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縁之島

 陽子は縁之島によく遊びに行った。自宅から近いので陽子の両親の房子と源一が休みの日に陽子を連れて出掛けていた。

 それは厚い雲が空を覆い尽くす日縁之島でのことだった。

その日陽子は源一にしかられて、拗ねていた。この島には沢山のお土産物屋が軒を連ねていて、陽子は房子に「あれがほしい!」「これがほしい!」とねだって、その中でエンゼルフィッシュの形をした鈴が入ったビニール製の風船を買ってもらった。でも色が水色しかなく、ピンク色が欲しかった陽子は、ピンクがよかったとずっとぐずっていた。すると源一が「ないものは仕方ないだろ!いいかげんにしろ!」としかった。源一は元々厳しい父親だったが、源一の怒る口調が怖くて陽子は源一にはなかなかなつくことが出来なかった。

 拗ねている陽子を房子が波打ち際まで連れて、足元まで近づく波まで手を引いた。ギリギリまで近づいては引いていく波に、陽子は面白くなって自分から波に近づいて行き、自分の足に波がかぶりそうになると、きゃ~っと歓声を上げながら房子の手を握って逃げて遊びだした。

 陽子がそうやって遊んでいる時、縁之島の奥の【わだつみのみや】の辺りに雲間から伸びた太陽の光が当る。波間で遊びながら陽子はその太陽の陽の光に気づいた。すると陽の光が当っている場所から、蒸気のようなものがスルスルと上昇した。それはまるで龍のように型取られS字にうねうねと揺れている。

「ママ、リュウみたい!ほら!あっち見て!」

陽子は興奮しながら房子の手を引っ張って縁之島の【わだつみのみや】付近に立ち上るものを指差して言った。

「ええ?どこどこ?・・・ママには見えないんだけど。」

房子は陽子が指差す方へ目をやるが、陽子の言う龍のようなものは見えなかった。

「それにしてもお日様の光が島に当ってきれいね・・・」

房子がそう言うと、陽子は

「リュウ見えた?そこにリュウがいるんだよ!」

なおも興奮しながら陽子は房子の手を引っ張って言うが、やはり房子には見えなかった。

 【わだつみのみや】の上空に揺らめく陽子に見えている龍のようなものは、島の下の砂浜でこちらを見ている陽子の方を眺めているようだった。


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