解散よ
「じゃ、ここで解散だな。このままのマックスパワーで帰るか。じゃぁな」
ルイが言ったわ。
「この変身、時間が経てば解除になるんだってな。あばよ」
イクヨちゃんが言ったわ。
「さよなら。でも時間経過での解除だと、長くかかるわよ?そうよ、ドラウトに、カバー・アップの魔法で解除してもらいなさいよ」
教えてあげたわ。
「してあげなさい、ドラウト」
って、ふたりとも見える範囲にもう居ないじゃないのよ!
このどしゃ降りのなか、どんだけ早いのよ!?
気かつけば、ドラウトも鼠色のどぶねずみも、忽然と居ないじゃないのよ!?
今、一瞬目を離しただけなのに!
「あぁ、義妹!居てくれて良かった。あんたどんくさいから近場に居るとは思ったんだけど、まさか、まったく動かないで雨ん中でアホ面を曝してるとは思わなかったわ」
ドラウト達と入れ違いに、上空から、コウモリのはねを広げたニナルが登場よ!
何であんたが来るのよ!
「どんくさいって何よ!どんくさいって!それに、雨はこの自転車置場の屋根で防げてるんだから!雨にうたれてるわけじゃないわよ!」
言ってやったわ。
「……そうね。あんだけ舞台で跳んだり跳ねたりジャンプしたり出来るんだから。でも、たとえ違っても、どしゃ降りん中の誰も居ない自転車置場で、ボォォオっと突っ立ってんのはどんくさいく見えるの。あと、自転車置場自体がどしゃ降りん中に建ってんだから、雨ん中で正解でしょうが!?」
ニナルに頭の可哀想な美少女に言うように、丁寧に言われたわ……あたし、頭の可哀想なって部分だけは当てはまらないのに。
まぁ、頭の可哀想なニナルがする事よ、しかたないわねぇ、スルーしてあげましょう。
なんたって、あたしは博愛のイエロー・ローズに選ばれた程な人格者ですもの。
「あらぁ、そんな風に見えるのぉ?あたし全然気付かなかったわ。普通こんなどしゃ降りなら、連絡すれば家の者が迎えに来るから、動かなかっただけなのに、それが世間ではどんくさいとか思われるなんてねぇ」
まぁ、家の者がって言っても、パパなんだけどね。
「ぎ、義妹……あ、あんた、どんだけ頭の中が御花畑なのよ」
げんなりした顔でニナルが言ったわ。
その顔、しないほうが良いわよ。
その顔のあんたに夜道の街灯のしたで逢ったら、あたし、悲鳴をあげて一目散に逃げる自信があるわ。
言わないけど。
「それはどうも」
ニナルは軽くあしらいましょう。
「はい、はい。で、義妹、御義母様の実家、どんなズルをしたのよ?わたしと尾苜秋礼大先輩の婚約が法的に調ったって、御義母様の実家の顧問弁護士から連絡が有ったのよ!確かめたら、御父様と尾苜秋礼大先輩の登録印鑑で契約書も完璧。で、なんと、うちの社の債権の全部が開徳の引き受けに成ってたのよ!どういう事よ!」
ニナルが一気に言ったわ。
あぁ、魔法おばさん達の【無かったことに】の魔法が効いたのは、あの時にうちの敷地内に居た方々限定だったのね。
何かわかった気がするけど、別にニナルに教えなくてもよいような?
「さぁ?あたしおじいさまの所業は関知しないから、ママに訊いたら?直接」
ここは当たり障りの無い助言よ。




