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Valentine 

作者: blueberry

バレンタインに好きな「あの子」にチョコを渡したい少年、みどり。果たして彼の想いやいかに?

*最後まで読んでいただけると!

 窓から差しこむ明かりが、あの子の横顔を照らしている。いつもいつも、窓際の席をくじ引きで引き当てちゃうあの子。出席番号がただでさえ39番なのに、毎回席替えでは同じような位置に座っている。

「えー、今日は2月13日。出席番号13番さん・・・・」

 僕は出席番号13番ではないので、関係ない、とその先生の言葉を左から右へ受け流す。2月13日。なんてことない1日だけれど、ひそかに高校生が胸を弾ませる日、だろう。明確に声として表されたことにより、僕ははっきり意識する。数学の時間、ということを少しばかり忘れて。二次方程式の解の性質なんて、今はどうだっていいんだ。今日の学習内容は大事ですよ、と先生は言ったけれど、僕にはそんな言葉、効き目などなかった。見てしまうのは、向いてしまう僕の視線は、あの子。一生懸命、寝るのを我慢してシャープペンを走らせているあの子の姿は、いつもと同様、とても愛らしくて、小動物のようだった。

 そんな風に頬を赤らめながら、授業は幕を閉じた。


 帰りのショートホームルームが終わり、僕は親友を待った。親友は放課後掃除が割り当てられているので、待つのには少々時間がかかる。

「あ、みどり、じゃね!」

 不意に声を掛けられたので声の主に視線を向けると、声の主はあの子。突発的な出来事であったため、僕は「へ?」と変な声を出してしまった。あの子は何驚いてんの?とくすくす笑いながら、テニスラケットを背負って走って行ってしまった。

 ああ・・・何と言う。この出来事があると最初から分かっていれば、もっといっぱい話せたのに、と僕は後悔の渦に溺れていた。

「みどりー今話しかけられてたね」

 たは、とニカニカ笑いながら現れたのは、僕の親友、あおいだ。僕はうん、としょげた風に落ち込んで返事をする。あおいは普通にバイバイって言えよ、と無責任なことを平然と言ってくるので若干イラっとしそうになるが、あおいにはこの気持ちがわからないのだろう。

「悪いね、遅くなった! よし行こう!」

 あおいはバッグを背負い、僕の手を引いて駆けていく。待っていた身である僕のことをおかまいなしに駆けていくので、あおいはややデリカシーがないと僕は思ってしまった。だがマイペースだけどいい奴っていうところが、あおいの憎めないところだ。


「ねーみどり、この駅前のデパートでいいんだよね」

「ああ。いいんだよ」

 僕たちが着いたのは、通学路の途中にある駅前のデパート。高校生がたくさん利用しており、いつも盛んである。あんまり僕は利用しないけれど、あおいはよく別な友人と来たりするようだ。

「でも、明日バレンタインだし、売り切れてる可能性もあるからね、なかったら別のとこにしよ」

 あおいは慣れた足取りで、お目当ての売り場に向かう。不慣れな僕は、おどおどしながらあおいについていく。あおいは辺りを見回し、まだあるよ!と僕を呼んだ。

「まだ売り切れてなかった。市販組は以外と少ないのかもね、手作り組が多いのかも・・・」

 やはり、手作りの方が想いは伝わるのだろうか。だが僕は、料理が極端に苦手だ。それをあおいに言ったら、みどりは市販の方がいいと的確に言われてしまった。

「めちゃ可愛い包装あるじゃん! あの子喜ぶって!」

 あおいは僕の肩を思いっきり叩いてははは、と公共の場なのに笑いだした。

 水色の包装、赤のリボン付き・・・・包装は様々で、それぞれの個性が光っている。可愛らしいモノがたくさん揃っていて、目の保養にはなるが、選ぶとなるとかなり時間を要しそうだ。

「ねー、これ可愛い!」

「ほんと可愛い!!」

 僕の隣に、他校の制服を着た女子高生が2人現れた。彼女たちも、友チョコなのか本命なのかはわからないけれど、チョコを買いに来たのだろう。

 あの子が好きな色は水色だが、リボン付きも可愛い。どっちがいいのだろう。しばらく悩んだが、やはりあの子のことを思うと、水色がいい気がして、水色の包装を僕は選んだ。

 僕が会計を終えると、あおいはニヤニヤしながら待っていた。

「みどり、何て言って告るの?」

「ずっと前から好きだったよ、とか?」

「みどり、シャイだけどちゃんと言えんの?」

「う、わからないけど。じゃあ、あおいだったらなんて言う?」

 そう僕が問い返すと、あおいは苦虫を嚙み潰したような表情になった。

「わからんよ、あたしは恋は知らんからね」

 だが、そんな苦い表情は、すぐさま消え去った。

「みどりが好きな気持ちを精一杯伝えな、拙くてもいいから!!」

 あおい。やっぱりいい奴で、僕の自慢の親友だ。

 中学生の頃、僕の想いを確立させてくれた、僕を認めてくれた張本人なだけある。

「じゃ、帰ろか、みどりの用事済んだことだし?」

 うん、と僕は頷く。明日、僕はなんて言うのだろうか。わからないけれど、きっと明日の僕が、どうにかしてくれるだろう、と僕は信じることにした。


 数日後。

 今日は、僕らの初めての「デート」だ。僕は腕時計に目をやる。早く来ないかな、そう思っていると、あの子は可愛らしく息を切らしながら走って来た。

「悪いな~みどり!! 部活でちょいと遅くなった」

 小刻みに肩を震わせているあの子は、やはり可愛い。僕は大丈夫、と手を差し出す。

「今日も可愛いね」

 僕がふふ、と微笑むと、あの子は笑った。

「みどり、俺のことほんと好きだね」

 あの子・・・・・ひびきは「高校生男子」にしては小さい身長を精一杯伸ばして、僕の視線に追いつこうとしていた。


最後まで読んでいただけましたか? 最後まで読むことで意味を成す作品となっています。

恋のカタチは人それぞれですよね。拙いですが、またまた作品を投稿していきたいと思いますので、ぜひ読んでいただけると幸いです。

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