関わった以上何かしらしたほうがいい気がする。

「どうって、私と彼の家族に本当の事を話します。」

「それがいいでしょうね。一応ついて行こうか?」

「え?」

一応私も当事者だし、何より、

「彼の家族が、怒り狂って貴女に何かするかも知れないよ?」

「でも、助けられなかった貴女の方が、確率は高いんじゃ…」

確かに、二人の存在を知っていて助けなかった。

でも、その情報は伏せてある。

つまり、たまたま通り掛かった私が、夏海を助けたという事になる。

「二人の存在を知らなかった私にどうしろと?」

「確かに、それを言えば反論出来ませんね。たまたま出会った人の状況なんて、分からないですし。」

「そう、反論してきたら、それは屁理屈か感情論。それか、ただの理想的な戯言だけ。」

それに、彼は自ら進んで囮になった。

彼の覚悟に、他人が口を出すのはどうだろうか?

「分かりました、今から電話してみます。もしかしたら、今日中に話し合うかも知れません。」

まだ、早朝の五時だから、そのほうが確率が高いかも。










予想通り、今日話し合う事になった。

時刻は午前十時。

大抵の人が、出勤・通学済みの時間帯なので割と静か。

「それじゃあ、始めましょうか。」

夏海の父親が、話し合いを始めた。

すると、待ってましたと言わんばかりに、誠の母親が口を開く。

「誠が、誠が死んだのは本当なんですか?嘘ですよね?なにかの番組のドッキリなんですよね?」

母親は、現実を受け入れたくないらしい。

「管理局から電話が来ているはずですよ?息子さんは、残念ながら…」

私が、そう言うと、母親は泣き崩れてしまった。

誰も、慰める事が出来なかった。

「あの、息子は、本当に助からなかったのですか?」

誠の父親が、私に問うてきた。

「私が、夏海さんを助けたときに、探知を使ったときには、もう…」

「そんな…どうにか、ならなかったのですか?」

「私が、最初から探知していれば、息子さんも助けられたでしょう。」

「なら何故!!」

父親は、机を叩いて声を荒げる。

「私は、全知全能の神ではないんですよ?二人の存在は、たまたま知っただけで、駆け付けた頃には時既に遅し。これでどうしろと。」

「そうだな…すまない、軽率だった。」

「いいですよ。」

部屋に気まずい空気が流れる。

「どうして、こんなことになったのですか?」

誠の母親が、夏海に質問した。

「彼と、デートの最中に転移トラップを踏んでしまったみたいで…それで、転移した先が五十一階層でした。」

五十一階層に繋がる転移トラップ、マップを調べたけど、そんなものは無かった。

つまりは、未発見トラップ。

「それで、しばらく身を隠してたら、オーガが横を通って…」

夏海が口ごもる。

「大丈夫?」

「はい…あの!」

突然、夏海が立ち上がり、土下座する。

「申し訳ありません!!私のせいなんです!!」

その場の全員が困惑した。

もちろん、私も困惑していた。

「私の、私のスマホのアラームが鳴ったせいで!オーガに見つかって!誠くんは、私を逃がすために!!」

悲痛な叫びは、泣き声が混じり始めた。

「誠くんが死んだのは、私のせいなんです!!いえ、私が殺したんです!!」

まずい、これでもしあの二人が何かしてきたら…

私は、夏海の横に行き、何が起きてもいいように備える。

「顔を上げてください。」

誠の父親が、冷静な声で夏海に、顔を上げるよう促す。

夏海も、最初は顔を上げなかったが、二回目のときに、私も顔を上げるよう促した事で、ようやく顔を上げた。

「さっきの話は、本当ですか?」

「はい…」

「そうですか…」

父親は、質問したあと、大きなため息をつき、

「誠は、最期まで夏海ちゃんを守ってたか?」

「はい!私を逃がすために囮になってまで…」

「そうか…」

空気が重たい…

「白神さん」

誠の母親が口を開く。

「はい、何でしょう?」

私は、顔を上げた母親の目を見て、警戒体勢になる。

母親の目には、殺意がこもっていた。

「どうして、息子を助けてくれなかったのですか?」

「居ることを知らなかったからと、さっき言ったはずですが?」

「貴女は、五十一階層に行けるくらい強いんでしょう?なら、どうして息子を!!」

錯乱してるのか、それとも八つ当たりか…

すると、母親が飛び掛かってきた。

私は、冷静に結界を張って防御する。

「逃げるな!!この、人殺し!!」

母親は、何度も私の結界を叩き続ける。

「やめろ!その人は悪くない!」

父親が止めに入るが、止められない。

「大丈夫です、奥さんに私の結界を破壊出来るほどの力はありません。私の心配は大丈夫です。」

「ですが…」

「落ち着くまで、好きなようにやらせてあげてください。」

「分かりました…」










その後も、誠の母親は、私に罵声を浴びせながら、私の結界を叩き続けた。

途中、何度も父親が止めに入ろうとしたけど、必要ないと言っておいた。

「ハァ…ハァ…出てきなさいよ、クソ女!!」

「私を殴ってもいい事なんて、無いですよ?」

「うるさい!損得なんてどうでもいい、誠を殺した貴女を、誠の代わりに殴る!」

「ハァ」

これは、一回殴らせた方がいいか?

多少怪我しても、回復魔法ですぐに治せる。

「これでいいですか?」

私が結界を解くと、すぐに母親が殴ってきた。

「な!?」

しかし、私は母親の拳を掴んで受け止める。

「私は、回復魔法が使えます。多少の怪我はすぐに治せます。だから、この人の好きにさせてあげてください。」

そう言って、手を離す。

すると、母親は私を押し倒して、馬乗りになる。

そして、何度も何度も私の顔を殴ってきた。

しばらく母親に殴られていると、

「もういいだろ、戻れ。」

誠の父親が、母親を引き剥がす。

私は、すぐに回復魔法で治療する。

そもそも、治療する程の怪我はしてないが、一応しておく。

「白神さん、ありがとうございます。」

「いえ、これくらい、別にいいですよ。」

私は、立ち上がり、

「これ以上居ると、また奥さんが暴れるかも知れないので、私は退席させてもらってもいいですか?」

「ええ、構いませんよ。」

「ありがとうございます、さようなら。」

さて、もう一回ダンジョンに行くか。

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― 新着の感想 ―
[一言] いい感じに浮世離れして来て好感が高ぶる。
[一言] 天使ちゃんかわいそう。゜(゜´ω`゜)゜。
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