モブ
モブの話なので雑な展開かもしれません。
俺は、階段から落ちた人達の元へ行こうとするが足が止まる。
それは一瞬の出来ごとだった。階段を登ってきていた男子生徒の一人が山積みになっている生徒達の上にのしかかったのだ。
「お、おいお前何してんだよ」
男子生徒からの返答はなく上からは、男子生徒が何をしているのかイマイチ把握出来ない。だが明らかに、様子が変だ。
男子生徒が何をしているのか確認する暇もなく下の階から次々と同じように登って来ては覆い被さっていく。
「嘘だろ…おい…」
人数が増えたことで何をしているのかようやく理解が出来た。人が人を食べていたのだ。
階段下は血の海になった。
俺を含め階段上にいた生徒は急いで上の階に逃げた。
(何だよこれ!どう言う状況だ?)
俺は安全な場所に逃げようとするが気がつけば、そこら中で悲鳴やらうめき声が聞こえてくる。
(このまま上に逃げて屋上にいくか?いや…屋上には鍵が掛かっていて入れないようになっていたんだ)
とにかく無我夢中で俺は逃げた。襲われている生徒を無視して。助けている余裕など恐怖で無くなっていた。
どうやって学校から抜け出せたかも曖昧で気がつけば、俺は学校近くの公園のトイレに逃げ込んでいた。
トイレの個室で一息ついた事で俺は一旦冷静を取り戻した。
(まず状況を整理すると、小説や映画でよくあるパンデミックが起こってゾンビが大量発生ってことだよな…しかもあのゾンビ無駄に足が速い…いやいやゾンビ物の定番は足が遅いのがお約束じゃん…どう考えてもモブの俺じゃ半日も生きれないんだが…)
俺はスマホを取り出し、親友に電話する。
p…pururururuー
「幸助無事だったのか?」
「ああ…お前も大丈夫そうだな。まだ学校にいるのか」
「いや俺達は遠征用のバスで今、金剛パークに向かってるよ…幸助はどこにいるんだ?」
「俺は学校近くの公園だよ…まあ無事そうで良かったわ」
「悪い!幸助の所には向かいに行けない」
「いいよ…俺も自力で何とかするよ。それに妹の事も心配だしな」
「死ぬなよ幸助」
「ああお前もな、妹を見つけたら金剛パークに俺も行くわ!」
電話を切りスマホをしまう。
(妹は今小学校にいるはず…無事でいてくれたらいいが)
公園を出た俺は何度かゾンビに襲われるが遮蔽物を上手く使いやり過ごして、ようやく妹が通う小学校にたどり着いた。
小学校の校門は閉まっておりゾンビも外側に何体かいた為、別の場所から無理やり塀を上って学校に侵入出来た。
校内にはゾンビが入った様子がなく、逃げ込んできた近隣住民が多くいた。
俺も小学生の頃通っていたのと妹のクラスは覚えていたこともあり、妹にはすぐ会えた。
「お兄ちゃん!」
「愛佳!良かった」
教室に入ると全員の目線が俺に向いていた。担任の先生らしき人が俺に喋りかけようとする前に妹の愛佳が俺に抱き付いてきた。
愛佳の小学校は、俺の高校と違いゾンビが来る前に近隣住民の人達が避難してきて門を閉じゾンビの侵入を防いだそうだ。
親に無事を知らせたかったが電話は繋がらなくなっていた。
「…世界各地で起こっている暴動ですが、本日15時政府からの発表で原因不明の殺人ウイルスの仕業だという事です。政府は首都東京を捨て北海道、四国、九州に防衛ラインを築き本州を破棄することを宣言。既にほとんどの先進国が首都を捨て防衛ラインを築きあげ感染を防いでるとのことです。繰り返し報道します…」
職員室のテレビに流れる放送に避難してきた人たちは最初は怒っていたが救助が来ない事を悟ると絶望していた。
俺はそもそも警察や自衛隊の救助が来る可能性は低いと思っていたのでそれほどショックは受けなかった。
が、それよりも問題は食料だ。
小学校の全校生徒と逃げ込んできた住民を賄える食料がないのだ。災害用の乾パンなどが少しはあったが二日と持たないだろう。
問題は他にもあった。ゾンビに噛まれた人がいたのだ。ゾンビ物の映画を少しでも見たことある人なら分かると思うが高確率でゾンビに転化する可能性があるのだ。
感染者は簡単な治療をした後、手足を拘束して様子を伺っている。食料問題は解決しないままその日は過ぎた。
2日目
その日の朝食はビスケット1つだけだった。
「愛佳、にーちゃんはお腹空いてないから食べていいぞ」
「なら愛佳もお腹空いてないから愛佳のお兄ちゃんにあげるの!」
結局、ビスケットをお互いに一つずつ食べたんが幸せでイッパイにはなったがお腹はイッパイにはならなかった。
昼になる前に感染者がゾンビになっていた。
大人たちは集まって今後の事を話していた。
俺は愛佳を連れ金剛パークに行くことを決意する。このまま、ここにいても食料不足で動けなくなる。そうなる前に愛佳と金剛パークに行ければ生きる可能性が増えてくる。
俺は愛佳をおんぶして学校から出た。愛佳は学校の友達の事を心配していたが俺は愛佳とその友達を連れて行っては守れる自身はないし、愛佳に友達が食べられる姿なんて見せたくない。
「愛佳しっかり掴まってろよ!」
「うんお兄ちゃん!でも愛佳重くない?」
「お兄ちゃんは愛佳を背負ってならフルマラソンだって完走できるよ」
小学3年生になった愛佳を背負いながら走るのはモブの俺にはキツかったがそんな様子を俺の背中で脅えている愛佳に見せてはいけない。
幸いゾンビの数は驚くほど少なく、途中休憩を挟みながらもなんとか金剛パークまで半分くらいまでの所にきた。
(この橋渡った方が近いよな…近くにゾンビも見えないし…行くか)
俺が懸念していたのは橋だと逃げ場がないという単純なことだ。それに橋の上には遮蔽物がない。ここで襲われたら一巻の終わりだろう。
少し橋の周りを確認してから橋を渡る。橋を3分の2まで来た所で前方にある車の後ろから一体のゾンビが見えた。
「お兄ちゃん前…」
愛佳も気づいたみたいだ。
だがここで引き返すわけにはいかない。まだあのゾンビにバレていない。あのゾンビがこちらに気づく前に橋を渡り切れば逃げようはある。逆に引き返していて気づかれたら愛佳を背負って逃げるのは不可能だ。
(頼むからコッチに気づかないでくれ!)
俺の願いが通したのかなんとか橋を渡りきりゾンビから見えない位置に隠れる。
流石に全力疾走したので息が上がる。
「お兄ちゃんさっきのアイツがこっち来てるの」
「まじか、チョットは休ましてくれよ!」
俺は息を整える暇もなく動き出す。
こんな事なら帰宅部じゃなくて運動部にでも入ってれば良かった。
「お兄ちゃんあそこ!あそこにスーパーがあるよ!」
愛佳が指をさした先は、地元の人ならよく行くような感じのスーパーだった。
俺も外で息をつくよりも建物に入っていったん休憩がしたかったので、俺たちは店内に警戒しながらも入る。
「店内にはいなさそうだな…愛佳降ろすぞ」
愛佳を降ろして俺は地べたに座る。流石に疲れてしばらく動きたくない。
「ありがとねお兄ちゃん!愛佳飲み物探してきていい?」
「うーん…もしかしたらゾンビがいるかもしれないし危ないから、にーちゃんも一緒に行くぞ」
確かにゾンビはいなさそうだが店内は広い。もしかしたらどこかに隠れているかもしれない。
「大丈夫だよお兄ちゃん…ほらいないよ!」
愛佳はそう言って商品が置いてある通路を順番に見ていく。確かに通路は一直線が多くゾンビがいたら愛佳でも分かる。
「そうか?まあ何かあったら大声で呼べよ?にーちゃん急いで行くから!」
それから愛佳は飲み物を探しに行った。
俺は入り口を見ながらゾンビが入ってこないか見張る。
「キャー!」
愛佳の悲鳴で急いで立ちがった俺は声のした方へ走る。
ドリンクコーナーで尻餅をついている愛佳を発見した。
「愛佳大丈夫か?何があった?」
「お兄ちゃん…これ」
愛佳の目の前にあったのは、人間の切られた手だった。
「なんでこんなところに手が?それよりも愛佳もう行くぞ。さっきので近くのゾンビに気づかれたかもしれないし」
パリンッ!
入り口の方で窓ガラスの割れる音がした。
「こっちだ」
愛佳の手を引き店内の奥へ行く、がゾンビは正確に先ほどの悲鳴を出した場所まで走ってきた…そしてまだ隠れきれていない俺と目が合う。
目が合ったゾンビはスピードを緩める事なく俺達に向かってくる。
逃げるのは不可能と悟った俺はゾンビに向かってタックルをした。
「愛佳!今のうちに逃げろ!」
タックルが決まってゾンビの上を取るがもの凄い力だ。今にでも押し返されそうだが俺は全力で腕を押させる。
(愛佳だけは守るんだ!モブの俺だけど今だけは主人公補正をくれ)
「愛佳早く逃げるんだ!」
「でもお兄ちゃん」
愛佳は泣きそうな声で俺を呼ぶ。
「にーちゃんも後から追いつくから、早く!」
徐々にゾンビに押し返されながら俺は叫ぶ。最後に愛佳の顔を見ようと後ろを振り返るが愛佳は動いていなかった。
このゾンビとは逆側からもう一体来ていたのだ。
(そんな俺は愛佳を守れないのか…)
俺はゾンビに力負けしマウントを取られた。
(クソ…情けねー!妹一人も守れず死ぬのか…)
愛佳の目の前にゾンビがいて愛佳を襲おうとしていた。
だが愛佳の目の前にいたゾンビの首が跳ねた。
そして俺に噛み付こうとしていたゾンビの脳天に刀が生えた。
「あのーー大丈夫ですか」
そこには
「あ、有村ちゃん⁉︎」
天使が舞い降りた
モブですがスペックは高めです…




