妹の大事な男 蜂ヶ谷魂目線
命ちゃんのお兄ちゃん目線です!
ミコは小さい時からがんばり屋で、僕の後をついてくる可愛い妹だった。
弟の想のやつはよくミコと喧嘩していた。
僕はそれを止める係。
ミコも想も僕の言う事をよくきく良い子。
まあ、想は一度喧嘩でボコボコにしてから逆らわなくなったんだけどね。
ミコは僕にしがみついて泣くのが定番で可愛かった。
僕が結婚した時もボロボロ泣いていたミコは僕の中では泣き虫で可愛い妹なんだ。
僕は結婚してすぐにロシアに行く事になった。
ロシアで五年アスリートと話し合いに話し合いを重ねて開発してきた新商品をいくつかの広告会社に依頼。
その中にミコが就職した会社もあってちょっとドキドキした。
もしかしたらミコが仕事しているところを見られるかも知れないって会議室をのぞくと重役達に捕まった。
会議室の椅子に座らされた所で入ってきたのはミコだった。
顔色が悪い。
緊張しているのかな?
なんだかハラハラしながら見つめてしまった。
まるで小さい時のミコの学芸会を見に行った時みたいだ。
ミコのプレゼンは完璧だった。
けど、相手が悪かった。
どっちも良かったけどどちらかと言えば向こうだった。
ミコはボーっとしていてなんだか危なっかしく見えた。
ミコの上司がミコの肩を叩くとミコはゆっくり立ち上がり、ふらりとふらついた。
「ミコ!」
思わず駆け寄る。
話しかけると虚ろな目で僕を見た。
頑張りすぎだと言えば泣き出してしまった。
「こ、コンちゃん、気持ち悪い」
「僕が?」
「違っ、吐く」
「え?……は?ま、待って!トイレまで我慢」
「無理」
僕は慌ててミコをトイレに運んだ。
ミコが辛そうなのを見るのは僕も辛い。
そのうち妻のアリスが来てくれて二人でミコを連れて帰ろうと考えた。
勿論妻はミコが大好きだから看病をしたがった。
けれど、ミコはそれを拒否。
聞けば見合い相手と会うのだという。
いつもなら男よりもアリスを優先するのに。
それだけ大事な男って事?
ちょっと寂しくなったよ。
ミコが電話をかけたいと言うから、ミコをアリスにまかせて僕は薬とスマホをとりに会議室に向かった。
会議室では我社の人間とミコの会社の人間が気まずそうにしていた。
そして、ミコの会社の人間の一人が僕に気がつくとつめよって来た。
「あんたは命の何なんですか?」
「君こそミコのなんなんだい?」
「…………俺は命の……前彼です」
「前彼!僕はミコの兄貴だよ」
「え?」
「前彼君、悪いけどミコの鞄貸してくれるかな?今彼君に電話しないとなんだよ」
フリーズする前彼君の手から鞄をひったくると、鞄の中からミコが何時も薬を入れてるポーチを取り出す。
ちなみにこのポーチは僕のプレゼントだ。
スマホを探しているとスマホが鳴った。
漸く見つけたスマホには゛葵さん゛の文字。
葵さんってのが今彼か?
取り合えず通話ボタンを押す。
『モシモシ命?コンペどうだった?お祝いか?それとも残念会か?どっちにしろ旨いもん食わしてやるぞ』
「悪いけど、ミコは今トイレでリバースしてるからお粥ぐらいしか食えないんだ」
『………誰?』
「僕は蜂ヶ谷魂って言います。宜しく葵君」
『………命は大丈夫ですか?場所教えて下さい。迎えに行きます』
「ミコなら大丈夫。今僕の奥さんがついててくれてるから。ミコはこのまま家でゆっくりさせるよ」
『待って下さい。俺が看病するんで、場所を教えて下さい』
看病する気があるんだ。
『命と付き合う時俺が甘やかすって約束したんです』
「へ~。ミコの心を掴むのが上手いね」
『場所を教えて下さい』
なんだよ、結構良い男じゃん。
ミコが他の男とは違うって言うだけあるがも?
「ちなみに君はミコの何処が好きなの?」
『………料理が出来ない所から始まって今は全部です。雰囲気から何から何まで好きです』
料理が出来ない所から………
これは、逃がしたらまずいね。
「場所はね……」
僕は彼に会ってみたくなったんだ。
会社のロビーの休憩所のソファーにミコを肩に寄りかからせながら葵君を待っていると、会社の前に渋い外車が止まった。
出てきた男はワイルドなイケメン。
慌てたようにロビーに入って来ると迷わずミコのもとに駆け寄った。
「命、大丈夫か?」
「葵さん……」
ミコは彼を見るとニコッと笑った。
顔色は最悪だが、嬉しそうだ。
「命がすみません」
葵君は僕に頭を下げた。
「それは僕の台詞だよ。何時もミコが迷惑をかけているんだろ?」
「いえ、何時も癒されてます………」
「どうかした?」
「命が文句も言わずに寄りかかっていられるぐらい信頼をおける人って事ですよね………」
どうやら僕の正体が知りたいみたいだ。
「安心して良いよ。僕はミコの兄貴だよ」
「!!……は、はじめまして河上葵と言います」
「葵君、君はミコの好みのタイプとはかけ離れている」
「………」
「でも、ミコは君が大好きみたいだ。君は僕のもう一人の弟になるの?」
「……なります。絶対に」
「そう、ならミコの事宜しくね」
「はい」
僕が笑いかけると葵君はミコをお姫様抱っこして颯爽と去っていった。
あれは格好良いな。
男の僕でも憧れちゃうな。
あんなに軽々しくお姫様抱っこできるなんて………僕も少し鍛えないと駄目かな?
「ミコちゃんコンさんより彼が好きなんだって」
「アリス、泣いちゃうから」
「プチマッチョなんだって」
「………僕も危なげなくアリスをお姫様抱っこ出来るように鍛えようかな」
「楽しみ!」
「まずは体力測定してどのトレーニングでどれだけ筋力付くか測定して……」
「もしかしてまた仕事~」
アリスが不満そうに口を尖らせているのを見ながら、僕は次の企画の構想を練るのだった。
シスコンです。
すみません。
シスコンです。




