それよ
ドラウト達が居間に出てきたのは一時間後。
「ナノちゃん。お願いだから、害悪音波の垂れ流しは止めて。この通り」
いきなり、そう言うドラウトを筆頭に、ソリス達に、サンドリヨン達に、シメリィまで、あたしの前で土下座してるわ。
「害悪音波ぁ?これはバル様のソロの歌声よ!この間のコンサートでアカペラで歌った時のなのよ!害音波なんかじゃないから!」
まったく!
何て事を言うどぶねずみよ!?
「ママには、これを聞くのをデモリッションソングのリスニングトレーニングって言われたけど!?」
そう、リスニングトレーニング。
「ナノちゃん。ただ単に、下手なだけの歌声は、聖なる揺らぎをおこさないのよ」
何よそれ!
「その上、こう悪声だと、我々にもダメージが蓄積するのよ」
シメリィが何かほざいてるわね。
悪声。
ただ単に下手な歌。
この表現は、バル様の歌声には相容れない形容詞よね。
これはつまり、どぶねずみ達の感覚が、あたし達人類と違い、おかしいからよね。
困るわ。
芸術を解さない生き物は。
「止めるなら、まずソリスがニナルを魔法美少女から離任する事ね。次元逓信機が解約できるんでしょ。やらせなさい」
まぁ、結果として、ニナルが廃人になるのは、人類にとっては、多大なる福音よ。
「我々のインフェルノス生命体の存続と、ミレディ・ブロンズ・ラブリィーの存在を天秤にかける日が来るとは……。
この害悪音波がこの世から消えるなら、ニナルの存在など、即行で切り捨てるが、害悪音波製造源は残る……」
ソリスが考えてるわ。
「考えていても、害悪音波は消えない。まずは行動よ!」
シメリィが叫んだわ。
「行くぞ」
ソリスがぬるっと空間に消えたわ。
ドラウト達カラフルどぶねずみも後を追うように空間に消えたわ。
「わたし達も」
シメリィ以下の地味色どぶねずみも次々消えたわ。
すっぽんは?
『大丈夫です。デモリッション・ソングなどの魔法美少女以外の、害悪音波には耐性が有りますから』
やっぱり、すっぽんはどぶねずみ達とは違うわね。
あ、バル様の歌声が止まったわ。
やっとソリスがニナルを廃人にしたのかしら?