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異世界死霊使いのゾンビな日常  作者: ポタージュ
7/15

モブ死す

モブはそろそろいいよね…


まだ日没には時間は全然あるが、暗くなる前にバリケードを作りたい。事務所には鍵がついているがせめてバックヤードの中まではゾンビが簡単に入って来れないようにしておきたい。


何か使えるものがないか店内を歩く。後ろからは愛佳ちゃんが付いてきている。ちなみに虹村兄はあれから熱がでて今は事務所で休んでもらっている。


ゾンビが店内にいないことを確認し、二人でバリケードに使うための買い物カートの束を運ぶ。


「ねえねえダークネスプリティー。これで悪の従者は通れなくなるの?」


(悪の従者?…あーゾンビのことか)


恐らく例のアニメの敵のことをそんな感じで呼ぶのだろう。というかダークネスプリティーと呼ばれるのは恥ずかしすぎる。かなりの羞恥プレイだ。


「これはね、あくまで時間稼ぎが出来ればいいんだよ、あと私のことはねダークネスプリティーじゃなくてユメって呼んでね、正体がバレたらダメだから」


「わかったの!ダークネスプリティーの事はユメお姉ちゃんって呼ぶの!」


なんとか恥ずかしい呼び名からまともな名前で呼んでもらう事に成功しバリケードも完成させた。


バリケードといってもバックヤードの入り口に、先程運んだカートの束で塞いだだけ。大人の力であれば少し力をいれたら簡単に開けられるだろうが少なくとも音は聞こえる。それで侵入されたことがわかれば私が倒せばいいだけの話。侵入してくるゾンビなんて多くても数体だろうし、多くのゾンビは金剛パークに釘ずけだ。


「バリケードも出来たし、使えものがないか探そっか」


「ハイなの!アイカもいっぱい探すの!」


余った買い物カート押しながら食べ物以外にも使えそうな物を探す。初めはここに留まるつもりがなかったので食べ物しか漁っていなかった。


スーパーには、フライパンや包丁にまな板そしてカセットコンロがあった。ガスが使えない今、このカセットコンロは非常に優秀だ。


他にもまだ腐っていない食材を漁りつつ、私たちは事務所に戻った。



………


「ゴホッゴホッ、凄い量だね…」


私たちが買い物カゴいっぱいにして帰って来たのを見て、虹村兄は若干引いていた。


「お兄ちゃん大丈夫なの?」


「ちょっと頭痛と咳が出るけど、まだ大丈夫だよ」


虹村兄は大丈夫と言っているが顔色も悪く目も充血している。恐らく今日の夜が山だろう。


「ほら愛佳ちゃん!お兄さんに渡す物があるんでしょ?」


「あっ!そうだったの!ありがとなのユメお姉ちゃん!」


愛佳ちゃんはポケットに入れた、それをだし虹村兄に渡す。


「え?なんだろ愛佳がくれるなんて、てかなんでそんなに笑ってんの有村ちゃん?」


「お兄ちゃん!はいなの!」


「ん?リポ◯タン?って栄養ドリンク⁉︎」


「クスっ…ファイト〜〜」

「イッパツなの〜〜」


私と愛佳ちゃんは腕上げそう叫ぶ。


虹村兄が苦しんでいるに、笑ったちゃいけないと思いつつも笑ってしまう。渡した本人も楽しんでるし。


私は飲んだ事はないが、よくCMでは見かけることがある。愛佳ちゃんがどうしてもお兄ちゃんに薬を飲ませて上げたいとのことで、薬はなかったが栄養ドリンクならあった。まあ気休めくらいにはなるかも?


「ゴクッ初めて飲んで見たけど全然苦くないね、こういうのって苦そうなイメージだけど意外に美味いかも…二人ともありがと元気が出て来たよ!有村ちゃんの意外な一面も観れたしな」


「私はいつもこんな感じだけど?普段の私ってどういイメージなの?」


楽しい時は笑うし、悲しい時は泣く、転生して性別も変わって自分では普通の女子高生のつもりだったんだけど。


「いやさ…有村ちゃんって歩以外とはあまり仲よさそうにしてるの見ないし、同性ともあまり喋ってる様子ないし、高嶺の華って感じだんだけど」


それは勘違いだ…確かに私が異性とも同性とも喋らないがそれは歩のせいだ。


歩がいつも隣に来るせいで異性はどころか同性も寄り付かない。それどころか女の子が喋りかけて来たと思ったら大体が歩のハーレム候補で何故か、私に敵対心を剥き出しで喋りかけてくるのだ。


男の方はたまに近ずいて来たと思うと下心が見え見えな奴らばかりなので基本無視している。


「まあ、有村ちゃんの以外な一面がみれて良かったよ」


「ユメお姉ちゃんは優しくて強くて明るいの!」


愛佳ちゃんがそう言って抱き付いて来た。


「ちょっと早いけど、ご飯にしましょ」


愛佳ちゃんを撫でながら恥ずかしくなって来たのでカゴに入った食材を見ながらそう提案した。


………


「 テレッ!テッテッテッテ♪テレッ!テレッテッテッテッテ♪テレッテッテテテテテテッテッテッテ〜♪」


私が、フライパンで野菜を炒めていると後ろで虹村兄が謎のBGMを奏でる。愛佳ちゃんもいっしょに歌い出す。


「…三分で作っていいなら2次元君だけモヤシ炒めでいいかしら?」


「ごめんごめん!いやあまりにもエプロン姿がにやってたからさ!雰囲気を出すためにな!愛佳!」


「ユナお姉ちゃんのエプロン姿可愛いの!」


「まあ期待されても大したものは作れないよ?」


「いやいや、学校一の美女の有村ちゃんの手料理が食べられるなんて、クラスの男連中が聞いたら殺されるよ」


少し大げさな気もするが、その理屈なら歩はすでに何回か殺されているはずだ。


「とりあえず野菜炒め出来たよ!愛佳ちゃん今更だけど苦手なものとかある?」


「アイカは好き嫌いしないの!」


「よかった、愛佳ちゃんは偉いね!」


私が愛佳ちゃんを撫でると嬉しそうに微笑む。


「お肉は、時間経ってて使うの怖かったからね、でもパンがあるから悪くならない内に食べよ」


バランスは悪いけど今日の夕食は、私特製野菜炒めとスーパーの商品だった常温のパンだ。


「ユナお姉ちゃんの野菜炒め美味しいの!」


「俺もこんな美味い野菜炒め食べたことないよ!」


自慢じゃないが野菜炒めだけなら誰にも負けない自信はある。野菜炒めだけなら。


「ちょくちょく野菜炒めは作っているからね…」


………


夕食も食べ終わり日も落ち辺りは完全に暗くなる。私はロウソクにライターで火を灯し部屋を明るくする。


有村兄は、夕食後さらに体調が悪化し今は下にダンボール敷き横になっている。愛佳ちゃんが横で看病しているが辛そうだ。


そろそろ本格的にゾンビ化しそうだ。


「ゴホッゴホッ愛佳…ちょっと有村ちゃんと、ゴホッ…大事な話があるから外に出ててもらえるか?」


「ヤダ!お兄ちゃんと一緒にいる!」


「愛佳…」


愛佳ちゃんは虹村兄から離れようとしない。


「愛佳ちゃん大丈夫だよ。でもちょっとの間だけお兄さんとお話しさせて?」


「…うん」


出来るだけ優しく言うと愛佳ちゃんは俯きながら返事をした。


愛佳ちゃんが出て行き、虹村兄の咳の音が室内に響く。


「ごめん有村ちゃん…ゴホッ…俺はもうダメだ…やっぱりゾンビになるんだ…俺が俺の内に殺してくれぇ!」


「約束だもんね…私が殺す。でも愛佳ちゃんとお別れはちゃんとした方がいいよ。愛佳ちゃんもなんとなく分かっているみたいだったし…私が外に出てるから愛佳ちゃんとしっかりと話してね!」


そして私は愛佳ちゃんと入れ替わり事務所を出る。


虹村兄が、愛佳ちゃんと何を話したか私は知らない。ただ2人にとってとても大切な時間なのは確かだ。


………


しばらくして愛佳ちゃん出てきた。目を真っ赤にして私に抱き付いてきた。


「お兄ちゃんをお願いします」


私が何をするのか聞かされたのだろうか。だとしたらなんて返せばいいんだろう。前世ならこの状況でも「任された」とか簡単に返せそうなものだが、愛佳ちゃんの気持ちを考えると今の私にはその言葉が少し重い。


「分かりました」


愛佳ちゃんを残し事務所に入る。




その日初めてこの世界で殺人を経験した。虹村 幸助の心臓を刺して。




モブがああああああああああああああ


そろそろ死霊使いらしいところも書いていきたいですね。

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