姑息よ
「はっ!?これはいったい!」
あぁ、シメリィが目を覚ましたわね。
「良いお目覚めを、ヴァーチャス・シメリィ殿。この度は、よくぞお越しを」
次元ワイヤーで縛ったスッポンを、空中で引きずったソリスが、恭しく頭を下げたわ。
その左右の空間ではドラウトがサンドリヨンを、グロッサリースがブランシュネージュを、アディニウムがシャプロンルージュを、シュヴリルがアンジェヴェールを、それぞれ次元ワイヤーで拘束して引きずってるの。
あたしは、シメリィ自体を後ろからロープで拘束よ。
「うぅ……吾子達と連絡が途絶えたと思ったら、こうなってたの!?」
シメリィが呟いたわ。
「ヴァーチャス・シメリィ殿も、潔良く我らに恭順なさいますよう、お願い申し上げます」
アディニウムが言ったわ。
「……ふっ。あまいわね。カバーアップ!」
シメリィが人間形態からどぶねずみ形態に変幻……正体に返ったわ。
「フォグチ!」
あたしの呪文で、シメリィを拘束してるロープがギュッと絞まったわ。
「!!!?あぁぁぁ!!」
どぶねずみ形態のシメリィが絶叫ね。
「残念ね。人間形態から本体にもどれば、次元ワイヤーがゆるんで脱出が出来ると考えたみたいだけど、あんたを縛ったのは、あたしのヴァーチャス・キャプター・ロープなのよ。さぁ、次はデモリッションソングよ!ボエェェェ〜〜」
言ってデモリッションソングをお見舞いよ。
「ンギャァァァー!キュゥ……」
あら、どぶねずみ形態のシメリィが叫んで、動かなくなったわ。
あぁ、あの透明なフヨフヨしたカゲロウみたいなのは出ないの。
ヴァーチャスの親玉だからかしら?
「さすがナノちゃんだ。ナノちゃんは魔法美少女戦隊メンバーの中でも一二を争うな」
「ソリス、あたしと同格って誰よ」
そう言うソリスに訊いてみたわ。
まぁ、変身ヒロインマニアのレイディ・シルバー・エレガントのイヨちゃんでしょうけど。
「「「「「ミレディ・ブロンズ・ラブリィー」」」」」
ソリスだけじゃなく、5匹のカラフルどぶねずみの声が揃ったわ。
やっぱり、レイディ……ミレディィィィ!
「ミレディって、ミレディってニナルの事じゃないのよ!何であたしとニナルが一二を争うのよ!?」
「いや、ニナルの姑息さと、ナノちゃんの姑息さ……じゃない、ナノちゃんのは……頭の回転の柔軟さだな。ナノちゃんの頭の回転の柔軟さとニナルの姑息さは、正攻法を取るのを好まれる、プリンセス・マーキュリー・フェミニンやレイディ・シルバー・エレガントと比べると、意外性がある」
そうソリスが言うけど、何かあんまり……てか、全然嬉しくないわ!
頭の回転の柔軟さは、まぁ誉められてる感じで良いけど、ニナルと比べられたくは無いわ!
「ソリス……あたしはニナルと同格って事!?」
「あ?……いや、違う、同格って、うん、そんな事は無いぞ!ナノちゃんは全てにおいて、ニナルを凌駕している!良しに付け悪しに付けだがな」
ソリスが断言したわね。
「何でも?」
「そう。何でも。頭の回転の柔軟さも、姑息さも……あ!いや、あの…………セルフ・サジェスチョン!」
ソリスぅぅ!!
「……あたしは姑息か!!」
「ナノちゃん、無駄よ」
あたしが、ソリスをつかもうとして、手を向けたら、ドラウトが首をふりながら言ったわ。
「ソリス兄さんは、セルフ・サジェスチョンの魔法をつかったわ」
「それが、どうしたのよ!」
詰問よ!
「セルフ・サジェスチョンの魔法は、自己暗示だから、ナノちゃんが姑息さでニナルに勝ってる、とか言った事自体をソリス兄さんは認識してないわ」
何よそれ!!