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3話 レオント村 1




すっかり日も落ちて、焚き火は明るいけど周りの暗さがハンパない。

電気のない世界なんだな〜と、また心細くなってくる。


私、これからどうなるんだろ……。


涙目になったので、ジェイに見られないように焚き火に背を向ける。


すると―――


「わぁ〜!すっご〜い!」


ものすごい数の星の空!


長野の某避暑地のはずれにあるおばあちゃんちは、山の上の方だったからすごい星空だったけど、これとは比較にならないわ!

街中のうちより明かりは少なかったけど、ご近所さんの窓の明かりとか、街灯くらいはあったもんね。

これはぜひ、焚き火の明かりも届かない所で星を見てみたい!


「すごい綺麗な星空だね! もうちょっと暗い所で見てきていい?」

「星なんか見てどうするんだ?ユアは変わってるな。 火から離れると危ないから一緒に行くよ」


焚き火から少しだけ離れて空を見上げる。


「わぁ…。やっぱりすごい綺麗〜!」

「そうなんだ、こういうのを綺麗っていうんだ。 今までそんな風に考えた事なかったな」


一緒に星空を見上げながらジェイが言う。


日本で見ていた星座は見当たらなかったけど、銀の粒をまき散らしたような星空。

焚き火の少しの明かりも届かなくなると、さらに壮絶に美しい。


こんな綺麗なものが見られて……

この世界にきて、初めてよかったと思える事だった。


あ。ジェイに出会えた事もよかった事だね!

隣にいるジェイを頼もしく感じながら、そんな風に考える。


もしかして、しばらくとか……。もしかしてこのままずっととか。

この世界にいる事になるのなら、少しずついい事や楽しい事を見つけていこう。

もしかして、また突然日本に帰れるかもしれないし。それまで楽しく過ごそう。


無限に広がっているような、暗くて美しい空を見上げながらそう思った。




朝目覚めると、身体は痛いし冷えてるし、初めての野宿はかなりキツかった。

それでも見張りをしないで眠れただけマシなんだろう。ジェイに感謝。


身体は痛いけど、朝の空気は冷たくて気持ちいい。思いきり深呼吸をする。

排気ガスの混ざった家の周りではそんな気は起きないけど、ここは本当に綺麗な空気だ。

何かいい匂いがする。花の匂いというか。


「ユア、何をしてるんだ?」

「深呼吸だよ」

「何だそれ?」

「胸いっぱい深く呼吸する事だよ」


この世界には深呼吸ってないんだろか?


「それをして何になるんだ?」

「何になるんだろ? でも綺麗な空気が身体中に回る気がしない?何か元気になるっていうか、やる気になるっていうか」


ジェイも深呼吸した。


「言われてみればそんな気がする。ユアは面白い事を考えるな」


面白いか?

というか、考えたの私じゃないから。


朝ご飯は、本当なら昨日の部活の休憩時間に食べようと思っていたクッキーを半分こ。ちなみに手作りです。


朝のお湯を沸かす前に、昨日のうちに沸かして冷ましておいた水をポットに注ぐ。今日もこれから、どのくらいかわからないけど歩くからね。


「ジェイ、その一リットルのポットあげるね。私は小さいポットが(三百ミリリットル)あるから」

「いいのか!すごくいいものなのに!ありがとう!」


赤いからどうかと思ったけど、喜んでもらえてよかった。


「私とお揃いになっちゃうけど、まぁいいわね」


保冷ポットはシリーズ物で、サイズも色も何種類もある。

高校に入学した時に新調したもので、私は部のチームカラーの赤を選んでいた。


「お、おぅ」


お揃いに反応したのか?ジェイはちょっと照れている。

ヤダなぁ。こっちまで照れるじゃないか。


おぉ!

明るくなったその辺を見渡せば、カモミールっぽいのが生えているのを発見。


くんくん。

匂い的にはそれっぽい。さっそく朝ご飯に合わせてお茶にする。


冷えた身体に染み渡るなぁ……。

ハーブティはジェイも気に入ってくれたよう。よかった。




朝食後、また私たちは昨日に引き続き色んな話をしながら歩いた。

移動手段が徒歩と馬車、馬に乗れる人は馬とか。

電車やバスって偉大だったんだな〜。

あ、自転車でもいいわ。今思うと自転車も偉大だ。


ジェイは笑いながら話していても、その辺でちょっと音がするとすぐ目を向ける。こういうのが、いつも周りに危険がある世界、冒険者って事なのかも。

平和に暮らしていた日本人の私は感心する。




太陽の位置からいって、そろそろお昼くらいかな。目指していた村についた。

よかった。ご飯になりそうなものは、もうなかったからね。


道は下りになっていたので、少し高いところから村全体が見渡せた。

グルリと木の柵で囲まれている、のどかな風景。

目渡せるくらいだからあまり大きくないのかな?といっても、点在している屋根の数は百くらいありそうだけど。


「このくらいの村だと冒険者ギルドはないだろな。村長さんのうちに行こう」


この国あるあるで、人口の少ない小さな村には色んな施設はないらしい。基本自給自足だし。

村の行事や事故がおきた時なんかは、村長さんの裁量で村人に割り振りされる。必要な事はみんな村長さんが決めるんだって。

村人で手に負えないような事は近くの町(の冒険者ギルドなど)に依頼するんだって。


小さな村には教会もないので学校的なものもない。なので、地方の村の人は読み書きができない事も普通で、というか、学ぶより少しでも家の手伝いをしないと食べる事にも困るんだって。


小さな村の子供達は、小さいうちは親の邪魔にならないように子供達で遊んでいる。労働力になれる十歳くらいになると出来る事から手伝っていくんだって。

驚く事に、成人は十五歳!

うそっ! 私、もう成人してるんだ!


ついでに、この世界の平均寿命は約四十歳。でもこれは長生きした方で、病気やケガなんかで人はあっけなく死んでしまうんだって。

なのでなるべ早く結婚・出産という訳で、十五歳で成人なのかな?ちゃんと職にもつくそう。

うん。日本では考えられないけど、元の世界ではそういう国もあったような。


ジェイは、冒険者だったお父さんから算数と、少しの文字は教わったんだって。

算数は依頼の数を知るためと、報酬をごまかされないために。文字は依頼に関する魔物や野獣なんかの名前が読めるように。

村出身なら、これはまあまあたいした事なんだって、ちょっと自慢そうに言っていた。


そんな、この国あるあるを聞きながら村の中に入っていく。

畑仕事をしている人たちや、何か作業をしている人たち、走り回っている子供達にも特に怪しまれる事なく、目があった人とは挨拶をしながら村で一番大きな建物に向かう。


なんていうか……。

とってもフレンドリーなのね。

もっと、よそ者が来た!的な視線を向けられるのかと思っていたよ。

そんな事をジェイに言うと、


「何それ。ユアのいた国ではそんなに閉鎖的なんだ?この国では渡り歩く冒険者なんて珍しくもないから、また来たくらいにしか思われないよ」


と笑っていた。

そうなんだ。何か色々読みすぎているのかも。

そうしているうちに、村長さんの家と思われる大きな建物についた。




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