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焼き肉

翌日

「…」

私は、通帳を見て絶句していた。

なにせ、ゼロが8つあったのだ。

「どうしたの天音、通帳なんて眺めて。」

「お母さん、これ見て。」

私は、お母さんに通帳を見せる。

お母さんは、通帳を睨んだあと、フリーズしてしまった。

「お母さん?大丈夫?」

「ハッ!…天音、何したの?」

「凄い魔石を国に売った。」

お母さんは、またフリーズしてしまった。

今、解釈している最中のはず。

「それで、ゼロが8つあるの?」

「うん、高値で売れるって聞いてたけど、まさかここまでとは…」

「…一応借金は返せるわね。」

借金は、約2000万。

入っていた額は、一億。

8000万も余る。

これでも、5階層のボスの魔石なんだよね。

十階層とか二十階層のボスの魔石は、一体いくらになるんだろうか?

「取り敢えず、今日は色んな所に借金を返してくるから、天音はゆっくりしてて。」

「え?私はダンジョンに行くけど?」

「あー、自由にしてて。」

そう言って、お母さんは通帳を持って出ていった。








私は、組合に向かう最中、ちょうどいい焼き肉屋を見つけたので、中に入った。

「いらしゃいませー!!」

中から元気のいい男性の声が聞こえてくる。

「何名様ですか?」

「二人です。個室空いてますか?」

「お二人様個室ですね?こちらへ。」

私は、もうひとりを連れて個室に入る。

「ご注文がお決まりになられましたら、こちらのベルを鳴らして下さい。ごゆっくり。」

私は、向かい側の席に座った女性を見て、

「昨日ぶりですね、加藤さん。」

私が家から出たあたりから、ずっとつけられていた。

隠す気はないらしい。

私でも簡単に気配を感じ取れるくらいだ、元々隠す気なんて無いんだろう。

「私が“何”か知っている人は?」

「私と局長だけですよ。」

「気を使ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます。」

私は、ベルを鳴らす。

この時間帯なので、店員さんはすぐに来てくれた。

「ご注文はどうされますか?」

「塩タンを5人前とタレカルビを5人前お願いします。あと、ジュースはコーラで。」

「ハラミ二人前とホルモン二人前、ドリンクは生ビールで。」

「「え!?」」

この人はなんて言った?

私の耳がおかしくなって無かったら、生ビールって聞こえたんだけど?

「え、えーっと、生ビールお一つですか?」

「はい。」

「加藤さん、今仕事中ですよね?」

すると、加藤さんは、キョトンとした顔をして、

「天音ちゃんが出してくれるんでしょ?」

「は?」

「え?」

何言ってんのこの人。

「私は、加藤さんが出してくれると思って入ったんでしけど…」

「天音ちゃんが入ってたから、出してくれるのかなって…」

店員さんが困ってる。

そうだよね、急に会計の押し付け合いが始まったんだもん、困惑くらいするよね。

「加藤さん、そこは大人として出しませんか?」

「いやいや天音ちゃん、昨日大金が口座に入ったでしょ?そこから出してよ。」

「あ、あの。ご注文は…」

「あ、以上です。」

そう言うと、店員さんは逃げるように去っていった。

「はぁ、お母さんに渡してあります。手元にあるわけ無いでしょう?」

「あらあら?“特別”な冒険者の天音ちゃんなら、手元に十万くらい持ってると思うけど?カードとかで。」

私達は、ニコニコしながら話している。

目は、まったく笑ってないし、殺気が漏れ出てるけど。

結局、どっちが払うかは、決まらなかった。








焼き肉屋の厨房

「注文は?」

「塩タンとカルビが5人前、ハラミとホルモンが二人前ドリンクはコーラと生。」

「生!?昼にすらなってないよ?」

「ちゃんと確認した。それと俺はもうあそこに行きたくない。」

「は?」

店員達は、訳が分からないという顔をする。

「どっちが払うかで揉めてるんだよ。しかも、冒険者と多分、管理局のやつだからめちゃくちゃ怖いんだよ。」

「二人とも女性なんだよね?」

「ああ、冒険者の方は、高校生くらいの見た目だった。管理局の方は、大人の女性って感じ。」

「あー、管理局の人出さないつもりなの?」

「何でも、冒険者の方が、昨日大金を手に入れたらしい。そこから出してよって言ってたな。」

冒険者は、成功すれば大金を得られる。

きっと、それで懐に余裕があるんだろう。

「なんと言うか、大人気無いね〜」

「だな。よし!俺は、怖いから行かない!」

「ビビってる〜?」

「行けば分かる。」





「お待たせしましたッ!?」

ドアを開けると同時に殺気が流れ出してくる。

焦ってドアを閉めてしまった。

「な?言っただろ?」

「あれが、殺気ってやつか…殺されるかと思った。」

「開けるぞ?いいな?」

「うん、開けて。」

今度は、殺気は流れ出してこなかった。

「塩タンとハラミです。」

「コーラと、生ビールです。」

二人のお客様は、肉とドリンクを受け取る。

「先にお肉食べましょう。支払いは、その時考えればいいですし。」

「そうだね、先に食べよう。」

「カルビとホルモンは、少々お待ち下さい。」

そして、部屋を出た。

「「は〜」」

殺気の事も相まって、精神的に疲れた。

「次からは、バイトくんに任せよう。」

「どんまいバイトくん…」

結局、後の注文はバイトくんがやった。









「あ、ああ、あの、お会計は…」

緊張で、アンデットみたいになったバイトくんが、レジ打ちをしている。

まぁ、私達が悪いんだけど…

「私が払います、カードで。」

私は、冒険者カードの買い物機能で会計をする。

加藤さん?

酔っ払って使い物にならなくなってる。

「お会計…8万8000円です…」

とても、二人で来たとは思えない額になってる。

まぁ、私が高い肉を大量に食べたせいなんだけど…

「ありがとうございました…」

取り敢えず、この酔っぱらいをどうにかしないと。

「これ、迷惑料。」

私は、手元にあった二十万をバイトくんに渡して、焼き肉屋を出た。








「お疲れさま!大丈夫だった?」

「誰のせいだと思ってるんですか?」

「いいじゃん。それで、いくら貰ったの?」

バイトくんが、茶封筒を開く。

「…二十万入ってます。」

「二十万!?流石冒険者、ポンと二十万も出せるって…」

「どうしましょう…」

バイトくんが困惑してる。

「貰っておけば?あげるって言ってたんでしょ?」

「まぁ、そうですけど…」

「今月金欠なんでしょ?臨時収入とでも考えといたら?」

「そうですね。」

にしても、二十万か…

私がすれば良かった。

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