嫌過よ
「ナノ、本当に良かったわね。プリンセスのお陰よね」
ママのテンションが高いわ。
公道で踊りだしそう。
カオちゃんみたいに。
九ようもんでのお食事後に、ヤスミおばちゃんとどすこい親父が、あたし達の個室に転がり込んで来て、3人の若どすこいを紹介したわ。
一番身長が高い、長どすこいが、ナヒカリくん。
高校3年生。
全体的に大きい、大どすこいが、ニギカゼくん。
高校2年生。
体幅が分厚い、太どすこいが、マナミくん。
高校1年生。
揃って彼女なし。
はっきり言って、顔の造作は、どすこい親父からシワを差し引いただけのコピーが3つよ。
プリンセスが、あたしのサポートメンバー候補だって紹介したら、ママの舞い上がりかたが引くほどよ。
「良かったわ。3人とも優良よ」
ママは言うけど、どこが優良よ?
その後は、異様な速さで帰宅よ。
「なるべく、可愛く見える気がするような、お洋服をあつらえましょう!」
ママは言ったわ。
「手持ちを組み合わせないといけません。あつらえていたら間に合いませぬ!」
プリンセスは言ったの。
「ナノにはまだ早すぎる!」
パパは泣いたの。
「ぱぱぁ!この機会を逃したら、ナノには生涯パートナーに恵まれずに孤独死する老婆としての未来しかないのよ!パパはナノが老後孤独死してほしいのね!」
あのね、ママの言い分は、あたしには絶対に受け入れられないわ!!
あたしが生涯パートナーに恵まれずって、ママったら、どういう意味よ!?
あたしには、将来、特別なプリンスが……あ……プリンスでベージュ色のどぶねずみのイメージが湧いちゃったわ!
ダメよ!
考えたらダメ!
……………………うん、イメージが消えたわね。
とにかく、あたしは良いパートナーに恵まれて、幸せな人生を歩むのよ。
ママの言い分は間違ってるのよ。
その間違ってるママが、あたしのクローゼットから、いろいろなお洋服を引っ張り出して部屋中にひろげてる。
何か、とても他人前に出せない顔でママが頭をかきむしってるわね。