共闘よ
その場に居た先生と校舎から出てきた先生に取り押さえられ、ニナルが生徒指導室に連行されてったわ。
相変わらず、ギャアギャア意味不明な事を叫びながら。
「家の人外生命体が恐い思いをさせちゃったね。子猫ちゃん」
カオちゃんにニタァって笑いかける、とっちゃん坊や。
とっちゃん坊やは、まだ居るんだから、挨拶運動を継続するのね。
他の先生は、引き上げたのに。
「呂組なんだね。奇遇だね。ボクも呂組の産休代用教師なんだ。これからよろしく、子猫ちゃん」
とっちゃん坊やがカオちゃんの前に立ち上がって、右手を差し出して握手を求めたわ。
「迷冷泥先生!何をやってるんですか!」
「今日は挨拶運動中止です!」
男性体育教師と、柔道部顧問の男性国語教師が、とっちゃん坊やを両側から吊り下げ、引きずる様にして校舎に戻って行くわ。
残された生徒はドン引きよ!
「ス!テ!キ!運命よね!彼、呂組の代用教師なんたって!」
ただ一人、カオちゃんだけが舞い上がってるわね。
でも、うちのクラス担任は、40代バツイチ、今は未婚の男性教師だった気がするんだけど?
副担任は、四捨五入で60才のおばあちゃん先生だし?
謎だわ?
「とにかく、教室に行こう」
イクヨちゃんに引っ張られて、ひょこらひょこらカオちゃんが歩くわ。
「あたしたちも」
ルイと顔を見合わせて、教室に行くわよ。
結局、カオちゃんのわくわくを裏切り、教室には通常の通りの担任が現れたわ。
「あのぅ、産休代用教師の迷冷泥先生は?」
カオちゃんが場違いな質問を担任にして、クラスが静まり返ったわ。
「あ、彼は3年呂組の産休代用教師だから2年生には関係ない。科目も僕と被るから、このクラスには関係ない」
担任はそれだけ言って退出ね。
ポテッ。
って感じに椅子に座ったカオちゃんは、机に突っ伏してしまったわ。
カオちゃん、一時間目は教室移動よ?
大丈夫かしら?
イクヨちゃんがカオちゃんの肩を叩いたわ。
「カオ、一時間目、調理室よ?今日の調理実習スイートポテトだろ?カオはしないの?」
「スイートポテト!するする!」
カオちゃんがガバッと起き上がったわ。
イクヨちゃんナイス。
「これが有るのよ」
イクヨちゃんが手のひらにのせてるのは、少木製薬の腹ガスすっきりβ錠剤!
ナイスだわ。
薩摩芋をいただくカオちゃんのエナリ対策もバッチリね。
1、2時間目、連続でスイートポテト他の調理実習でカオちゃんのニナルの兄に対する執着が薄れたような気がする。
けど、調理実習が一緒の伊組には、ニナルが居たのよ!
班が違うから良いけどって思ってたら、寄って来やがったわ!
「義妹。共闘するわよ」
いきなり義妹!?
まだ、お兄ちゃんに執心してんのこのコブスは!?
「あれは、女の敵なの。いたいけだろうが、アバズレだろうが見境無いんだから。あんたも友達がそんなのの毒牙にかかったら、寝覚めが悪いでしょう!」
イヤ、カオちゃんの方が男なら誰でもって感じで見境無い気がするんだけど?
「放課後、講堂館前で待ってるから」
黙ってたら、勝手にしゃべって、ニナルが伊組の班に消えてったわ。
共闘!?
ニナルと!?