待惚よ
ヨネちゃんの言う通り、カオちゃんは五時間目前にうっとりした呆けた顔して帰って来たわ。
汗だくのイクヨちゃんに連れられて。
五時間目の後の休み時間にもカオちゃんは3年呂組に行ったわ。
まぁ、3年呂組は美術でみんな工作室に居たらしいから、直ぐにカオちゃん戻って来たけど。
そして六時間目の後よ。
イクヨちゃんが、策を労じたのが効いたわ。
調理実習で作ったスイートポテトを取っておいたのを、カオちゃんに掃除の時間直前に振る舞ったの。
結果、ショートホームルーム直後に、カオちゃんはエナリを連発。
「いやぁぁん!これじゃ、ルミオ様に会えない!」
って、泣きながらダッシュでお帰りに成ったわ。
イクヨちゃんたら、ガス消しの錠剤の手持ちが無い、保健室は保健の先生が不在でクローズって、カオちゃんにお知らせしてたのよ。
そう、今は放課後。
カオちゃんにルイとイクヨちゃんが付き添い帰ったから、今日のあたしは、ひとりで自由に動けるの。
そしてここは『講堂』の前。
それも講堂正門。
隣には体育館正面玄関。
ニナルの『講堂館』て名称だと、体育館と講堂、どっちか判断が付かなかったから、なんだけど。
『ほら、両方の正門が見える場所だと、どちらにも対応出来てよろしいでしょう』
すっぽんが助言をくれたんだけども、どぶねずみ群より、やっぱり使えるわ。
……………………
『来ませんな』
そうね。
まだ、放課後に成ったばかりよ。
ほら、ニナルがクラブに入ってたらその後が放課後って判断かも知れないし。
あたしはモバイルでバル様の天使な歌声でも聴いて待ってるわよ。
大人な淑女は寛大な心を持たないとね。
……………………
『来ませんな。もう夕暮れですな』
太陽が西に傾いてるわね。
バル様の天使な歌声でも、さすがにこれ以上の間は持たせられないわ。
ねぇ、すっぽん、ニナルもおんなじ魔法美少女戦隊の通信機次元アフォーンを持ってるんじゃない?
『あぁ、変身アイテムでもありますから、可能性は高いかと思われますな。生憎番号を知りませんが』
そうだった。
通信機の設定はドラウトがしたんだった。
一応、ネーナちゃん達の時みたいに、かけてみましょう。
「ニナル」
反応無しね。
「ミレディ・ブロンズ・プリティー」
反応無しね。
なら、あたしのニナルに対する、魂の叫びよ!
「仇敵屑女!」
【こちら次元アフォーン社です。お客様のお掛けになったアフォーンには、御相手先の設定により、お繋ぎすることかできません。この際、関係性継続を諦める事をおすすめいたします。こちら次元アフォーン社です】
何ですって!!
このどぶねずみ次元通信社は、個人の関係に、踏み込み過ぎじゃない!?
それにしてもドラウト、ニナルをこういう名称で登録するって、なかなかあたしの事を理解してるじゃない。
『それでは御試し期間は終了ですな』
すっぽん、それは話が別よ。
【下校時刻を、お知らせします。校内に、残っている、生徒の、皆さん………】
あ!
下校時刻のお知らせがスピーカーから流れ始めちゃったわ!
帰らなきゃ!