3体よ
「あぁ、お兄ちゃんは、スッポンって言うより……そうだ、亀よ。亀。スッポンはことわざにあるから使っただけよ。あんたがお兄ちゃんみたいって言ってるわけじゃないの」
我ながら、苦しい言い訳だわ。
「しかしながら、ナノちゃんから【亀】と呼ばれていた記憶があるのですが」
良く覚えてるじゃない、すっぽん!
「プランジャーも、その辺にしてあげなさい。プランジャーもリチャードもヴィナスも、わたしの手下なんだから、今はラキュサーク姫の配下にはいったのよ。皆でホロトゥーリオン王家をもり立てましょう。聞けばナノちゃんのお兄ちゃんはプリンセスのエネルギータンクっていうじゃない。すっぽんのプランジャーと、亀なナノちゃんのお兄ちゃんは同等なのよ」
場を納めてくれたのは、シメリィ。
このシメリィ、ヴァーチャスだったのよね。
そしてニナルの対応したピーコック・ヴァーチャスも居たのよ。
ネーナちゃん達3人が対応の貝達の指導者的ヴァーチャスは行方不明だけど居たことは確定よね。
つまり今回は同時に、この3体のヴァーチャスが、各地に出たわけね?
すっぽんは孔雀のヴァーチャスは居ないって言ってるけど、ニナルが孔雀と雉とか極楽鳥とかを混同してる可能性が多大にあるから、推定孔雀風・ヴァーチャスだったかも知れないしね。
で、シメリィは誰と戦ってたのよ?
「シメリィ、あんたの対峙してた相手は誰よ?」
シメリィは今暇そうに毛繕いしてるんだから、聞いてみるわ。
まさか、奇妙なダンスを登場後に披露する赤白ピンクの3人の戦隊じゃないでしょうね?
「私の処には3人組の魔法美少女ね」
「え!?」
マサかが大当たりぃぃ!!?
「ノートルダム・アダマンタイト・ゴージャスと、ダーム・ミスリル・ノーブルと、イドール・オリハルコン・ラリュールだったはず……4人……じゃないわ……残りのあれは屑の力だったし」
良かった。
あの3人組は花の名前よね。
でも……知らない名前が出てきたわね。
それに、屑の力?
……また、力ね。
高次元世界の力に、屑の力。
色々な力あるものなのね。
「シメリィ、魔法美少女って何人居て、魔法美少女戦隊って、何グループ在るの!?後、屑の力が解るなら、高次元世界の力って、シメリィには解るの?」
更にシメリィに訊いてみたわ。
「魔法美少女は、先代が9人ね。イズミちゃんとかも言ってたでしょう?サポートメンバーが4人だったわ。今の魔法美少女戦隊は5人だったわよね?今のは私よりナノちゃんの方が詳しいでしょう。ナノちゃんがリーダーなんだものね」
「そうよ。でもプリンセスを入れたら6人よ」
「プリンセスは別格よ。別格。だから戦隊は、私とヒデリィで組織した先代のイズミちゃん達と、ドラウトやソリスの組織したナノちゃん達の2グループ。と、別格のプリンセス・ラキュサークね。2グループとプリンセス。あぁプリンセスの処には、いつも漏れなくスタッド・スレイブが居るから、正確には3グループかしら?」
シメリィは、そういう分け方をするのね。
確かに、ある意味お兄ちゃん込みで、プリンセス・マーキュリー・フェミニンだものね。
プリンセスは、お兄ちゃんが居なかったら、エネルギー切れで活動出来ないんだから。
となると、ミスリル達は誰の変身した姿なのよ?
「なら、アダマンタイトやら、ミスリルやら、オリハルコンやらは先代のママ達の時のメンバーなの?」
とにかく、あたしの配下にミスリルやらは居ないわよ。
「そんな訳ないわよ。私、先代はみんな把握してるから。あれは今期の魔法美少女達よ」
シメリィが言い切ったわ。
なら、今期のメンバーを集めた輩達に訊いてみるわ。
「ドラウト!ソリス!」
あら?
出てこないわね?
「あぁ、シンデルやドラウト達はみんなプリンセスの指示でヒデリィ捜索に出たわよ」
シメリィが教えてくれたわ。
道理で姿が見えないと思った。
でも、やっぱりヒデリィの行方不明の件を忘れてたんだわ。
プリンセスの指示が出てから捜索に出てるんだから。
なら、奇妙なダンスを披露する3人組の件をシメリィに訊いてみるわ。
「シメリィ、別格が居るらしいのよ。別の高次元の存在のエネルギー活用仕様の魔法女が」
そう、ルイ達の事をシメリィに訊いてみたわ。
「……つまり高次元世界の力をエネルギーにする魔法美少女?知らなかった……もしかして、それが、やミスリル達なの?高次元の力……気が付かなかったわ?残り香も無かったし……」
「そうよ、残り香よ。シメリィ、高次元の存在からのエネルギーには、使った後に、必ず力の残り香が出るの?」
「そうよ。高次元の力は強いから、魔法美少女が使った後に沢山、残資が出るのよ。これが残り香」
説明上手なシメリィは、ドラウト達より、頭脳が使えるみたい。
「つまり、残り香がある相手は、バックに高次元世界の力を持ってる存在が居るのよね?」
「そうよ。インフェルノスで言ったら、現帝帝、次期様、前帝様……始祖様……偽帝もそうね。まぁ、残り香が有れば、後ろには、このクラスの方々が控えてるわよね」
嘘っ!
もしかしたら、ヒデリィは見付けたのかもしれないわ!?
地球次元にいらっしゃる現帝アグリィー様、もしくは次期帝のウィアード様を!
「シメリィ、あんたプリンセス・ラキュサーク様側に付いたわよね?」
「そうよ。ラキュサーク様が居れば、ホロトゥーリオン王家は安泰だもの。偽帝に媚びる必要はなくなったもの。聞けば姫様は御懐妊なさってるって。もう、万々歳で姫様側に付くわよ」
嬉しそうに空中を泳ぎながらシメリィは言ったわ。
「じゃ、もしも、もしもよ。もしも、ここでアグリィー様だかウィアード様だかが見付かったら?」
「もちろんアグリィー様に付いて、バファグリ派を殲滅よ!!ナノちゃん、現帝様や次期様を見付けたの!?それならハレルヤよ!…………でも、残り香が有っても、前帝クラムズィー様達も地球次元で隠居なさってるから、クラムズィー様の残り香だったなんて事は無いでしょうね?」
あぁ?
前代の女帝が地球次元に居るの?
「前帝が居るなんて、ドラウト達から聞いてないわよ!」
思わず声が出ちゃったわよ!
「ナノちゃん。私と違って、ドラウト達は訊かれた事以外の肝腎な事は言うのを忘れてるか、言ったつもりでいるんだから、肝腎なことはナノちゃんから訊かないとダメよ」
面倒くさい事をシメリィが言ったわ。
あたしが知らない事は、訊きようがないじゃないよ!
「とにかく、その仮定現帝様の魔法美少女戦隊の居る処に案内して」
シメリィは行動が早いわね。
でも……。
「これから?」
訊いてみるわ。
「早い方が良いわ」
シメリィが頷いたわ。
「今、夜の10時過ぎよ……今夜はパパが居るのよね。夜の10時過ぎに、あのパパがあたしを外出させてくれると思う?」
「あのパパ……あぁ、これからは無理そうね……襲われる可能性無しなナノちゃんなのに、過保護な!……ナノちゃん、明日の朝案内して」
残念そうにシメリィが言ったわ。
でも、襲われる可能性が無いナノちゃんって、どういう意味よ!?
「いや、シメリィ様。このプランジャー、その場を知っております」
すっぽんが浮かび上がって言ったわ。
ちょっと待ってよ!
「ちょっと、ま」
「案内して」
「ハッ」
あたしの言葉が終わらないうちに、シメリィとプランジャーが空間に消えたわ。
逃げたわね、シメリィ!!
「襲われる可能性が無いナノちゃんって、どういう意味よ!」