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兄夫婦

風邪を引きました。

風邪を引く話なんか書くから………

 目が覚めると私は葵さんに抱き締めらるようにして眠っていたらしい。

 葵さんは昨日から私の看病をしてくれていた。

 葵さん、疲れちゃったのかな?

 葵さんの規則正しい寝息にまたうとうとしてきた。


「命、大丈夫か?」


 突然声をかけられ意識が戻ってくる。


「大丈夫」

「そ~か………どんぐらい触って大丈夫なんだ?」

「それって………キスぐらいなら?」

「じゃあ、キスしよう」

「う、うん」


 葵さんは嬉しそうに笑うとゆっくり顔を近づけてきた。

 ついばむようなバードキスの後に深く長いキスをされた。


「命、愛してる」

「キュン死!」

「可愛いな」

「キュ~ン」

「マジ可愛いな!汗かいたろ?着替えるか?手伝うぞ」


 葵さんが素早い動きで私のブラウスを脱がしていく。

 

「て、手慣れすぎ!」

「純粋に着替えを手伝ってんだろ?」

「いや、胸触りながら言われても説得力ないから」

「ブラも要らないな」

「聞け!私は病み上がりだから!お風呂入ってないから!」

「俺は気にしない」

「しようよ!」

「………気にしなi」

「して!」


 葵さんは暫く黙るといった。


「もっかい」

「はい?」

「もっかい゛して゛って言えよ」

「そう言う意味じゃないから!」

「そう言う意味で言えよ」

「だから、病み上がり!」


 葵さんは不貞腐れたような顔をしてみせる。

 か、可愛い。


「あ、葵さん………」

「何だよ」

「私は、葵さんが大好きなの……だから、き、嫌いにならないで」

「………なる訳ないだろ?ぜってー俺の方が命を好きなんだ!命を嫌いになるなんて俺の辞書にはのってねぇからな」

「………葵さん」

「何だよ」

「………して」

「………お前は~」

「今、葵さんに凄く触りたい」


 葵さんは両手で顔を覆ってしまった。

 耳が真っ赤だ。


「葵さん」

「する。するけど、とりあえず飯食ってからだな」

「大丈夫だよ」

「命の腹の虫は俺がヤル気満々の時にかぎって泣き叫ぶからな」

「も、申し訳ない」

「だから、先に鳴けなくしてやる」


 葵さんはニシシっと笑った。

 そんな事でもキュンとしてしまうからたちが悪い。

 葵さんは私に軽いキスをしてからキッチンに向かった。

 あの人は私が内心悶えているなんて知りもしないのだろう。







 葵さんの料理は美味しい。

 白菜の中華スープがとくに美味しかった。

 お粥と中華スープってどうなのかとおもったけどお腹いっぱい食べてしまった。

 まあ、その後が大変だった訳だけど。

 お風呂に入りたいって言ったら入れられた。

 うん、入れられた。

 のぼせてぐったりの私を葵さんは嬉しそうにお世話してくれた。

 元々葵さんのせいだからお世話するのは当たり前だ。


「命の兄は格好良いな」

「コンちゃん?」


 葵さんは私をベッドに寝かせてから優しく抱き締めてそう呟いた。


「そう」

「兄貴はもう一人居るんだよ。(おもい)兄とは喧嘩してばっかりだけどコンちゃんは優しいから大好きな兄貴だよ」

「へぇ。俺は一人っ子だから羨ましい」

「………でも、もうすぐコンちゃんと想兄は葵さんのお兄ちゃんになるんだよ」

「………そうだな。命、第2ラウンドして良い?」

「だ、駄目!本当に動けなくなっちゃうから」

「動けなくしたい」

「駄目!」

「命に触りたい」

「さっきいっぱい触ったでしょ」

「もっと」

「駄目!」


 葵さんは不貞腐れた顔だ。

 可愛いけどもう騙されない!

 

「も、もうちょっと元気になったらね」

「………絶対か?」

「う、うん」

「絶対なら我慢する」


 何かまずいことを言ったかも知れない。

 

「は、話は代わるんだけどコンちゃんに葵さんをちゃんと紹介したいと思ってます」

「挨拶ならしたぞ」

「うん、でもコンちゃんの奥さんのアリスちゃんにもお世話になってるからアリスちゃんとははじめましてでしょ?」

「まあな」

「美人だからって惚れちゃだめだよ」

「バカ、命以上に俺が惚れられる女なんて存在しねえよ」


 葵さんはまたニシシっと笑った。

 ああ、そんな顔されたらキスしたくなっちゃうよ。


「命、キスして良いか?」

「へ?」

「命見てたらしたくなった」


 心を読まれたかと思った。


「軽く、な!」

「う、うん」


 葵さんの優しいキスにうっとりしてしまう。

 葵さんはゆっくり唇を離すと言った。


「これ以上はヤバイな。歯止めがきかなくなる」

「葵さん好き」

「煽るなよ」

「だって好きなんだもん」

「………動けなくなったら俺が全部するから手加減無しに抱いて良いか?」

「だ、駄目!」

「煽った命が悪い」


 葵さんは色気たっぷりの笑顔の後私にキスの雨を降らせた。

 もう色々凄すぎて、完璧に立てなくされたのは怒って良いと思う。








 翌日まだ気だるさの残るものの、コンちゃんの新しいお家に私と葵さんは向かった。

 まあ、呼び出されたと言う方が正解か?


「いらっしゃい。はじめましてアリスと言います」

「はじめまして、河上葵と言います」

「ふふふ、噂通りのワイルドさんね!上がって!」


 アリスちゃんのお出迎えに葵さんは緊張気味だ。

 

「葵君、良く来たね」

「お邪魔します」


 コンちゃんはニコニコしながら葵さんをソファーに座らせた。


「わざわざ来てもらって悪かったね」

「いえ、こちらからもちゃんと挨拶したいと思ってましたので」


 葵さんの嘘つき。


「ミコはもう大丈夫?」

「え?う、うん。大丈夫」

「………ミコ?」

「あら、コンさん、こんなに顔色良いのに疑ってるの?」

「いや、気だるげだから……」

「気だるくっても元気なら良いでしょ?」


 アリスちゃんには解ってしまっているらしい。


「コンさんには後でちゃんと説明して泣かせてあげるから」

「僕泣かないよ」

「ふふふ、そうかしら?」


 アリスちゃんの可愛い笑顔にコンちゃんは苦笑いを浮かべた。


「まあ、元気なら良いけどね」


 コンちゃんはアリスちゃんが出してくれた珈琲を一口のみ言った。


「ミコも前彼と仕事場が一緒じゃやりにくくない?」

「コンちゃん、何でその話からしようと思った?」

「純粋な興味」

「やりにくいかやりにくくないかで言ったらやりにくくないよ元々仕事の延長で付き合ってたようなもんだし……」

「あっちは未練ありそうだったよ」

「関係無いし、今は葵さんが居るから……」


 思わず横に座る葵さんの顔を見るとニカッと笑われ、手をギュッと握られた。


「もし、葵君と付き合ってなかったらヨリを戻してた?」

「まさか!戻さないよ!」

「何で?」

「アイツは私に仕事辞めて本場で料理の勉強しろって言ったんだよ!」


 葵さんがキョトンとしている。

 コンちゃんとアリスちゃんは深いため息をついた。


「まさかミコちゃんの地雷を二つも踏む人が居るなんてね」

「地雷?」


 アリスちゃんの言葉に葵さんはまたキョトンとしている。


「前彼の方がミコの好みのタイプかなって思ったけど無理だね。ミコもよく付き合ってられたね?」

「仕事の話ばっかりしてたし、料理しろなんて言われたこと無かったから………」

「まあ、冷めるわな」


 コンちゃんは苦笑いを浮かべた。


「葵君はそう言うこと言わない?」

「言わない!」


 コンちゃんは葵さんに視線をうつすと言った。


「葵君はミコと結婚したらミコに家に居てほしくない?」

「………お見合いの時、命は趣味が仕事だって言ってました。趣味が仕事の人に家に居てくれって言うのは酷ではないですか?命は俺の趣味が料理することだって言ったら尊敬するって言ってくれたんです。お互いに趣味に口出ししない。そんな関係がかなり心地良いです」

「必要に迫られてじゃなく、料理が趣味?」

「はい」

「ミコ、良い男捕まえたね」

「でしょ!」


 私がニヤニヤすると、コンちゃんは不思議そうに葵さんの方に視線をうつした。

 私も葵さんの方を見るとアリスちゃんがマジマジと葵さんを見つめていた。


「アリス、どうしたの?」

「え?ああ!御免なさい!葵君がつけてるアクセサリーが全部gunjoだったから気になっちゃった!」

「アリスちゃんgunjo好きなの?」

「大好き!色んな雑誌とかチェックしてるはずだけどこれは見たことない物ばったり」

「こんな調子だから結構な数買わされてるよ」


 コンちゃんは呆れたように呟いた。


「それは、ありがとうございます」 

「「へ?」」

「葵さんの仕事はgunjoのデザイナーです」

「「はぁ?」」

「これは試作で作った物なので市場には出回らないんですよ。すみません」


 アリスちゃんの目がキラキラしている。

 

「あ、葵君………お安く手に入らないかしら?」

「勉強させていただきますよ」

「コンさん!買って良い!」

「聞く態度じゃないよアリス。買う気満々じゃないか」

「えへへ」


 アリスちゃんはコンちゃんに抱きつくと上目使いにキラキラビームを繰り出した。


「わ、解ったよ買えば良いんでしょ」

「ありがとうコンさん大好き!」


 コンちゃんが目の前でイチャイチャしてるのを見るのは、前は嫌だった。

 でも葵さんと一緒だと、気にならないかも?

 さっきから葵さんが手をつないでいてくれるからかな?


「命は?」

「へ?」

「俺のアクセサリー欲しくないの?」

「一番大事なのもらってるよ」

「う~ん。それはそれだろ?」

「でも、気に入ってるからこれで良いよ」


 葵さんに自分の首に下がっているネックレスを見せた。

 葵さんは不満そうだったが関係無い。

 ジュエリーデザイナーをしているから葵さんを好きになったんじゃないんだから。

 

「欲しくなったら自分で買うよ」

「え?いやいや、プレゼントするって」

「葵さんは色んなプレゼントしてくれてるのにまだする気?」

「え?何か特別にあげたっけ?ネックレスぐらいじゃね?」

「料理も作ってくれるし、看病もしてくれたよ」

「それプレゼントじゃねえから」

「え?プレゼントだよ~」


 私が笑顔を作ると葵さんは不満そうに言った。


「命には一点もので作るから待っとけ」

「え?いいよ」

「駄目、命はモテるから俺のって証を付けとかないと心配」


 な、なんつう殺し文句なんだ!

 萌える!


「良いな~ミコちゃん愛されてる!」

「アリス、その言い方だと僕が愛してないみたいだろ?」

「コンさんも私を一人占めしてくれる?」

「アクセサリーを大量に買わされる気配しか感じないよアリス」

「てへ!ばれちゃった!」


 ああ、コンちゃんがアリスちゃんとイチャイチャしているのを見てるのも微笑ましい。

 

「ああ、葵君とミコがイチャイチャしてるとモヤモヤするんだけど」

「え?」

「ああ、ミコも人のものになっちゃうんだね」


 コンちゃんのしみじみとした言葉にアリスちゃんはクスクス笑った。


「それ、ミコちゃんが私たちの結婚式で言ってたのと同じ台詞よ」

「え?そうだっけ?仲良し兄弟だからかな?」

「きっとそうね」


 私は仲良く笑いあう兄夫婦を見ながら、葵さんとこの二人みたいな仲むつまじい夫婦なりたいと思ってしまったのは秘密だ。


結局私の作品に出てくるカップルはバカップルばっかり………

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