到着よ
道は、リバーサイドサイクリングコースの横の道に、突き当たったわ。
これを川下に向かえば、ニナルの巣ね。
目指す12階の建物。
こないだ、パパやイヨちゃん達みんなと行った時は、裏の駐車場側からだったわね。
今度は、正門から堂々とね。
あら、あのエントランス前に居る、貧弱な姿は、ニナルじゃない。
「後は頼みます」
プリンセスが、離脱したわ。
お兄ちゃんとニナルを会わせたく無いのね。
お兄ちゃんはニナルに、うっかり親切にしちゃったら、なつかれちゃったのよ。
ニナルは、あたしを【義妹】って呼ぶくらい、お兄ちゃんにべったりしたいみたい。
プリンセスは、ママから【ニナルは絶対にダメ】って言われて、お目付け役を自負してるから、ニナルには近付かせないのよね。
「あ?何よ、ワンツースリーの群れを引き連れて?愚兄に……あぁ、ちゃんと腕を組んでくれてるのね。気色悪くない?」
ニナルが、訊いてきたわ。
「来てやったわよ。そうね、腕は許せるんだけど、掌が手汗でぬるぬるしてるんで、触るの避けてるんだけど」
「それ汗じゃなくて脂よ。そうね、あの、奇特で奇妙なお友達に、ちゃんと言っておいてよ。脂症のおっさんだって」
「何をさせるんだ!」
ニナルと会話をしてると、とっちゃん坊やが喚いたわ。
「それ、あんたにぞっこんなクズ好き女の大親友よ。あたし、今の姿を動画保存したわ。し、シンユウのそのワンツースリー経由で、クズ好き女に送り付けるわ」
ニナルがモバイルを操作したわ。
え?
この腕組みをカオちゃんに送り付ける!?
マズイわ!
カオちゃんのヤキモチの矛先があたしに向いちゃうじゃない!