鼈鰲よ
「おはよう」
待ち合わせ場所で、カオちゃんと合流したわ。
「あら、ちんけな銭亀の剥製ね。どうしたの?」
……ちんけ……銭亀……剥製……。
あ、いけない、いけない。
カオちゃんの目は節穴だったわね。
それも、あのうれション小僧のお兄ちゃんすら、格好良く見えるって言う、筋金入りの節穴。
「そうなの、外国のお土産みたいなモノなの」
適当に合わせましょう。
ねぇ、スッポン、聞こえてる?
『感度良好に御座います』
なら、今、あんた何に擬態してんのか教えて。
銭亀の剥製?
『いぇ、緑の翡翠製のスッポン形バレッタ飾りのはずなのですが?』
銭亀の剥製に見えてるらしいわよ。
今日はいいから、明日は、完璧に擬態してね。
『承知いたしました』
「ナノ、カオ、おはよう」
イクヨちゃん。
「おはよう」
ルイとも。
合流ね。
「あ!ナノ、何、その高価そうな翡翠細工の髪飾り!?」
ルイが言ったわ。
「首長だし、甲羅がツヤツルだから、スッポンの意匠のバレッタだね。推定数万円かな?」
イクヨちゃんにも、わかるのね。
スッポン、あんたの擬態のはいくら位の設定よ?
『ナノちゃん位の方への土産物としたら……二千円位の設定でしょう。あくまでもシメリィ様よりの情報ですので、現実にそぐわないかも知れませんが』
「本当に。すごいわぁ。このカオの見立てだと、十万円くらいの価値があるわよ」
カオちゃんの節穴が炸裂ね。
「なら、売ってあげる」
にっこり笑うわ。
「て、事は、安いな。翡翠のフェイクか。行って数千円」
ルイが、鋭い目付きで値踏みね。
「学校に着けて来られる程度の値段……千円から二千円」
「ビンゴ」
イクヨちゃん、鋭いわね。