魔石
「へぇ、リッチの魔石ね〜?」
私は、長谷川さんにモモ姐さんを紹介して、魔石を売ることにした。
「組合で保証した後、オークションに出すと、高値で売れるわよ〜?」
「そうなんですか?」
「まぁ、売れた額の2割を組合に取られるけど、組合で売るより、ずっと高値で売れるわよ〜?」
一個で相当価値のあるものじゃないとだめだろうけど、高値で魔石を売るには良いかもしれない。
「じゃあ、それで売ります。」
「分かったわ、ちょっと待ってて。」
モモ姐さんは、魔石を奥に持っていった。
十分ほど待つと、モモ姐さんが帰ってきた。
「保証の登録は終わったわ。魔石は組合に預けておく?」
「じゃあ、預けます。」
後は、オークションで高値で売れるのを待つだけ。
そうだ、あのサイクロプスの魔石も高値で売れるだろうか?
「モモ姐さん、これも登録出来る?」
「これは…随分と大きいわね。…確認してくるわ。」
モモ姐さんは、「よっこいしょ!」と言って、奥へ行った。
「天音ちゃん、あれは?」
「秘密です。」
「また一つ、謎が増えたね。」
サイクロプスの魔石は、どれくらいになるだろうか?
そして、一分もしない頃に、
「天音ちゃん、ちょっと来て!!」
まったくオカマボイスをしていない、モモ姐さんが走ってきた。
「え?わ、分かりました。」
そして、組合の奥まで連れて行かれた。
「長谷川さん、どさくさ紛れて、侵入するのどうなんですか?」
「いいじゃん、怒られてないんだから。」
「親子だと、思われてるんじゃないですか?」
長谷川さんは、背が高い。
それに、若々しい印象で、大人のお姉さんって雰囲気の、クールレディという見た目だ。
そして、応接室?みたいな部屋に連れてこられた。
「それで天音ちゃん、これ、どこで手に入れたの?」
私は、長谷川さんの方を見る。
「え?何?私なにかした?」
「ああ、言いづらいのね。長谷川さん、少しだけ外で待ってて貰えます?」
「え?いいですよ?」
そして、長谷川さんは出ていった。
「それで、どこで手に入れたの?」
「試練の界の5階層です。」
「5階層、ボス戦ね。それでこんなものが…」
そんなにヤバイ魔石なんだろうか?
確かに大きいけど、1メートル以上ある魔石も過去にはあったらしいから、そこまで凄いとは思えない。
「この魔石はね…先に長谷川さんに入って貰いましょうか。」
私は、長谷川さんを呼ぶ。
「もう入っていいんですか?」
「ええ、大丈夫よ。それで、この魔石何だけど…」
モモ姐さんは、急に黙ってしまった。
なんか、緊張する…
「大きさの割に、とんでもない量の魔力を秘めてるの。」
「とんでもない量?それってどれくらいなんですか?」
「1メートルサイズの魔石と同程度、かしらね?」
「な!?」
この魔石にそれ程の魔力があるなんて…
一体いくらになることやら…
「これを買いたがる所を一つ知ってるんだけど、そこに売る?」
「高値で買ってくれますか?」
「それはもう、そこで売る?」
「はい、そうします。」
高値で買ってくれる所、一体どこだろうか?
大富豪とか、大企業とかかな?
魔石産業の大企業なら…
「ちなみに、買い取ってくれるのってどこなんですか?」
「国だよ。」
「「え?」」
質問した、長谷川さんだけでなく、私もびっくりした。
確かに、あと他に買い取ってくれそうな所って言ったら、国くらいだ。
「国って、日本のことですよね?」
「そうね、他国に売るつもりは無いでしょう?」
「まぁ、日本に売りますね。」
私は、日本生まれ、日本育ちの生粋の日本人だからね。
日本に魔石を売るのは当然かな?
その後、モモ姐さんの紹介もあり、明日買い取ってもらう事になった。
…モモ姐さんって何者?
翌日
「白神 天音さんですね?」
「はい、私が天音です。えっと、政府の人?」
組合に呼び出され、モモ姐さんに案内されると、いかにもという雰囲気の男女がいた。
「ダンジョン管理局の、加藤 紫織です。」
「同じく、ダンジョン管理局の柴山 晴人です。」
「えっと、冒険者の白神 天音です。」
硬いな〜、凄くやりづらい。
そして、ダンジョン管理局ね?
確か、国内のダンジョンの管理や、冒険者組合を介しての、ダンジョン内資源の買い取り、『脱走』の事前感知を行ってる、ダンジョン専門の政府機関だったはず…
「それで、例の魔石は?」
「これです。」
私は、空間収納から、魔石を取り出す。
そして、加藤さんに渡した。
「これですか…」
柴山さんが、カバンから何か機械を取り出す。
そして、虫眼鏡みたいになっている部分を魔石に近づける。
「12万M。上級ボスクラスの魔石です。」
上級ボス。
確か、ボスには五段階の強さがあったはず。
下級ボス 主に5階層から10階層のボスが当てはまる。
中級ボス 主に10階層から20階層のボスが当てはまる。
上級ボス 主に30階層以降のボスが当てはまる。
最上級ボス ダンジョンマスターや、ダンジョン最下層のボスが当てはまる。
特級ボス 昇華者が動くレベルのボス、人間では対処不可能。
という感じだったはず。
「この魔石、どこで手に入れましたか?」
「冒険者には、危険存在の報告の義務があります。黙秘はなしです。」
チッ、ちゃんと対策してるか…
「ある、“特別”なダンジョンのボスです。」
「特別な?」
「分かりました、“魔石の”出所については他の冒険者には、公開しません。ただし、局長には報告させていただきます。いいですね?」
「構いませんよ。くれぐれも、“内密に”お願いします。」
「?、??」
加藤さんは、話のわかる人で良かった。
でも、これから監視が付きそう。