懐妊よ
大方、収納まで終わった、ヨネちゃんの家に、上げさせてもらったわ。
引っ越しの作業員が25人もいたので、短時間ですっきり収納されてるわね。
まだ、段ボール箱のまま、ウォーキングインクローゼットや、フードストックルームに、積み上げられた荷物の山もあるけど。
あたし達は、屋上付き3階建てのお家の、2階東南側の角の、ヨネちゃんが使うお部屋に通されたの。
「こっちはフリールームなの」
説明しながらヨネちゃんがあたし達4人とその他、どぶねずみを白いソファーに座らせてくれたわ。
「光あれ!……あ、まだ、ハウコン……ハウスコンシェルジュの末端が繋いでないみたい、ごめんね」
ライトのリモコンで、照明を強くしながら、ヨネちゃんがいったわ。
うちは、ウチコちゃんを使ってるけど、ヨネちゃんのお家はハウコンなんだ。
「こちらはハウコンなのね。ねぇ、うちは、ウチコだからアイスピ・カも入れてるけどハウコン、オールマイティーよね?使い勝手は良いのかしら?」
ヨネちゃんに訊いてみたわ。
「そうね、快適ですわよ。キーワードの混同だけ気を付けてればですけれども」
何故かイヨちゃんがお答え。
あぁ、イヨちゃん家もハウコンなのね。
「日本製品は機能がホット、デザインはクール、良いですよね。私のうちはバトラー(Butler)ですから見た目可愛くないんです。せっかく日本に居るのに」
ネーナちゃんが口を尖らせて言う。
バトラー?
初めて聞いたわ?
「でも、英国王室とか、みんなバトラーじゃない?バトラーが世界標準よね。うちのハウコンなんかは、音声的には、ねぇ」
ヨネちゃんが、イヨちゃんに目配せしたわ。
「確かに少しばかり、使い勝手に問題がありますものね。イントネーションがいまいちって言う」
ヨネちゃんと、イヨちゃんのハウコンを使ってる同士の会話ね。
「……帰りたい……」
消えるような、小さな声で、プリンセス合体お兄ちゃんが呟いたわ。
「……ダメ。スレイブが、この場を離れたら、曾祖父の故郷、地球次元の情報が楽しめません」
今しゃべった、自信満々な口調のお兄ちゃんは、プリンセスに操られて、しゃべらされてるお兄ちゃんね。
「プリンセスの曾祖父さんって、どういう方ですか?ドラウトのお母さんはうちのママと一緒だったタンマリちゃんだけど」
訊いてみたわ。
「そんな、名の在る存在ではないの。ごく普通の片瀬海岸に住んでいた海鼠です」
お兄ちゃんがウルウル眼で微笑んだ。
ドラウトは、どぶねずみと次元妖精のハーフよね。
プリンセスは、海鼠と次元妖精のハーフの更にクォーター?
あ、クォーターのクォーターかしら?
まぁ、次元妖精って、何とでも節操なく混血しちゃうのね。
「私もこの度、母になるのですけどね」
お兄ちゃんが母に?
んなわけないわよ。
プリンセスがよね。
「プリンセスは妊婦さんなの?」
ヨネちゃんが、心配そうに訊いたわ。
「次元妖精は次元子宮で妊娠しますから、戦いに影響はないのよ」
お兄ちゃんが明るく言ったわ。
これは、プリンセスね。
「どんなプリンスのお子さんかしら?」
イヨちゃんが首をかしげた。
長い髪がさらりと揺れたわ。
「皆さんご存知よ」
あたし、次にネーナちゃんを見つめて、真っ赤な顔でお兄ちゃん。
これは、プリンセスが赤くなってるのよね。
小さい声でみんなで話すのよ。
「ドラウト、ソリス、アディニウム……」
あたしが知ってる次元妖精はこの3匹。
相手がイチゴ味ドラウトなら、もっとプリンセスは再会を喜ばないかしら?
ミント味ソリスには付け入られてヒンドランスにされたとか言ってたから、ソリスの可能性は低いわね。
消去法でソーダ味アディニウム。
が、プリンセスのプリンスよね。
「ネーナちゃんも知ってるわよね?」
プリンセスに確かめよ。
「ええ」
プリンセスの答えに確証を得たわ。
「あぁ」
ポン!
ネーナちゃんが手を打った。
気がついたのね。
「青いお子さまかしらね?」
ネーナちゃんが笑いながら言ったわ。
そうね、アディニウムの毛色が青いから青い子供が産まれそうよね。
「そうね。青いお子さまね」
お兄ちゃんなプリンセスは否定しないわ。
アディニウムとプリンセスがねぇ。
あら、アディニウムは、ママが飼ってたどぶねずみのシコタマちゃんの子供だわよね。
なら、あたしとも縁があるんじゃない?
妹か弟みたいな……いや、プリンセスとアディニウムの子供よ、青いタコウインナーか肌色のどぶねずみの産まれる確率が物凄く高いわ。
それを弟妹とは言いたくないわね……。
特に肌色のどぶねずみは絶対に嫌よ。
「……あたしに甥か姪が出来る、みたいで楽しみだわ」
この位の距離感をとならいとね。
「えぇ!?」
ヨネちゃんが口をポカンと開けてる。
「そんな事が!?」
イヨちゃんが眼を大きく見開いてる。
「実は、青い……」
ふたりの耳を近づけて間で、ネーナちゃんがポソポソ種明かし。
「そうなんだ」
ヨネちゃんが柔らかい視線をプリンセスに送るわ。
「なら、納得ですわ」
イヨちゃんは、お兄ちゃんの頭に乗ったまんまなドラウトを視てる。
「あら?何か付いてる?」
どぶねずみが鼻先を短い前肢で拭ったわ。




