私物
長らくお待たせしてしまってごめんなさい。
短めです。
ごめんなさい。
その日、私と葵さんは待ち合わせをしていた。
いつもだったら葵さんが会社まで迎えに来てくれるが今回は、゛待ち合わせ゛を楽しむために会社と葵さんの家の間位にあるコジャレたカフェで待っていてもらうことにしていた。
急いで会社を出て目的地につくと、ガラス窓を背にした葵さんが見えた。
ガラスごしに葵さんを覗きこむと、ノートパソコンで何かを検索しているようだ。
まさか、エロい何かを検索しているんじゃないよね?
気になって更に覗きこむと、ノートパソコンに写し出されているのは私が使っているのと同じ銘柄のスキンケアセットだった。
何見てんだろ?
お肌が気になるお年頃か?
私は軽くガラス窓を叩いてみた。
コンコンっと軽い音に葵さんがビクッと肩を跳ねさせたのが見えた。
何怯えてんの?
私が店に入ると葵さんはすでにノートパソコンをしまった後だった。
「スキンケアーするの?」
葵さんが珈琲を飲もうとしているとこに、直球を投げてみた。
葵さんは盛大にむせた。
何故そんなに動揺する?
不思議に思いながら葵さんを見つめていると葵さんは気まずそうに視線をそらした。
「あ、秘密にする気?」
「いや………たぶん、引くと思う……」
「え?気になるんだけど」
葵さんは暫く黙ると言った。
「取り合えず、車に行くか」
葵さんは珈琲のマグカップを一気に煽ると私の手首を掴んで歩き出した。
車に乗ると葵さんは深い溜め息をついた。
「言わなきゃ駄目か?」
「うん」
「きっとドン引きだぞ」
「早く言う!」
葵さんは渋い顔をした。
「………俺は命が好きだ」
「何?あらたまって」
葵さんはハンドルに額を乗せて呟くように続けた。
「好きだから、一緒に居たいんだ」
「うん」
「………だから………命が家に入り浸ったら良いと思った………前に泊まった時持ってきてたろ?スキンケア用品」
「それが?」
「………俺の家にあったら良いと思わないか?」
葵さんの耳が赤く染まっている。
要は、私がお泊まりしやすいようにって事?
「恥ずかしいついでに言うけど、俺が金出すから服買うなら同じの買って家にも1つ置いておけば良いとか気持ち悪い事考えてる」
ハンドルに頭を打ち付けはじめた葵さんが可愛い。
………でも痛そう。
「ペアグラスすら買ってしまう自分が怖い………ごめんな、気持ち悪くて」
「う~ん。でも、嬉しいよ」
「え?」
「勿論、普通に元彼とかに言われたら気持ち悪いし近寄るなって思っちゃうけど…」
葵さんは勢いよく私の方に顔を向けた。
さっきまで赤かったのが嘘のように顔色が悪い。
「葵さんのは………嬉しい………葵さんの家に私の私物が増えていく………」
葵さんは呆然と私を見つめていた。
「葵さん………早く結婚したいね」
葵さんは一気に赤く染まった。
「命が可愛すぎて辛い」
葵さんは赤い顔を見られたくないみたいで顔を両手で隠してしまった。
「夫婦茶碗買う?」
私がニヤニヤしながらそう言うと、葵さんは小さく「買う」って呟いた。
ワイルドなのに可愛すぎるよ葵さん。
キュン死する。
「クソ家帰ったらネットで注文しまくってやる」
「エロ下着は要らないからね」
「それはそうだろ」
「え?葵さんなら買うかと……」
葵さんはジト目で私を見た。
「今揃えたいのはそういうんじゃない。家にあるのがエロ下着だけだとそのまま会社行かせらんねえだろ?気が気じゃねぇ」
「ヤバイ。キュンとした」
「勿論エロ下着は無くても裸エプロンの準備はバッチリだぞ」
「葵さんの頭が呪われた。そして私のキュンを返せ」
私は思わず呟いた。
「葵さんが想兄に呪われた」
「俺も裸エプロンは夢だ!ってか男なら一度は体験したいだろ!」
「なら、自分で着ろ」
「その体験じゃなくて、彼女に裸エプロン着てもらってそのままヤラシイ事をするって体験に決まってるだろ!」
「力説されても………」
「命は似合う。メイド服もたぶん似合う。できればスカートはロング丈のメイド服なら尚たぎる!ミニスカでガーターベルトも捨てがたいが……」
「完璧に呪われてるから」
葵さんの呪いを解く呪文を誰か教えてくれないだろうか?って思ったの仕方がないと思ったのだった。
葵さんが乙女です。




