水着
短めです。
スランプです。
ごめんなさい。
定番の週末。
これまた定番の葵さんのお家にお泊まり。
「海に行きたい」
葵さんの一言に私は暫く葵さんの顔を見つめてから言った。
「下心が見え透いてんだけど?」
「下心は無い!」
「じゃあ、私はウエットスーツで良いよね」
「………嘘つきました……ごめんなさい」
葵さんはシュンとしてしまった。
「日焼けしたくないし、人込みが嫌」
「命の水着姿が見たい!」
最初からそう言えば良いのに。
「エッチ」
「………鼻血でそう」
「何で!」
葵さんは困ったように笑うと言った。
「何だろな?解んないけどグッときた」
何でだ?私は良くわからなくて首をかしげた。
「命………」
葵さんはゆっくり私にキスを落とした。
「悪い、我慢の限界」
葵さんは私を抱き上げた。
お姫様抱っこだ。
ベッドに運ばれた。
この後を想像できないほど私も子供じゃない。
「明日水着買いに行くから手加減してね」
「………三角の極小ビキニ」
「葵さん以外にも人が居るって解ってる?」
「………却下………ちょっと検討するから今日は手加減無し」
「へ?ちょっ……うっぁ」
まあ、そうなるよ。
次の週末。
「どうする?」
「何が?」
「海」
「ああ………海には行く。だけど、命は俺のだから水着は………検討中」
「そっか」
葵さんはどうやら私を一人占めしたいらしい。
私はなんだか嬉しくてニマニマしてしまった。
葵さんはチラチラ私の方を見ては悩んでいる様だった。
そんな葵さんも可愛いと思ってしまうのだから重症だ。
「葵さん」
「ん?」
「大好き」
「………俺も………好き過ぎて心臓止まりそう」
「それは駄目」
「命と夏の海の岩場でヤラシイ事するまで死なない」
「うっかり死ねば良いって思っちゃったじゃん」
葵さんはニッと笑っただけだった。
お風呂から出ると葵さんが日本酒を用意して待っていた。
「飲むか?」
葵さんは私の方を見ないでそう言った。
「飲む前にこっち見て」
「ん?………!」
私は黒い極小ビキニ姿を披露した。
「な、おま………」
「千恵子さんがくれた。ちなみに海に行くならこっちを着ようと思ってます」
私は深緑色の観葉植物柄のパレオのついた白い水着を見せた。
まあ、葵さんは聞こえてなさそうだったけど。
葵さんはゆっくり私に近寄るとガッと胸を掴んだ。
ぶん殴ったのは仕方ない。
「何でだよ!」
「普通の反応でしょ」
「普通はこのまま甘い雰囲気になるだろ!」
「なるわけあるか!冷静になれ!」
葵さんは暫く私を見つめると言った。
「抱かせてください!」
「直球投げてきた~」
「これは駄目だ海になんか連れて行けない!他の男になんて見せられん!命、マジ天使!エロすぎる。我慢出来ん!」
葵さんがヤバイ。
目がヤバイ。
私はお風呂の脱衣所に逃げ込もうとした。
まあ、捕まって担がれてベッドに運ばれたのは自分のミスだ。
葵さんは幸せそうだったから、まあ、良いか?
「また、これ着てく…」
「2度と着ない」
「………」
「葵さんの興奮具合が怖すぎるからこのビキニは捨てる」
「………もう少し落ち着くから……」
「無理に決まってるじゃん。出来たら私、動けなくなってない」
ベッドの脇に葵さんを正座させて私は葵さんに背中をむけた。
「いや、想像以上に似合って居たからで……」
「似合ってるって言われるのは嬉しいけど………」
「エロすぎて……たぎった!」
「うん。もう着ない」
「何でだ!」
こうして、私達の夏は不健全に過ぎて行った。




