餌付けしたい 河上葵目線
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俺にとって恋愛とは実に理不尽な物である。
向こうからよって来るくせに、構わないとすぐに『ねぇ、私の事本当に好きなの?』とか言ってくる。
いやいや、お前からよってきたんだろ?百年の恋も冷めるってもんだろ!
「なら、別れよう」
そっちから言ったくせに酷いとか、悪魔だとか言いたいこと言って罵ってヒステリックな姿にさらに冷めるのは許して欲しい。
まあ、こんなのは序の口だ。
俺は料理を作るのも食べるのも好きだ。
女性ってのは何故自分の女子力ってやつをひけらかしたがるんだろうか?
「私が美味しい料理作ってあげるね!」
そう言って俺の家に上がり込み、俺の大事なキッチンを荒らす。
旨いなら許せる。
たが、俺好みに料理するやつはいまだに現れていない。
食べてみてアレとアレが足りないって解る。
鍋に戻して味付けし直して出したら殴られた。
「サイテー」
「え?何がダメ?美味しい方が良いだろ?」
グーで殴られるのはなんか違うと思う。
こんなことが続き女性を家に上げなくなった。
「河上さん結婚は良いですよ~」
「はあ………そうですか………」
取引先の人に言われた。
新婚らしい。
「河上さんの好みのタイプは?」
「そうですね………料理が出来ない人かな?」
「え?そんなんですか?料理できた方が良くないですか?………1人知り合いに料理のせいで娘が結婚出来ないって言っていた人が居ますよ。紹介しましょうか?」
面倒臭くて曖昧に答えたらバッチリセッティングされてしまった。
仕方なく行ったお見合い。
そこに来たのはダークブラウンのロングの髪の毛を毛先だけユルく巻いた綺麗な女性。
少し気の強そうな目元は化粧のせいかもしれない。
ハッキリ言って彼女、岩渕命は面白い女性だった。
料理が出来ないことを力説。
大人な出来る女性の雰囲気なのに料理を食べてる時は目をキラキラさせて可愛い。
料理が出来る人を尊敬しているらしい。
作る料理は軍用兵器だなんて面白い。
彼女との話は楽しい。
流行りの服やブランドや香水などなどの話は全くしないで、何処のパスタが旨いとかあそこの裏に隠れた名店があるとか………マジで楽しい。
彼女ともっと話がしたい。
俺はその日から彼女の事をよく考えるようになった。
彼女を紹介してくれた取引先の人にもう一度彼女に会わせてほしいと頼んだ。
次に彼女に会った時彼女は俺を胡散臭そうに見つめた。
結構ショックを受けている自分がいた。
だからか?俺は食事の前に彼女に持ってきたミルフィーユを食べるように言ってしまった。
ミルフィーユの箱を手渡した瞬間に後悔した。
男の俺が彼女のためにミルフィーユを作るなんて気持ち悪いと思われても仕方がない。
だが、彼女はミルフィーユを物凄く喜んだ。
ミルフィーユを口に入れた彼女の幸せそうな蕩ける笑顔になんだかキュンとしてしまった。
しかも、俺が作ったって言っても彼女は引いたり気持ち悪がったりしなかった。
彼女ともっと親しくなりたい。
俺は゛命ちゃん゛と彼女を呼んでみた。
彼女に嫌がられ、゛命゛と呼び捨てにすると手馴れすぎだと言われた。
そうかもしれない。
でも、彼女との次の約束をとりつけるためならチャラく見られても良いと思えた。
餌付けしたらなつかないかな?
次は何を作って持って行こうかな?
彼女は喜んでくれるかな?
彼女の美味しそうで更に幸せそうな顔がまた見たいな。
俺は無理矢理取り付けた金曜の予定を考え、ニヤニヤしてしまうのであった。
葵さん、すでにメロメロじゃないか?