暑いよ
何とか、授業開始前に教室に辿り着いたわ。
汗だくたわ!
暑くってしょうがないわ!
まだゴールデンウィーク前なのに!?
朝からの、猛ダッシュは、止めた方が良いのね。
後ろの席のイクヨちゃんが、下敷きで扇いでくれてるわね。
涼しいような気がするわ。
前の席は空いたままね。
カオちゃんの席よ。
ルイが、弟くんの朝練に遇わせてカオちゃんが来たような事を言ってたのに、居ないわね?
……朝のホームルーム前に、ふわふわした、うん、たんたった、うん、たんたったってリズムの足取りで、カオちゃんが登校して来たわ。
「みなさん、ごきげんよう」
カオちゃんはそう言うと、にこやかに一礼。
カオちゃん、それは一体何のキャラよ?
「おはよう」
あたしも挨拶よ。
「おはよう、どうしたの?」
イクヨちゃんが、棒読みセリフのイントネーションを終わりだけあげて、無理矢理な疑問系にしたわね。
「うふふん。彼と登校して、そのあとも彼の朝の着替えから練習から、練習終わっての着替えまで、ず〜っと一緒だったから、楽しすぎて時間がわからなくなっちゃってぇ。うふ」
口元に両方の握りこぶしをあてて、カオちゃんは言ったわ。
……彼。
この彼は、あの人よね?
振り返って、イクヨちゃんを見ると、コクコク頷いてから、首をひねったわ。
『そう彼は、ルイの弟だよ。でも奴の部活なら着替えは一緒には居られないハズだ?陸上とかサッカーとかと違って、外で平然と着替えられない部だぞ?なんたって水球部なんだから』
イクヨちゃんの眼はかく語りきね。
あたしも見つめたわ。
『まさか、温水プールの男子更衣室に、カオちゃん居たのかしら?』
イクヨちゃんに、伝わるかしら?
『やりかねないから、怖いよね』
イクヨちゃんが、青ざめてブルっと震えたわ。