盛過よ
白銀と燻銀、そして金色と漆黒をあしらったシックな衣装。
艶やかなみどりの黒髪、きれいな富士額、優雅な曲線を描く眉、長いまつ毛に囲まれ輝いている黒曜石の様な眼、良く通った鼻筋、輝くように白い肌に桜色の唇、それらが小降りな輪郭にバランス良く収まっているわ。
髪型は総髪になって、編み込みの髪の毛がカチューシャの様な飾りなってる。
スレンダーなのに出るところは出てる均整の取れた体型。
マオカラー風にしめた襟ぐりなのに、強調されたバストと、かなり引きしまったウエスト、タイトな深いスリットのスカートにおさめた、小ぶりだけど形が良いヒップ、細く長い脚と腕には、ヒール付きな銀色のブーツに、指ぬきの銀の長い手袋。
大人な大和撫子がそこに居たわ!?
……これも変身なの!?
「また、あんなに盛って!?」
どぶねずみに再度抗議よ!
だ、か、ら、あたしはナチュラルメイクなのよ!
「だから、盛って無いのよ。プラチナ・キューティーとは、生来の根本的なスペックに違がありすぎるんだから、どうしようもないの。あれがナチュラルメイク後のシルバー・エレガントなの」
ナチュラルメイク!?
また付け睫バサバサで、瞳大きく見せるコンタクト入れて、リップグロスで艶プルよ!?
あの胸、カップ何枚重ねてるのよ!?
「マドンナ・ゴールド・ビューティー!降臨!」
え!?
あたしが、どぶねずみに抗議してるうちに、フォントが変身を、シルバー・エレガントに披露してる!
「ゴールド・ビューティー!すごいですわ!ゴージャス(Gorgeous)ですわ!」
「シルバー・エレガントも、とてもリファインド(Refined)です!さながら貴婦人のようです!」
金銀コンビが誉めあってるわ。
「そのゴージャスさには、発動のキーワード、クイーン・ビーが合っていますわ!」
「あら、そんな」
手放しに誉めるシルバー・エレガント。
もじもじしてるゴールド・ビューティー。
「リーダーはどんなお姿に?」
キラキラ瞳のわくわくした顔をこちらに向ける、変身ヒロインマニア。
「ナノちゃんは、リーダーのヒロイン・プラチナ・キューティーに成られるんですよ」
フォントが、何か説明してるわね。
「プラチナ!?そんなに輝けるお姿に!?さすがリーダーですわ!」
シルバー・エレガントが、目をキラキラさせてる。
「……ナノちゃんは、別に変身しなくて良いの」
どぶねずみがフヨフヨ浮かびながら言ったの。
「……ほら、ヒンドランスも来て無いじゃない。変身する理由が無いのよ」
パァンッ!
「マフィン・トップ!」
「ナノちゃん待って!……ダズル・グリント(Dazzle Glint)!」
どぶねずみの言葉なんか、無視よ!
「キャー!眩しいです!」
「目を開けて、いられませんわ!」
デカブツ女とカオナシ女が慌ててる声がするわ。
そうでしょう?
リーダーのヒロイン・プラチナ・キューティーは輝いているのよ。
「コスメティック・サージェリー………………ラグ・ヒドゥン!」
この高揚感!
「ヒロイン・プラチナ・キューティー!生誕!」
やっぱり最後は、決めのポーズよね。
「一回変身したんだから、ナノちゃん……プラチナ・キューティーも、もう、満足よね?ハイハイ、ハイハイ、カバー・アップ(Cover Up)、カバー・アップ、カバー・アップ」
どぶねずみが、フヨフヨ浮かびながら言ったの。
あっと言う間に、普段着ね。
フォントが、もっさりワンピに三つ編み御下げのぐるぐる眼鏡姿に。
冷泥さんも、ブレザー姿の、恐怖の髪の毛バサバサ振り乱し女に戻ったわ。
「ネーナちゃん、わたし、プラチナ・キューティー・リーダーのお姿が、眩しすぎて、見えませんでしたわ!」
「私も今回は見えませんでした。けれど私は、既に以前にも、拝見してますから」
勝ち誇った様にいってるけど、フォント、あんたもさっき見ただけじゃない?
以前っていつよ?
「ネーナちゃんだけ、ちゃんとリーダーの勇姿を知ってるなんて、ずるいですわ!」
「私は、ナノちゃんと、一緒に習い事の場に居たことがあるんですぅ」
冷泥さんに言われてフォント、そっくりかえってるけど、あんた、その、居た、習い事の場って、さっきの中止に成ったヨガ教室の事でしょうが?
確かに居たけど、意味が違うでしょうが!
「ナノちゃん。今は僕のファインプレーで、魔法【美少女】戦隊のリーダーとしての面子が保てたけど、メンバーがこのふたりだと、次も間に合うとは限らないの。だから、常時特訓よ!」
真剣な口調でどぶね……ドラウトが言ったの。
「そうよね。どんなのでも、チームメンバーをリーダーがまとめなきゃならないものね。どんなのでも」
そうと決まれば、あたしは指示をするわ。
「冷泥さん」
「イヨちゃんとお呼びください。リーダー」
「じゃぁ、イヨ……ちゃん、あなたは、その前髪を総髪後ろに流すのでも、分けるのでも良いから、顔が見えるようにして」
カオナシ女は、あたしが怖いから。
「……ムシ除けなのですが。……いたしかたありません。リーダーに従いますわ」
ムシ?
とにかく、冷泥さん……イヨちゃんが、頷いた。
「次は、フォントちゃん」
「私も、昔みたいにネーナちゃんっ、て呼んでくださいよ」
昔みたいに?
あんたと、ちゃんと知り合ったの今日なんだけど?
まあ、良いわ。
「ネーナちゃんは、そのメガネをコンタクトにして、髪の毛三つ編み御下げから違うのにして。あと、お洋服だぼだぼなのはやめてほしいの。有るかしら?」
一緒に居たら、あたしが恥ずかしいのよ!
「……コンタクトはありますけど、お手入れが……。髪型もこれが……。お洋服は楽だから……まあ、着てないのが……。はい。リーダー、全部がんばります」
がんばらなくて、普通にしててくれればいいんだけど。
「さあ、ナノちゃんはお家に帰って、マシーンで特訓よ」
ドラウト、いつマシーン何か用意したの?
……今、今なのね!?
そうよ、あたしが、メンバーを集めて、リーダーになったからインフェルノスから、特訓マシーンが届いたんだ!
「ネーナちゃん、イヨちゃん。その腕の地味な腕時計は、変身バンドなの。完全防水で水圧10まで耐えられるし無重力でも耐えられる。気温も絶対零度でも摂氏10000℃でも耐えられるの。強酸性でも強アルカリ性でも平気だから、常時装備していて。魔法美少女戦隊メンバー間の通信も出来るから」
ドラウトが指示をしている。
「はい」
元気にカオナシ女。
「そうします」
首をかしげながらデカブツ女。
玄関でイヨちゃんとネーナちゃんに見送られて、あたしとドラウトは冷泥邸を後にしたわ。
リーダーがリーダーらしくあるための特訓の為に。




