変幻よ
「ナノちゃん、何でしょう?」
ヌルリと黒いどぶねずみが、空間から湧いて出たわ。
一匹だけね。
あら、アンジェヴェールも銀色の首輪をしてるわ。
あら、見直すと、ドラウト達も同じ首輪をしてる?
成る程ね、各自がピクセル・イリュージョンの魔法を購入したみたいね。
良い心がけよね。
人目を気にせず、野外でもどぶねずみと話せるわ。
「あら、アンジェヴェール、あんただけ?」
訊いてみたわ。
「えぇ。でも、みんな向こうに居ます。何せ、姫様の命が『ヒデリィ探索』だったもので、どうやって探すか、方針をシンデル達と皆で相談中でした。必要なら呼び出しますが?」
あぁ、アンジェヴェール達もヒデリィ探しをしてたんだわね。
で、相談中なのね。
つまり、動いても手詰まりだったのよね。
「それはご苦労な事ね。なら、わざわざブランシュネージュ達は呼ばなくて、良いわ。で、アンジェヴェール、あんた、あれ何だか解る?」
玄関前をアンジェヴェールにも覗かせたわ。
「あんな所にヒデリィ殿!?……しかしサイズがあれでは!?うぅん……えぇ!……で、巨大太母様あぁ!?」
変な事をアンジェヴェールが言ってるわね。
「あぁ!視てみろナノちゃん!まただ!」
ソリスも慌てた感じで言う。
あたしも覗きましょう。
「はぁ?太母ぉ?また?あれは大きすぎるヒデリィでしょう?シメリィじゃないわよ?……黄色いで……えぇぇ!?」
はぁぁあ!?
1、2、さん!?
「殖えてる!」
黄色い巨大ヒデリィの脇に、エメラルドグリーンの超巨大シメリィと……緑色っぽい大型スッポンが、直立して居るわ!
シメリィは、人間サイズに変幻するなら、痩せたヤスミおばちゃんに変幻出来るんだから、あんな風に化けたりはしないわよね。
その上、スッポンも人間サイズ。
何で、スッポンまで!?
とにかく観察よ!
今は、大、中、小の3匹で何か、話し合いをしながら、家の玄関のインターフォーンのカメラを覗き込んだりしてて、凄いシュールな光景よ!
にしても、誰よあれは?
「アンジェヴェール!やっぱりサンドリヨン達3匹も呼んできて、あれを視てもらいなさい」
「グループ機能発動!出よ!同胞!」
突然、アンジェヴェールが叫んだわ!?
「「「了解」」」
声がしたと思ったら、いきなり、白、茶色、灰色のどぶねずみが空間からヌルリと湧いて出たわ。
「姫様と太母様が居ないので、方針が確定しとらんで、相談してたですよ。でも、あそこに太母様が……太母様なのか!?」
あぁ、サンドリヨンも節穴を装備してたのね。
「そう、匂いは、太母様なんだ!?」
アンジェヴェールが言ってるわ。
そうか、アンジェヴェールやらサンドリヨンやらは臭いで判断してたのね。
……ソリス達はしてなかったけど、もしかして出来ないのかしら?