アイスコーヒー 鈴木博彦目線
実里ちゃんの彼氏目線です。
俺の仕事は某百貨店の企画営業だ。
一年前から話し合いや会議を重ねてイベントなどの成功を目指す。
今年も来年の夏に向けての会議を目前にして企画を練っていた。
「女って何が好き?」
彼女である実里に聞くと呆れたような顔をされた。
「私はダーリンだけど世間一般で考えれば光り物じゃん?」
「光り物か~俺以外の奴らも考えてそう」
「gunjoの独占デザイン出来たら死にそうなぐらい売れるよ」
「マジで!」
次の会議で企画に出したらボロクソに言われた。
「gunjoの独占デザインなんて誰もが考えんだよ!そのオファーが取れたら苦労しねえよ!」
試しに電話をかけたが取り合ってもらえなかった。
「gunjo全然相手にされなかった」
実里に愚痴ると実里はニコニコしながら言った。
「ダーリンのためだから、会ってもらえるように頼んでもらってあげる」
「は?」
「gunjoのデザイナーにつてがあります」
「は?」
「駄目だったらごめんね」
「いや、絶望的だったものに光が当たったって事だろ?」
「期待しすぎないでね。私の知り合いじゃないから」
「ありがとうな実里」
実里は本当に可愛い顔で笑ったんだ。
土曜に指定された渋い喫茶店でアイスコーヒーを頼み、ガムシロとミルクを入れてストローをグルグル回す。
完璧に緊張している俺の前に現れたのはワイルドなアゴヒゲの似合うイケメン。
「鈴木さんでしょうか?」
「は、はい!」
「自分は河上葵と言います」
名刺を出してくれた河上さんに俺も慌てて名刺を手渡した。
なんなんだこの人超格好良い!
「お話とは?」
「あ、あの………」
緊張から喉がカラカラで、俺は甘いアイスコーヒーを飲んでから言った。
「自分の勤める百貨店のジュエリー部門の目玉としてgunjoさんの独占デザインを打ち出したいと考えていまして」
「………すみません。うちは俺がほぼ一人で作ってるので数を大量に作ることが出来ないんです小さなジュエリーショップなら出来ますが、百貨店のような大手とは契約出来ません」
河上さんは本当に申し訳なさそうに言ってくれた。
それは納得出来る理由だ。
「も、もし、河上さんが嫌じゃなければの話しなのですが、gunjoとうちのコラボって形でうちが抱えている職人に河上さんのデザインを作らせるのは出来ない事でしょうか?」
「………」
河上さんが悩み始めると何となく俺は冷静になってきた気がした。
「あ、あの、無理なら大丈夫です。ブランドには色々あると思うので………あの、失礼ついでに聞いても良いですか?」
「なんでしょう?」
「個人的に河上さんに仕事を依頼することは可能ですか?」
gunjoは実里からはじめて聞いたジュエリーブランドだ。
実里はアクセサリーの類いを欲しがった事がない。
そんな実里がはじめて話してくれたジュエリーブランドがgunjoだ。
「個人的にですか?」
「勿論値段にもよるんですが………結婚指輪を………」
河上さんは物凄く驚いた顔をした。
「実は、プロポーズしたい人が居まして!彼女を喜ばせてあげたくて………」
河上さんは困ったように笑った。
「すみません。無理ですよね」
「いや、他人事じゃないと思っただけですよ」
「他人事?え?」
「自分もプロポーズしたい人がいて今、指輪のデザインを中心に考えているんですよ」
河上さんは持っていた革製のシンプルなデザインのビジネスバッグからスケッチブックを出すと俺の前に置いた。
俺はそれを受けとると中を見た。
凄い!!
全部のデザインを見てから俺は気に入った月桂樹の巻きついたようなデザインのペアリングのページをもう一度見直した。
結婚が勝利のようで良い。
「月桂樹ですか?」
「あ、はい。これ良いですね」
「じゃあこれをお作りしますよ」
「へ?」
「この竹のデザインは細工がシンプルなのでそちらの職人さんも作りやすいと思います。どうですか?」
何を言われているのか解らず呆然とする俺に河上さんはニッと笑うと言った。
「結婚指輪の前に婚約指輪ですけどね」
「え?………婚約指輪……」
「お安くしておきますよ」
「マジか……」
俺が小さく呟くと河上さんはニヤッと笑った。
「マジで安くするよ。俺もプロポーズ仲間が居ると心強いしな」
砕けたしゃべり方の河上さんはやっぱり格好良くて憧れる。
「河上さんは格好良いですね」
「へ?そんなおだてても何も出ねえよ」
「いや、俺は女顔で私服で彼女とデートしてると普通に男にナンパされるし………河上さんに憧れるって言うか………」
「何で?鈴木君は彼女のためにプロポーズ頑張ろうって思える格好いい性格してるだろ?」
河上さんはニカッと笑った。
やべえ、この人格好良すぎる。
「河上さん、ありがとうございます」
「ちゃんとした契約は後でな、そろそろ彼女と待ち合わせしてる時間だから店出るか?」
「は、はい俺も彼女と待ち合わせしてます」
「何処まで?」
「駅です」
「なら乗っけてけよ」
「へ?」
「俺車だから駅まで乗っけてく」
何から何まで格好良い!!
「ありがとうございます」
河上さんに俺が完璧に憧れを抱いてしまったのは言うまでもない。
葵さんは男が憧れる男?




