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鯛めし

おーもり海岸様からいただいた鯛めしのネタを少しだけ使わせていただきました!

ありがとうございます‼

 葵さんが連れてきてくれたのは高級そうなお寿司屋さん。

 初老の大将は強面だが、葵さんを見るとヘニャっと笑った。


「大将、鯛めしね」

「あいよ」


 葵さんはゆっくりと腕時計を外した。

 たしか、高級なお寿司屋さんのカウンターは一枚板で、できてるから傷がつくのをお店側が嫌がる。

 だからこそ、腕時計を外すのがマナーだってお父さんが言ってたっけ。

 葵さんはマナーの出来るスマートな人だ。


「飲み物は?」

「和食には日本酒ですよね!」

「良いね!大将、おすすめを頼むよ」

「あいよ」


 葵さんは常連客なのだろう。

 葵さんは大将に絶対の信頼をおいているようだった。


「はい。日本酒と御通しのなめろう」


 大将はなめろうと日本酒を瓶のまま私達の前に置いた、720㎎だろうか?

 そこからおちょこにお酌をしてから葵さんと乾杯する。


「お疲れ様です」


 何故か葵さんに、ニカッと笑われた。

 何なんだ?


「お疲れっていいな」


 葵さんはクイッとおちょこの中味を空けた。

 私は一口お酒を口にしてから、なめろうを食べた。


「う~‼幸せ~」


 思わず小さく呟いてしまった。

 横に座る葵さんがどれ?って言って私のなめろうに箸をのばしたから、私はなめろうの入った小鉢を手で防御した。


「自分の食べて下さい」

「命のやつが美味しそう」

「食べかけあげますから、そっちを私に下さい」

「嫌だ!」

「じゃあ、自分の食べなよ!」


 私がそう言うと葵さんはハハハって笑った。


「何が可笑しい?」

「命とのやり取りが楽しい。もう何でも好きなのたのみな、ここは全部旨いから」

「私はお財布と相談しながらじゃないと給料日前はキツいです」


 葵さんは笑うのを止めて怪訝そうな顔をした。


「奢られる気はないのかよ?」

「奢ってくれるなら遠慮なく食べます‼」

「いや、奢るけど………女って男は奢ってくれる生き物だと思ってんじゃないの?」

「嫌な女としか付き合ってませんね。」

「だから別れるんだろ?」


 ああ、よく女性不信にならなかったなこの人。

 私がそんなことを思っていると、大将が握りのセットを出してくれた。

 

「河上様の奢りならおすすめです」

「美しい!マッハで食べます!………旨い~幸せ~」


 お寿司セットを素早く完食すると大将がニコッと笑った。


「お嬢さんは本当に美味しそうに食べますね」

「おい大将、命を餌付けしようとしないでくんないかな?俺が今餌付けして、なついてもらおうと思ってるんだから」

「なつきませんよ?」

「なつかないのかよ?……ここの卵焼きも旨いぞ」

「食べたい!大将お願いできます?」

「大将になつくな!」


 大将はニコッと笑うとあいよって言って卵焼きを作り始めた。


「命ひでーよ」

「今日はありがとうございました」

「へ?」

「会社で話しかけてきた男二人、私の先輩と後輩なんですけど………助かりました」


 葵さんはニヤッと笑っておちょこの中味を空けた。


「しつこく言い寄られていた?」

「料理が出来るようになったら付き合ってやるとか上から目線で、料理の出来ない女だからって料理教室通えとかムカつく!女は料理出来て当然みたいなのがムカつく」


 私も一気におちょこを空けた。


「しなくて良い。料理は俺がやるから、命は美味しそうに食べれば良い」


 その言葉は私を感動させるには十分だった。

 つい目がウルウルしてしまう。


「え?み、命?」

「ごめん、感動した」

「え?泣くほどか?」

「うん。葵さんは絶滅したと思っていた、私の料理スキルを否定しない系男子なんですね」

「表現方法が他に無かったのか疑問だ」


 私が珍獣扱いしたのを悟られてしまったらしい。


「まあ、良いや。命が俺を気に入ってくれれば、な!」

「色んな女にそうやって言ってるんでしょ?」

「俺、口説かなくても女寄ってくるし」

「私も寄ってくるよ!逃げてくけど……」


 二人の間に沈黙が流れた。

 

「俺は逃げねえよ」

「どうだろうね?期待してます」

「お、期待してるんだな!よしよし」


 葵さんが嬉しそうにお酒を飲む。

 なんだかくすぐったい気がする。


「はい。卵焼き」

「わ~………なんてフワフワ……幸せ~」

「嫉妬深い男は好きか?」


 突然の質問に即答する。


「ウザイ」

「………だろうな」


 さっきまでご機嫌だった葵さんが今度はブスッとしている。


「何?」

「何でもない」

「怒ってるくせに」

「怒ってない」


 すると大将が笑って言った。


「怒ってるんじゃ無くて嫉妬してるんですよ。お嬢さん」

「大将!」

「嫉妬?何で?」


 葵さんは酒を飲み干すと言った。


「大将の料理旨そうに食いすぎ!」

「え?ダメなの?じゃあ、何で連れてきたの?」


 葵さんは頭をかきむしった。


「お前が食ってるの見るのが好きだ」

「………ありがとう」

「俺が作った料理を一番美味しそうに食べてほしい」


 ?


「じゃあ、何で連れてきたの?」

「………食ってるの見るのが好きだと思ったからだ」

「で?」

「………大将が羨ましい………この尋問まだ続くのか?」


 頭をカウンターにのせて項垂れた葵さんの頭を撫で撫でしてみた。


「キュン死する」

「酔っぱらい」


 何だこの男可愛い。

 見た目可愛くもないのに可愛い。

 こっちがキュン死するっての。


「鯛めし出来ました」

「うわ~」

 

 大将が出してくれたのは尾頭付きの鯛がのった土鍋。


「ほぐして良いですか?」

「たのむ」


 目の前で鯛が解体され骨や食べづらい部分を外し鯛の下にあったご飯と混ぜられてお茶碗に盛られ上に刻み生姜がのって私の前に出された。


「美味しそう‼」

「また、可愛い顔」

「おいおい酔っぱらい。面倒だな!」

「どうせ、酔っぱらいですよ~」


 私は葵さんを気にせず鯛めしを頬張った。


「大将!天才です!惚れそうです!」

「ありがとうございます」


 大将はニコッと笑った。

 

「大将羨ましい!」


 葵さんはそう言うとまた酒を飲み干した。


「葵さん、その辺にしときなよ!」

「やけ酒中です!」

「葵さん、私は今日タルトも楽しみにしてたんだからね。酔っぱらって私が食べてるの見れなくても知らないからね」

「………それは嫌だ」

「でしょ?はい、鯛めし食べよ。葵さんが勧めるだけあって尋常じゃなく美味しいよ」


 私がニコッと笑うと葵さんは渋々鯛めしを食べた。


「今度は俺が鯛めし作る。桜の塩漬け入れると旨いって聞いたから試す」

「楽しみ~」

「………」


 葵さんは何故か私の頭を豪快に撫でた。

 髪の毛がくしゃくしゃになったよ。

 どうしてくれんのさ?この頭。


「お嬢さんは強者ですね」

「へ?」

「あの河上様を手なづけている」

「あの?」

「河上様は女性とは基本あわない人だと思っていました。だが、貴女は違うようですね」


 私は葵さんの方を見た。

 葵さんは私の髪を軽くつまんで触っていた。

 勝手に甘い雰囲気を出さないでくれ。


「………おかわり」

「あいよ」


 大将はクスクス笑いながらおかわりを出してくれたのだった。

 



ダラダラしてしまってごめんなさい。

タルトは次になります。

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