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白身魚のソテー,ジュノベーゼ風

 葵さんが連れてきてくれた店は本当に高級店でビビった。


「これが俺の作品」


 葵さんの作品だと言われたショーケースには藍色のベルベット生地の上でキラキラ輝いていた。


 「綺麗~」

 「だろう?欲しくなったか?」


 葵さんの言葉に思わず値段を見て心臓が飛び出るかと思った。

 近くに居た店員が物凄い営業スマイルで近寄って来ようとしてる。


「いらない!」

「それは無いだろ?傷付いたぞ!!」

「いや、そういう意味じゃなくて眺めるだけで十分です」

「何でだよ!」


 値段にビビったとか言って良いのか?


「早く葵さんの料理食べたいな」


 話をそらそうとちょっと苦しいと解っているがお腹がすいた有無を伝えてみた。


「………なんかエロいな」

「何でだよ!気のせいです!私は腹ペコだって言ってるの!」

「………ハー……酒買って帰ろう」


 葵さんは諦めたように私の肩を抱くと店を後にした。






 気になった白ワインとロゼワインにロゼのシャンパンを買って、これまた月どれぐらい払っているのか解らないぐらいでかくて広いマンションに案内された。

 葵さん、金持ち。


「これはモテるわ………」

「う?どうした?」

「女に不自由しないでしょ?」

「女に不自由を強いられてきた」


 ああ、ギラギラ系の女性としか付き合ってないのか。

 大変だな。


「部屋に連れ込むのだって簡単でしょ?」

「この家に入った女は命がはじめてだぞ」

「へ?なんで?」

「俺のオアシスのキッチンを荒らしやがるから女はあげてない」

「ああ、女子力を見せようとして失敗?」


 葵さんはため息をついてから言った。


「失敗はしてない……らしい、俺からしたら大失敗な味だった………みんな」

「じゃあ、私はキッチンには入らなくて良いの?後片付けぐらいならするよ」

「食洗機があるから運ぶだけな」

「あれ?ここは天国ですか?」

「ハハハ」


 葵さんは本当に嬉しそうに笑ってくれた。

 私もつられて笑ってしまった。


「よおこそ、我城へ」

「王子様気取りですか?」

「お殿様気取り!」

「ははー………馬鹿殿?」

「傷付いたぞ!」

「ご、ごめんね!ついつい言っちゃった!」

 

 私の苦笑いに葵さんは頭ポンポンで答えてくれた。


「飯にしよう。すぐに用意すっから座ってろ」

「はい!」






 ハッキリ言って天は二物も三物もあたえる人にはあたえるんだよ。

 目の前のワイルド系イケメンは優雅に白身魚のソテー、ジュノベーゼ風とやらを優雅に食べている。

 私もゆっくりと白身魚を一口食べた。

 

「旨いか?」

「全部美味しい。………葵さんって苦手なものなんて無いんでしょ?」

「なんだそりゃあ?」

「だって、何でもそつなくこなしそうだから」

「俺にだってあるぞ!恋愛映画は確実に寝るし、キッチンを荒らされるのも苦手だし化粧や香水の臭いも嫌いだ」

「私も化粧してるよ。それじゃキスも出来ないね」

「………する気あるのかよ?」

「………今の無し」


 葵さんはグラスに入ったシャンパンを一気に飲み干すと言った。


「そんな警戒するなよ。今すぐどうこうしようとか思ってないからよ!」

「………葵さん、呑みすぎないでね」

「………ああ、解ってる。命と居るとついついペース間違えちまうな」


 葵さんは苦笑いを浮かべた。


「ちょっと水飲むか、命も居るか?」

「貰おうかな?」

「おう。待っとけ」


 葵さんが水を用意してくれている間に白身魚を口に運ぶ。

 なんて美味しいんだ。

 葵さんは良いお嫁さんになるよ。

 私がそんなことを思っていたら、頭上から何が降りてきた。

 見上げると葵さんが私の後ろに立ち、私の目の前にネックレスを下ろしていた。


「やる」

「え?」

「これは試作品だから、店にあったのとは違うから気にしないで貰ってくれ」

「………気になるよ」

「店に連れてかなきゃ良かったか?」


 目の前で揺れるネックレスは藍色の石からシルバーの二葉が生えているようなデザインで可愛い。


「カイヤナイトは石じたいがあまり高くないが、インスピレーションを高める効果がある。命の仕事なら良い効果だろう?」


 葵さんはゆっくりと私の首にネックレスを、つけてくれた。

 

「命には子供っぽすぎるか?」

「………でも、好きだよ」

「………」

「葵さんの作品見た中でもこれはとくに好きかも」


 葵さんはふーと息を吐いて言った。


「俺の事を好きになれよ」

「好きだよ………たぶん……」

「たぶんね~じゃあ、こないだ迎えに行った時にいた男二人と比べたら?」

「葵さんを愛してます!」

「………え?」


 私は残りのシャンパンを飲み干した。


「あの二人と比べたら葵さんの事は大大大大好きですよ!」


 葵さんはかなり驚いた顔だった。


「結構イケメンだったと思ったんだけどな?」

「顔が良くてもあんなポンコツブラザーズ嫌ですよ!今日だって葵さんの家に行くって言ったら、食われちゃうから行くなって煩いし!葵さんはそんなことしないって!ねー!」

「………あれ?俺今釘刺された?」

「刺さりました?」

「刺さっちゃっただろう!」

 

 何だか項垂れた葵さんに私は笑いかけた。

 

「ご飯食べたら帰らないと」

「泊まってけよ」

「へ?」

「安心しろ客室には鍵がついてるから、そんなことよりもっと命と話していたい」


 おいおい!キュン死しちゃうだろ!


「………手馴れた手段ですか?」

「はじめて使う手だ!」


 葵さんはニカッと笑った。

 ど、どうしよう?

 葵さんはシャンパンを私のグラスに、ついでくれた。

 私はそれを勢いよく飲み干した。

 ええ、べろべろに酔ってしまったのは言うまでもない。

二人の距離感に迷走中

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