会談よ
「あたしは、心が広いから許してあげてもヨロシクってよ」
あぁ、気分が良いと、何でも許せる気がするわね。
「それはどうも。で、あんたの方で、あのすんごい勘違い女、何とか成らない?」
ニナルがさっさと本題に入ったわね。
「カオちゃんには、さつまいも。又は繊維質の多い美味しいものを多量に食べさせると、ここだけの話、しばらくエナリが止まらなくなるから、足止めになるわよ」
気分が良いと、口が軽くなるわね。
「エナリ?……あぁ、壊鳴りね。なるほとね。恋する見境なし女にもウィークポイトがあったわけね。なら、アタシが毎朝多量のいも納豆をあんたのところに届けるわ」
ニナルがふんぞり返ったわ。
「いも納豆?」
大豆の糸引納豆に砂糖とさつまいもの入ったビジュアルが浮かんだわ。
「そう。さつまいもで作った甘納豆よ」
こっくり頷いてニナルが言ったわ。
「毎日って、大変じゃない?」
イヨちゃんが、ニナルの親族の会社は資金繰りが大変だとか言ってわよね。
「大丈夫。迷冷泥商会の主力商品、まだ食べられるパクパクパドライスイートポテトの返品が家には売るほど在るんだから」
……あんまり大丈夫そうじゃない、ニナルのお言葉ね。
でも、返品利用に成るのね。
「それでカオちゃんの暴走は止められるわ。で、とっちゃん坊やは?」
「うちの屑兄貴は、見た目あんたみたいなワンツースリーなタイプにトラウマがあるのよ。そこを攻めるの。だから協力して」
ワンツースリーなタイプ?
ワン、ツー、スリー……1位、2位、3位……金、銀、銅……表彰台独占……ハイクラスな乙女にトラウマ!?
「あんたなら兄貴を怯ませるのに、最適よ。たとえ美の少ない戸籍だけは女な生き物だとしても、ワンツースリータイプカウントなんだから」
ムカつくわ!
頼み事しときながら、この物言いは何よ!?
なんか、ワンツースリーにも、悪意在る隠語な影が見える気がするわね。
『ニナルですから。いたしかたないでしょう』
すっぽんが、心底って雰囲気をまとった感じで伝えて来たわ。
確かに、ニナルなのよね。
「あんた、あたしのし、親……親友のふりして家には入り浸って、屑兄貴に馴れ馴れしくしてくれてれば、何にもしないでいいから。恥を忍んで、頼みます」
また、ニナルが地べたに膝をついて土下座を始めたわ!
公民館の正面玄関よ!
公共の場よ!
みんなが観てるのよ!
これじゃ、あたしが悪者みたいじゃないよ!
「わかったから、ここで土下座は辞めてくれる。代わりにあたしの指示した場所でしてくれると嬉しいわ」
「そう。なら辞めてあげるわ」
また、ニナル上から目線!
土下座しながら上から目線って、どういう性格してんのニナルは!?
『ニナルですから。考えるだけ無駄です』
また、すっぽんが的確な答えを教えてくれたわ。
確かにニナルなのよね。
「で、あんた、ヒロイン・プラチナ・キューティーだったわよね。これでの連絡先はチューチューチューのチューチューチューチューのチューで良いのよね」
は?
チューチューチュー?
「何の話?」
訊いてみたわ。
わからないんだもの。
「?これのナンバーよ」
ニナルが、右耳からイヤホンを取り出したわ。
青みがかった銀色っぽいやつだわね。
「なにそれ?」
再度訊いてみたわ。
「あんたモグリの魔法美少女?これは美少女から魔法美少女への変身アイテムじゃない。次元モバイラール社の通信機よ」
偉そうに、ニナルが鼻を鳴らしたわ。
不細工から魔法不細工への変身アイテムでしょう、それ?
「あたし達のはこれが変身アイテムなのよ。次元アフォーンよ」
リストバンド、次元アフォーンをニナルの鼻先に腕ごと突き付けてやったわ。
「番号なんか要らないの。登録制だけど、言語認識してくれるのよ。あんたなら、ミレディ・ブロンズ・プリティーの一言……」
聴いてたニナルが半眼になったわ。
なぜ?
「……あたし、変身したらミレディ・ブロンズ・ラブリィーなんだけど」
!
「ミレディ・ブロンズ・ラブリィー」
コールしてみたわ。
「はい。切るわよ」
【はい。切るわよ】
直接とアフォーン経由と、両方同じ声が聴こえるわね。
「とりあえず、今のをあんたって登録しとくわ。その次元アフォーンの方が便利じゃない。ソリスにそのうち変更させるわ。教えてくれてどうも。後は通信で話し合いましょう。遅くまでどうも。さようなら」
ニナルがニタリと笑ったて、さっさと帰って行ったわ。
返事も待たないって何よ!?
ムカつくわ!
『まぁ、ニナルですから。ところで、ナノちゃん、間違えましたな。プリティーはアイドル・コッパー・プリティーですな』
すっぽんに指摘されたわ。
そうよ、プリティーはヨネちゃんだった。
ニナルはプリティーじゃないんだったわ。
じゃ、こっちは?
「仇敵屑女」
『こちらは次元アフォーン社です。お掛けに……』
切る。
いったいドラウトは、誰をこの名称で登録したのよ!?