次代よ Next魔法美少女戦隊MAD49
「……ナノちゃん。ナノちゃん」
確かに、名前を呼ばれたわ?
私は底等辺之中学に通う極普通の女の子。
広印奈乃。
空を見ると、カラスが飛んでるだけね。
道路を見ると、歩道の隅にごみが落ちてるわね。
すごい汚れたフェレットかなんかの茶色いぬいぐるみ。
拾ってゴミ箱に……!
「ギャー!ゴミがしがみついた!キモー!」
腕をブンブン回して離そうとしてんのに、なんでとれないのよ!!
「……ナノちゃん、まって!」
また、呼ばれたし!
このゴミが、ゴミが、ゴミが!!
!
ゴミが!ぬいぐるみの残骸が喋った!?
「……教育型AI搭載のぬいぐるみ?」
茶色いフェレット型のゴミを改めて見ましょう。
中のメカは高いかもよ?
持って帰ろう。
「外側はキチャナイから」
ひんむくのよ。
「ぎょぇぇ!痛い痛い!」
痛がるAIって何よ!
「あんたホントに、水曜イズミさんの娘か!」
「ママを知ってるの?」
おぉ?
このAI、ママの旧姓を知ってるのなら、かなりの年代物。
お宝かも知れない。
「知ってるも何も、わたしはイズミさんがナノちゃん位の時に、飼っていたタンマリちゃんの子供よ」
ママがあたし位の時にって、30年近く前よね?
そうか、ママの実家はお金持ちだから、そんな昔からママはAI搭載ぬいぐるみをもってたのね。
子供って事は、そのバージョンアップがこのゴミ。
かなりロートルね。
とにかくもって帰ろう。
そしてママに見てもらおう。
顔認証でドアは開くし、危険物感知の警備ロボットはスルーだから、このゴミは危険物で無いのね。
「ただいま。ママ?見てみて」
『お帰りなさい、ナノ。何かしら?』
ヴィジョンに映ったママに、バージョンアップタンマリを見せる。
「これ、懐かしくない?」
『あら、丁度良かったわ、ダストシューターの刃を変えたから、入れてみて』
?
良くわからない指示ね?
とりあえず、ゴミ箱にポイ。
「フンギャー!!死んじゃう死んじゃう!」
ゴミぬいぐるみが宙に浮かんだ!
重力制御システムって、加重しか実用化になって無かった?
『あら、ひでりじゃないの?懐かしいわ。30年ぶりね、アグリー様達はお元気かしら』
ヴィジョンのママが、棒読みで宣った。
アグリー?
「違います!ヒデリーの子供の、ドラウト・シッキタース(Drought Siccitas)です」
泥々汚れのぬいぐるみに、そんな立派な商品名が?
『まぁ、そうなの。ヤスミちゃんの所では無く、何故うちにおいでに?』
「母はこちらで私を産みましたので縁がありますから」
産みましたのでって、これAIぬいぐるみじゃないの!?
『ここで赤ちゃん産んだヒデリのお嫁さんだと……シコマタちゃん?タップリちゃん?タンマリちゃん?ゴッソリちゃん?』
「タンマリです、タンマリちゃん」
ママが変な生き物と平然と会話をしてる!?
「ママ、これ薄汚れたAIぬいぐるみじゃないの?」
『次元妖精よ。洗えばきれいになるから、洗えば。そちらに行くから』
妖精!?
ママが平然と……変だ!?
ヴィジョンが切れた。
洗えば、洗えば……。
ウォッシャーに入れて、蓋。
シルクウールコースをピッピッ。
「ぎゃぁぁぁ!」
あれ、ちゃんと生き物コースよね?
間違えたかしら?
「ヴォォゥゥ!……」
静かに成ったわね、正解よね。
着替えで来よう。