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巨人

『ダンジョンは、異世界から転移してきた物である。』

そんな仮説を聞いたことがある。

確か、矢野ちゃんが自分が考えたかのように、情熱的に言っていた。

もし、それが当たっていれば、この記録は、異世界の物になる。

これは、ダンジョンで見つけた物だから。

そして、異世界には、空間を叩き割る事が出来る化け物が居ることになる。

『空間を叩き割る』

転移で空間を移動するなら分かる。転移魔法があるから。

しかし、空間を叩き割るなんて聞いたことがない。

そもそも、転移自体が高等技術であり、空間に干渉するのは更に難しいとされている。

つまり、空間を叩き割る事は不可能じゃない。

それでも、人類は未だに空間魔法の基礎である、転移を扱える“人間”は、世界に5人しかいない。

そして、昇華者ですら空間を使った攻撃に成功したものはいない。

つまり、今空間を叩き割った化け物は、昇華者以上の力を持っている。

そんなことを考えて、戦慄していると、空間の穴から人影が見えた。

…人影?

この距離で人影が見えるほど私のレベルは高くない。

つまり、人影自体が大きいという事になる。

「まさか…巨人?」


私のよみは当たっていた。あれは確かに巨人だった。しかし、その大きさは、私の想像を遥かに超えていた。

ただ、遠すぎて、正確な大きさが分からなかっただけだった。


「サイクロプス…」

出てきたのは巨人だけではない、サイクロプスもだ。

更に、別の影も出てくる。

「あれは…トロール?」

高い再生能力を持つ、厄介な巨人、トロール。

そういった巨人が何百、何千、何万とぞろぞろ現れた。

そして、私は信じられなものを見た。

「何…あれ…」

空間の穴が、急に茶色くなる。

黒に近い焦げ茶、私はあの色を知っている。

「まさか…目…なの?」

目、そう、とんでもなく大きい目だ。

そして、空間の穴から“指”が出てくる。

そう、指だ。

指は、穴をほじるようにして空間の穴を広げる。

そして、“手”が出てきた。

手は、更に空間の穴を広げていく。

遂に、穴から顔を出してきた。

「そんな…あれが、顔なの?…城と同じくらいありそうだけど…」

そして、空間がボロボロと崩れ落ち、全身が現れた。

その体は、天を見下ろす程に大きかった。

その時、近くでガラスが何枚も落ちてきたような音がした。

音のする方向を見れば、空間に穴があき、巨人達が現れていた。

「うそ…あれが巨人?」

その巨人は、ダンジョンでみた、サイクロプスと同じくらい、つまり、二十メートルくらいの身長を持っていた。

更に、サイクロプスは、その倍以上。

五十メートルはありそうな巨体をしていた。

私は、そこではっとする。

天を見下ろすあの巨人は、サイクロプスが虫に見えるほど小さかった。

サイクロプスで五十メートルなら、あの巨人は…

「数万…もしかしたら数十万…」

立てば大気圏まで届きそうな巨体という訳だ。

「化け物…ッ!?」

後ろで、爆発音のような轟音が響き、私は振り返る。

そこでは、天使と巨人の戦いが始まっていた。

そして、世界が発光して、あまりの眩しさに私は目を瞑る。








気が付くとそこはダンジョンだった。

サイクロプスを閉じ込めている氷には、亀裂が入っている。

氷はメキメキと音を立てていた。

どうやら、私にはあれが何だったのか、考える時間は貰えないらしい。

サイクロプスが、氷から出てこようとしているのに、私はまったく恐ろしくなかった。

あの化け物に比べれば、ただの虫けらだ。

あそこに居た、サイクロプスに比べれば、まだまだ子供だ。

こんなチビクロプス、私の敵じゃない。

そんな気がした。

氷が砕け散り、辺りに四散する。

「ウオオオオオオ!!」

サイクロプスのアンデットが、雄叫びをあげる。

私は、剣を引き抜き、

「来なさい、もう一度氷漬けにしてあげる。」

サイクロプスに向けて構えた。







正直、苦戦している。

「天氷!!」

天氷は、サイクロプスを包み込む。

しかし、簡単に砕かれてしまう。

聖属性で確かにダメージを与えているだろう。

しかし、そんなもの微々たるもので、一体あと何回天氷を使わせる気だろうか?

「仕方ない、あんまりやりたくないけど、接近戦をするか。」

私は、サイクロプスに向かって走り出す。

当然サイクロプスは、私を潰そうと、拳を振り降ろしてくる。

しかし、私は難なく回避する。

サイクロプスの懐に潜り込んだ私に、蹴りが飛んでくる。

「っぶな!?」

紙一重で蹴りを何とか回避する事に成功した。

私は、ジャンプでサイクロプスの腹に飛びつく。

そして、十字剣を振るってサイクロプスの腹を切り裂く。

「硬い!」

十字剣の刃は、サイクロプスの腹を切り裂いた。

それでも、刃の通りが悪い。

ゴブリンで、簡単に切れる感触に馴れてしまっていた私は、硬すぎる。

そして、やはり十字剣では長さが足らず、刃を内臓まで届かせる事が出来なかった。

「そうだ、どこかの漫画みたいに、うなじを斬れば…」

私は、サイクロプスの体を、飛び跳ねてうなじを目指す。

しかし、サイクロプスが身震いをして、私を振り払う。

「ぐぅ!」

私は、地面に叩き付けられる。

そこに、サイクロプスの蹴りが飛んでくる。

「がはっ!?」

私は、サッカーボールがシュートされたように、蹴り飛ばされる。

「ぐはぁ!?」

そして、壁に激突して血を撒き散らす。

壁には、絵の具を入れた、水風船を投げ付けたような跡が出来ていた。

全身が、痛い…

体から、生命が流れ出していく…

足が動かない…

手が動かない…

全身が思い通りに動かない…

死ぬ…

サイクロプスが、ゆっくりと近づいてくる。

とどめを刺す気か?

私は、とっくに死にかけてるのに…


・・・


いや、まだ死にたくない…

死にたくない!

私は、気合で回復魔法を発動する。

体に生命が戻ってくる、命が戻ってくる。

痛みが引いてくる。

手が動く、足が動く、全身が私の思い通りに動く!

「いける…私はまだやれる!」

今まで、離していなかった十字剣を握る手に、力が入る。

「私は、まだまだこれからッ!?」

私の体がサイクロプスに掴まれる。

サイクロプスは、後ろを向いて、

「まさか…やめろ…」

野球選手のピッチャーのように腕を振り上げ、

「やめて…やめて…」

狙いを定めて、

「嫌だ…嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」

私を、壁に向かって投げつけた。

「ーーーーーーーーーーーーーーッ!?」

私は声にならない悲鳴を上げて、凄まじい速度で壁へと、飛んでいった。

ほんの数秒…

しかし、その数秒が私には永遠に感じられた。

そして、数秒後。

赤色の絵の具が入った水風船が、





壁に赤い花を作った。





なんか、進○の巨人の地ならしみたいになっちゃいました。

あのクソデカ巨人は、始祖でも主人公でもないので、大丈夫です。

今回は、けっして、進○の巨人をイメージしたのではなく、北欧神話の神々と巨人の戦いをイメージして創作しています。

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