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嫌々よ
「エスコートします」
ニギカゼくんが、あたしの右手をとったわ。
嫌過ぎる。
だって、ここ、家の玄関前よ。
「こちらはぼ、ぼくが」
ナヒカリくんが、あたしの左手をとったわ。
嫌過ぎる。
だって、今、ママからお兄ちゃんまで、パチパチ拍手してるのよ。
パパは、涙でぐちょぐちょの顔をしてるし。
おまけに、お向かいのおトド様と骸骨さんまで、興味深気に観てるし。
ヨネちゃんが居なくて良かったわ。
「じゃ、先導しましょう」
マナミくんが、先に立って歩き始めたわ。
後ろ向きで。
嫌過ぎる。
別の意味で嫌過ぎる。
後ろ向きに歩いてるから、危なっかしくて観ていたくないって側面から、嫌過ぎる。
『まぁ、対ニナル用の筋肉防壁と考えたらどうでしょう?』
バレッタに擬態してるすっぽんが提案してるけど、それでも嫌過ぎるわよ。
それに、今はあたしに土下座までしてニナルがすり寄って来てるのよ。
良い女は、余裕をみせないといけないの。
『……まぁ、それなら、ニナルに格の差を見せ付ける露払いと考えたらいかがですかな?』
露払い……良いかもしれないわね。
すっぽん。
その線で行きましょう。