選択よ
苦渋の選択よ。
苦い汁どころか、苦くて更に渋い選択よ。
ニナルに通常のモバイル末端のナンバーを教えたわ。
次元アフォーンと次元モバイルーラの接続障害だって、謀って。
『あぁ、次元アフォーンの問題ね。今かけたら、ソリスも出ないから』
何を言ってるのかしらニナルは?
ソリスも次元モバイルーラじゃなかったかしら?
まぁ、ニナルには、教えないけど。
「それは大変ね。これも電波が安定して無いから、突然切れるかもしれないけど、さっきの話、手短にしてくれない?」
『あぁ?電波が安定して無い?義妹の家、そんな僻地に有るのね。だから安月給のサラリーマンにも家が持てたのね。電波が安定して無いから安かったのよ、土地が』
ウッ!!
何ですって!!
……いけない、いけない。
相手はニナルよ。
どぶねずみ達と同じように、人間の常識を知らない生き物だったわ。
腹を立てたら、あたしが人間が出来てないって事よ。
あたしは博愛のナノなんだから、ニナルにも慈悲を恵んであげられるハズよ!
一応、深呼吸よ。
スーっ。
ハァーっ。
「そうなの。いつ切れるかわからなくってぇ。だから早く本題を話して」
にこやかにしないとね。
『そう。敵のピーコック・ヴァーチャスが突然、掻き消えたのよ。』
ピーコック・ヴァーチャス?
すっぽん、知ってる?
『ピーコックヴァーチャスは、記憶に有りませんな。ピーコック……高貴な孔雀族は、ヴァーチャスにはなりませんな。』
高貴な孔雀族は、そうなのね。
それって、ピーコックって孔雀の事なのね……孔雀……なのね。
でも、タコさんウィンナーのプリンセスと、すっぽん、後は一山何円のどぶねずみの群しか、インフェルノスの生き物を見てないわね……そうか、孔雀も居るんだ。
「そうなの。突然消えたのね。それの何処が、グッドニュースなのよ」
ニナルに返事よ。
『だって、倒せなかった強敵のピーコック・ヴァーチャスが突然消えたのよ。お陰で、残されたホンビノス貝ヴァーチャスやら、マテ貝ヴァーチャスやらを、サクサク料理出来たんだから、グッドニュースでしょうよ!思うに、ピーコックヴァーチャスが消えた、あれは本国で何か政変が有って、急遽呼び戻されたのね。でないと、有利なT』
プチっ。
モバイル末端の電源を切ったわ。
長く成りそうだもの。
あぁ、途端に次元アフォーンのコール音が。
また、ニナルからよ。
これは出ないでコール音を楽しみましょう。
すっぽんが、次元アフォーンの呼び出し音をバル様の歌声に変えてくれたんだから。
ドサッ。
あら、何の音よ?
「ナノ、今、デモリッション・ソングのリスニングトレーニングするのは止めて欲しいわ。耐性の無いパパが気絶しちゃったわ」
ママに言われたけど、これは、バル様のアカペラでのソロ曲なのよ!?
デモリッションソングの要素なんか皆無なはずよ?
バル様に真似た歌声は、ヴァーチャスには効かなかったんだから!