表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/93

解析と焼き鳥

「ありがとう、今日はとっても楽しい一日になったよ。」

「色々してもらってすいません、白神先輩。」

「いいわよ、私も二人の恋愛の様子を見てて楽しかったし。」

下ネタと恋愛は、万国共通だからね。

誰が見ても楽しいものなのよ。

「はい、タクシー代。」

「ありがとう、天音はどうするの?」

私か…

「加藤さんを拾って、焼き鳥屋にでも行こうかな?って考えてる。」

そう言うと、二人は哀れむ様な目をして、

「加藤さんに優しくしてあげるんですね。先輩」

「良かった、顔も知らないけどなんだか嬉しい気持ちになるね。」

正直、どうして二人が感動してるのか、まったく分からなかった。

あんな、碌でもない女に同情する理由が分からない。

…いや、知らないからだけなんだろうけど。

そこに、タクシーがやって来る。

「それじゃあ、またね。」

香織が、タクシーの中に入った。

「先輩、今日は本当にお世話になりました。」

矢野ちゃんもタクシーの中に入っていった。

私はそれを見送ると、スマホを取り出し、電話をかける。

「もしもし、加藤さん?」

『天音ちゃ〜〜ん!!』

私は、思わずスマホを耳から離す。

「まだ仕事中ですか?」

『うん、でももうすぐ終わるよ?』

「なら、ちょうど良かった。焼き鳥屋にでも行きません?私が出すので。」

スマホの奥から息を呑む音が聞こえて、嫌な予感がした私は、スマホを耳から離した。

『ありがとう〜~!!』

スピーカーにしてないのに聞こえる程の大声、周りに人が居なくて良かった。

『八時くらいに天音ちゃんの家に行くね?』

「分かりました、待ってますからね?」

『ありがとう!天音ちゃん愛しt』

変な声が聞こえたので、途中で電話を切った。

八時?今六時だよ?

…取り敢えず、家に帰って魔力操作の練習でもしようかな?

私は、昇華者の脚力と持久力をフル活用して、家まで走った。








「欲しいなー、転移魔法。」

一般人とは、比較にならないくらいの持久力があるとはいえ、移動が面倒くさくなってしまう。

「転移魔法で、シュッ!ってやってパッ!って家に帰れたらな〜。」

空間収納のやり方を解析すれば、出来ないことはないだろうけど、

「解析がひたすら面倒くさい。」

前にも、空間収納を解析して、空間魔法を使えるようになろうとしたけど、結局出来なかった。

「もう少しだけ、やってみるか…」

私は、空間収納を起動して、解析を始める。

「ん?解析ってこんなに簡単だったけ?」

まだまだ時間が掛かりそうとはいえ、以前解析した時よりも早く解析出来ている気がする。

「レベルアップの恩恵かな?」

レベルアップして、頭が良くなった、って話はよく聞く。

それの影響だろうか?

そんな事を考えていると、

ピンポーン

家のチャイムがなった。

「はーい…加藤さんか…」

「ねぇ、酷くない?」

加藤さんは、半分涙目になっている。

「というか、もう八時なのか…」

「?」

加藤さんが、如何にも?マークが浮かんでいそうな顔をする。

「何してたの?」

「空間収納を解析して、空間魔法を習得しようとしてました。」

「うわぁ…」

加藤さんは、顔を歪める。

「それ、めっちゃ大変だよ?電卓無しで、十桁✕十桁をするようなものだよ?」

そんなに難易度が高いのか…

そりゃあ、2時間くらい一瞬で過ぎて当然か…

「まぁ、良いじゃん。それより、焼き鳥屋に早く行こうよ?」

「お酒が飲みたいだけですよね?」

「えへへ〜」

「可愛くないですよ?」

あ、めっちゃ落ち込んでる。

う〜ん、ここまで落ち込まれると罪悪感が…

「介護とかもするので、好きなだけ飲んで下さい。」

「やったぁ~」

きっと、尻尾があったら、ものすごい勢いで振ってそうな喜び方をしてる。

というか、無いはずの尻尾が見えてる…疲れてるのかな?

私は、ルンルン気分の加藤さんについていったせいで、周りから、奇妙な物を見る目で見られた。

解せぬ。







「イヤッホー!お酒〜!!」

「これ何杯目ですか?ちょっとハイペースすぎるんじゃ…」

「イェ~イ!私はウサイン・ボルト〜!!」

「駄目だこりゃ。」

加藤さんは、ハイペースにお酒を飲みすぎて、すでにおかしくなっている。

「すいません、氷が無くってしまいまして…」

奥から、店員が申し訳無さそうに出てきた。

「おいおい、ふざけんなよ!?」

ガラの悪そうな酔っぱらいが、店員にいちゃもんをつけ始めた。

「今すぐ走って買ってこいよ、氷。ヌルい酒なんて飲めるかよ!」

「申し訳ございません。」

「んだと、ゴラァ!!」

男が拳を振りかぶる。

奥にいた女性の店員が小さく悲鳴をあげる。

そして、男の拳が店員に当たりそうになったとき、

「ヤンチャが過ぎるよ、おっさん。」

私が拳を止めた。

「何だとクソガキ!!」

男は、私の手を振り払おうとするが、ピクリとも動かない。

こいつ、冒険者か?筋力が一般人より遥かに強い。

店員を殴っていたら、どうなっていた事か…

「チッ、離せ!」

「冷たい酒が飲みたいんだろ?私は氷魔法が使える。氷ならいくらでも出してやる。けど、」

私は、冷気と殺気をブレンドした魔力を放出する。

すると、加藤さん以外の全員が顔を青くする。

「お前の頭を直接冷してからだ。」

私は、髪の毛だけを氷漬けにする。

「ヒィ!!」

そして、冒険者カードが男のポケットから落ちてくる。

ランクはEランク。

「調子に乗るなよ?雑魚冒険者。」

私は、一回睨みつけて席に戻った。

「ヒュ〜、流石だね〜天音ちゃん。」

「加藤さん、残業ですよ?ほら。」

私は、男の冒険者カードを加藤さんに渡す。

すると、加藤さんは嫌そうにして、

「明日するから、預かっとくね~」

と言って、カードをポケットにしまった。

そこで、さっきの男が口を開く。

「俺のカード…」

ああ、そうか…

「言ってなかったね、この酔っぱらいは、ダンジョン管理局の一応エリートの加藤。一般人への暴力行為でペナルティが発生するね。」

男は、魂が抜けた様な顔で座り込んだ。

因果応報ね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ