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賞味期限切れの店員と薔薇の花

◆今回の登場人物

【従業員】お姉様、店長

【脳内彼氏】シャイ君、ツナメさん

※注意※タイトルで察しが付くことと思いますが、今回の主人公は暴走気味です。ご注意ください。

「あらお母さん。今日もとてもお美しいですね」


「あらそーお?」


「一服してきていいですか?」


「伝票整理終わったらね」



 ああ、お姉様。しょんぼり顔も可愛すぎます。


 とはいえ、店長の伝票整理が終わるのは早くてもピーク前。ピークを迎えたら煙草休憩する暇なんてないし、落ち着く頃にはお姉さまが退勤する時間。


 事実上の煙草休憩禁止を言い渡されたわけです。お可哀想に。



「いでっ。いでいでっ、痛いですお姉様っ」



 機嫌を損ねたお姉様の無言の腹パンに、私は苦笑いしながらささやかに抗議する。


 ああ、でも本気で嫌なわけではないのです、お姉様。


 お姉様の八つ当たりは、私にとって割とご褒美です。







            *   *   *




 この子は正直、私の好みってわけじゃない。明らかに年下だし、いかにも草食系だし。


 とはいえ、顔立ちはすごく綺麗だし色白だし、今時の女子からいかにもモテそうなルックス。いつもムスっとした卑屈そうな無表情さえなんとかなれば、ファンになる子もいるんじゃないかと。


 そんな客観的評価を付けた彼も、一応私の脳内彼氏の一員。何故なら――



「おっ」


「…お疲れっす」


「お前もこの店来んのかよ」


「行きと帰りに寄ったりします……たまに」



 可愛い子だなーくらいにしか思ってなかった彼は、予想通りツナメさんと同じ職場の子らしかった。同じツナギ着てるなーとマークしておいて大正解。ツナメさんの貴重なスマイルまでごちそうさまでした。


 めでたく私の妄想材料試験をパスした彼をシャイ君と名付けた。いかにも人見知りな子に見えるし。癖なのか、買い回りしてる時も常に手を前で組んでるし。どう見てももじもじしてるその姿が、もう可愛くて仕方ない。


 職場でのシャイ君とツナメさんはどんな感じで話すんだろう。見た感じ普通の先輩後輩だと思うけど、仲はいいのかな。


 ……どのくらい、仲いいのかな。



『どうせ同じ店寄るなら、一緒に通勤しよって、俺の車で』


『嫌ですよ。ツナメさんの車、煙草くさいし』


『電子煙草なんだから気にならないだろ』


『電子煙草だろうがにおいが嫌なんです』


『そんなに俺と一緒は嫌?』


『一緒は…………嫌じゃないですけど』



 あああああ煙草くらい我慢してあげてよシャイ君んんんんん!


 そんでもってそんでもって、ツナメさんってばシャイ君の家に送り届けるどころか、華麗に家の前スルーしちゃったりなんかして。



『ちょっ!僕ん家過ぎましたって!』


『んー?知ってる知ってる』


『どこ行く気なんですか…』


『俺ん家』


『真顔で何言ってんすか!』


『いいじゃんたまには。お泊まりしてけ』


『……部屋で煙草、吸わないでくださいよ?』


『そればっかりは無理な相談だな』


『じゃあお泊まりしてあげません』


『だったら我慢する』


『絶対嘘だ…』


『ちゃんと約束守れたら、一緒に寝てくれる?』


『……』


『ははっ、顔真っ赤』


『……前見て運転してください』



 うっはあああああたまんねえええええ!!



「……?」



 おっといけない。シャイ君が珍獣を見る目でこちらを見ている。私がバックに背負っている薔薇の花が見えてしまったかな。


 やれやれ、どうも掛け算妄想ばかりは少なからず表に出てしまうようだ。日がな平然を装うスキルに磨きを掛けているとはいえ、ついつい本気を出してしまうこの手の妄想は隠すのが難しい。


 …ちなみに、当然のごとくツナメさん×シャイ君で妄想したものの、逆はどうだろう。



『やっぱりお泊まり拒否します』


『えー。せっかく家着いたのに』


『ツナメさんの家、この車以上に煙草くさい予感しかしませんもん』


『んなことねーって。いいから降りて家入ろ?』


『降りませんよ僕は。まだもう少しここにいます』


『え……ってちょ、お前、うわっ!』


『――煙草くさい車の中で我慢するって言ってるんですから、おとなしくしててください』



 あっひゃあああああ年下の強引攻め最っ高おおおおお!!!



「……」



 ……はっ!いかんいかん!シャイ君が汚物を対象とした目でこちらを見ている!仲間にしてあげますか?どう考えても無理です。むしろ何の仲間だ。


 はあ……シャイ君よりツナメさんが先に買い物を終えてさっさと帰ったのが、不幸中の幸いだ。どういうわけか、今日は歯止めが利かないレベルで妄想が捗りすぎている。


 捗るわそりゃ。クールだけど優しそうな年上のお兄さんと、いかにも目上からいいようにからかわれそうな色白美少年よ?そりゃあもう、そりゃあもう!



「……」



 あー……賞味期限確認するまでもなく腐りきった妄想するのは、さすがに控えないとまずいな。


 今の私は明らかに、頭の至るところから薔薇の花がもっさもっさとこぼれ落ちてるもの。

いくら弁解してももはや手遅れですが、筆者は実際にここまで濃厚な妄想しながら働いてるわけではありません。掛け算妄想は混じりっ気なしにネタです。信じようと信じまいとどちらでも構いませんが。


腐妄想オンリーのネタでコメディっぽい話を書くのは、今後できれば避けたいです。シャイ君だけ特別。オールマイティに楽しんでいただけるコメディ書けるよう頑張ります。

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