スーパー中学生無色
山本たちに着いてと従業員用の通路を歩いていく。
それ程時間は掛からず、また扉があった。その中に入ると生存者が10名程いた。老人や女性が多い。
「無色君、山本さんどうでしたか?」
地べたに座っていた一人のスーツ姿の若い女性が帰ってきた二人に近づき問いかけた。
「すみません少々トラブルがありまして…食料は取って来れませんでした」
「そうですか…」
そう言って女性は元の位置に戻った。明らかに落ち込んでいた。
「すまねー俺が安易に銃を撃っちまったから」
「山本さん顔をあげてください、山本さんが一番危険な役目を引き受けてくれなかったらそもそもあそこまでたどり着くことができなかったんですから!」
無色と呼ばれた中学生の言葉に皆頷いている。
「あのーなんかすいません…私のせいで…」
結構放ったらかしにされて空気になっていたので自分から喋りかける。
「お嬢ちゃんに責任はねーさ、気にすることねー、ところでお嬢ちゃんどこから来たんだ?入り口に何体か奴らがウロついてたと思うんだが?」
「あー私小さいのでソッと入ったら意外とバレず来れましたよ」
「そうか、確かにお嬢ちゃんならコッソリと入れるかもな」
私の身長を見て、納得したようだ…なんかムカつく。
「それよりも君!そのバックには何が入っているんだい?」
先程、槍を持って一緒に逃げていた眼鏡の男が聞いてきた。その一言で部屋全員の私のバックを見る目がギラつく。
「…缶詰めとかですね…よかったら皆さんで食べます?助けていただいたので」
おお〜
と部屋の全員が喜ぶ。
バックの中にある缶詰めを全て出し、感謝される。
(出さなかったら何されるか分からなしね)
山本と無色は大丈夫そうだったけど、その他の人たちの目は食料なら何をしてでも奪い盗る、そう言う目をしていた。
食料を配ってた後は山本と無色の二人と情報交換をした。
このショッピングモールに逃げ込んだ経緯や食料が底を着いていたこと、山本は警察官、無色は近くの中学校の生徒会長をやっていた事まで聞いた。
話を聞く限りここのリーダーは山本だったが、無色と呼ばれる中学生も皆からかなり信頼されていてた。
私はというと、名前と普通の女子高校生としか言うことがなかった。
「そうか…外の方がゾンビ少ないのか…」
「そうですね、このショッピングモールに来てからのの方がゾンビに会う回数が多いですね」
「それにしてもユメさんは凄いですね!1人でここまでやって来るなんて、素晴らしいです!」
「それほどでもないよ、運が良かっただけだよ」
カモフラージュの魔法で自由に歩けるので、ゾンビなんて関係ない。
期待はしていなかったが特に有益な情報はなく私としては無駄な時間だった。
「では、私はここを出ますね」
私は立ち上がり帰る準備を始める。
「おい、待て待てお嬢ちゃん!外は危険だぞ!奴らもまだ近くをウロウロしているはずだ!」
山本が慌てて外に出ようとする私を止めた。
私としては愛佳ちゃんの事が心配で、さっさとこの場から離れたい気持ちだ。
「言ってなかったんですけど残してきてる人がいるんですよね、その子のためにもここには残れません」
「いや、そうは言うがな…扉近くにいる奴らはどうするんだ?君1人じゃ何もできないだろ」
「あーこれも言ってなかったんですけど私結構強いですよ」
そう言って私は、刀に手を当てる。
「いやしかしな…」
山本は口ごもってしまう。
「山本さん、ユメさんが行くと言うなら僕たちに止める権利は無いと思います」
傍観していた無色が割り込んできた。
「それに、僕らは今扉前にゾンビがいるせいでここに閉じ込められています。ユメさんから頂いた食料も多くはありません」
山本だけでなく部屋のみんなにも聞こえるように無色は喋る。
「僕たちの体力が万全な内にもう一度、食料を確保しに行きましょう!そしてユメさんも食料調達しないとですよね?僕たちと一緒に食料品売り場までは行きませんか?」
めんどくさい事になりそうな予感を感じつつ私は頷いてしまう。
………
10分程経ち私と、さっきのメンバーで食品売り場まで行くことに決定した。
「お嬢ちゃん本当に良いんだな?」
「いつでもどうぞ」
扉の前に立つ山本の問いかけに私は刀を構えて答える。
無色の決定で食品売り場に行く事になったが、山本は私が行く事に賛成はしなかった。だが私がゾンビと闘える事を証明出来たら、行く事に口出しをしないという条件を出した。
証明方法は簡単、扉前にいるゾンビを倒す事。どの道ここにいるゾンビを倒さないと食品売り場には行けないので丁度いい。
無色「いいですね、扉を開けて一体だけ中に入れてすぐに扉を閉めて下さい」
「ああ、分かっている」
扉を開けるのは山本と木の盾を持っている男。他の男たちは私が討ち漏らしても対応できるよう後ろで構えてる。
「3、2、1、でいくぞ!みんな構えてくれ」
男たちに緊張しているのが分かる。緊張していないのは私と無色だけだ。
「3、2、1!」
扉を開けゾンビが入って来る。もちろん今はカモフラージュを使っていない私はゾンビに狙われる。
今回も素早くゾンビを処理する。残ったのは刀を鞘にしまう私とゾンビの死体、そして唖然とする山本たちだった。
「スゲー⁉︎瞬殺じゃん‼︎ユメちゃん強すぎ‼︎」
名前は覚えてないが、大学生くらいのチャラ男が興奮している。
「これで問題ないですよね?山本さん」
「あ、ああ、お嬢ちゃん想像以上だ」
山本に納得させる為にいつもよりも素早く倒す事に専念したことが功を奏した。
「ユメさん、まだいけますか?ユメさん程素早く倒せる人はいないので、ユメさんに任せたいのですが」
「ええ、これくらいなら余裕です」
それから流れ作業が始まり数回繰り返してようやく扉前のゾンビを倒した。
「死体は後で片ずけましょう、陣形を組んで食品売り場まで行きましょう」
盾の男を前に槍を持った男2人その後ろに私で無能山本盾の男と続く。
ゾンビと遭遇するも少なく、盾でゾンビの突進を防ぎ後ろで構えていた槍で頭を刺し対処している。
苦労する事がないせいで油断しているのか先程から槍を持った眼鏡じゃない方のチャラ男が喋りかけて来る。
名前も知らんし興味ないので、テキトーに話を合わせていると食品売り場についた。
「ここからは二手に別れましょう、僕、ユメさん、田中さん(チャラ男)で食料を確保、山本さんたちは売り場に近ずいて来るゾンビが来ないかどうか見張っていて下さい」
「無色君?予定ではみんなで食料集めだったはずだったが?」
「すみません説明している時間が余りないので」
「山本さん、無色が間違った判断をしたことありました?大丈夫っすよー」
チャラ男が言ったことで山本さんも納得したようだ。
「ああ確かにそうだな、すまない…お嬢ちゃんも気をつけてな」
無色の提案に私はかなり違和感を覚える。他の人は無色の事を信頼しているようだが、どう考えても私、無色、チャラ男で行くメリットが無さすぎる。てかチャラ男はウザすぎる。
無色を警戒しながらも、3人で食料を漁る。相変わらずチャラ男に喋りかけられている。
「そういえばユメさん、その刀はどこで手に入れたんですか?」
チャラ男にテキトーに返事をしていると無色が喋りかけてきた。
「なになに、無色もユメちゃん気になってんの〜ヤメとけってユメちゃんは年上好きらしいよ〜」
「これは……この世界になってからたまたま拾ってそのまま使ってます」
流石に刀ゾンビを倒してとは言わず拾った事にする。
(てかチャラ男!年上好きなんて言ってないし、男自体嫌いだわ!)
「たまたま…ですか…なるほど」
この無色という中学生には、なにかありそうだ。最初は、ゾンビたちを操っている死霊使いの線を疑ったが、無色からは死霊使い独特の魔力の波動を感じない。つまりただの人間だ。
(もしかして刀ゾンビに襲われたことがあるとか?それで同じ刀をもつ私に質問してきたとか?)
無色について考えるが答えは出ない。そして相変わらずチャラ男がウザい。
「……それでさユメちゃ、ちゃちゃちゃたやたうあたうあやー」
とうとうチャラ男が私の事を変なふうに呼び出したのでチャラ男の方を見る。
(誰がユメちゃちゃちゃちゃたやたうあたうあや、だ!失礼な奴め)
「え?」
チャラ男を見ると、チャラ男のお腹が妊娠中の妊婦よりも大きく膨れ上がっていき、そして
パァーン
と風船が破裂するようにお腹が爆発する。
大量の血を飛ばしながらチャラ男は死んだ。
「ヒャヒャヒャー何度やっても堪らんわ〜ただオトコの体の中は臭くて入ってられへんわ」
チャラ男の破裂したお腹の中から喋りながら出てきたのは、赤ん坊だった。
赤ん坊は立ち上がり、すでに刀を構え様子を伺っている私を見る。
「ちょうどええところに、美味そうなオンナがおるやんけー、チョット俺を産んでみるきないか〜ヒャヒャヒャ」
新たなゾンビとの戦いが始まろうとしていた。
チャラ男がああああああああ
次回
ユメVSベビーゾンビ




