殺人鬼
誤字脱字常習犯、不定期更新、文章が雑、以上が大丈夫な方はぜひどうぞw
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戦いの刹那、最初に目に写ったのは緋色の線だった…
それが相対する相手の髪と眼光だと気づいた時、また目に写ったのも緋色…いや、それより少し濁った紅。
それが自身の血であることに気づくのと、己の最後であると言うことに気づいたのは同時だった。
「……見事…」
その言葉が最後の力だったかのように男は膝から崩れた…
いや、男と言うには異常な程に巨体で筋肉質だった。
額から突き出した一本の角、手には黒い枷。
人の目で見て語るならそれは紛れもなく鬼であろう。
鬼は自分の身の丈よりずっと小さい少年に腹を貫かれていた、貫かれた傷口から焦げ臭い煙がブスブスと立ち昇っている。
引き抜いたその手からは鬼のものであろう血が滴っていた。
戦いを終えて倒れた鬼が最初に見たものも緋色の線だった。
いや今度は少し薄い…、まるで血を水で薄めたような色の線が少年の紅色の瞳から下に伸びていた。
「なぜ泣く、人の子?」
鬼が呟いた、傷口の煙は徐々に増し、チロチロと赤い炎が現れ始める始末。
もはや己の体を立ち上がらせる力も命を繋ぎ止める余力も無い。
…無いからこそ言葉を発せられた。
終わる命、終わるならばせめて己を打ち倒した存在と一時の語らいを…
少なくとも鬼にとってそれは己のほんの僅かな余命よりも大切な一時に思えた。
「…さぁ、なぜかな…
強いて言えば運命にだろう…」
ただ一言、少年は静かにそう呟いた…
「そうか…、運命にか…」
炎はその勢いを増して段々と鬼の体を包んでいく。
「それはまた…、なんともまた…難儀なものだな…」
鬼もまた静かに、短くそう返し少しだけ微笑んだ。
心なしか己を包む炎が痛ましい熱ではなく、優しく包み込む温もりに感じられた…
鬼はどこか晴れ晴れとした微笑みを浮かべたまま目を閉じる、もう開く事は無いであろう…
その少年を写した瞳を閉じる僅かな間に鬼は思う。
一体どの運命に彼は涙を流したのであろうか…
悪鬼羅刹、魑魅魍魎と戦う事を強いられた己の血の運命か…
はたまた我ら鬼の餌食となった人の運命にか…
あるいは……
そのどれだったとしても鬼の言葉は変わらない。
難儀なものよ…
優しき事が苦痛のこの世でそう生きねばならぬ人の性… 彼に待つ苦悩と苦痛の重みはいかほどか…
せめてこの優しい恩敵に少しでも多くそして長い安らぎがあらんことを…
神を捨て人を捨て、悪鬼となった自分が何に祈るというのか。
そう心で一笑して、とうとう鬼は息絶えた。
………
「終わったかね?」
「…あぁ…」
廃墟の出入り口で退屈そうにそう訪ねる男に少年は短く返した。
腕に滴っていた血はいつの間にか乾いて落ちている。
「そうか…、お疲れさん これでこの辺りも少しは静かになるだろうさ…」
そう言って、手に持つ一枚の紙をヒラヒラと弄びながら男はタバコに火をつけた。
その姿からは賛辞とは裏腹に心底どうでも良さそうな空気を感じる。
「さぁ、どうだろうね…、この辺りは酷く荒んでるから… 多分またすぐに現れる…」
男の態度も気にせず少年はそう呟き男に一瞥もくれずに歩く、男も特に咎める様子はない。
ようするにそう言う関係なのだ、互いに深入りはしない。
男は自分のメリットと仕事のため、少年は少年の目的、のために行動を共にしている。 ただそれだけの関係だ…
「あぁ、そうそう 今回のターゲットのアレ、遅くなったが一応資料揃ったし渡しとくわ。 まぁ終った後じゃあ意味もないがね…」
そう言って男は手に持っていた紙を少年に投げた。
少年はその紙を見ることもなく受けとり
「…必要ない…」
そう短く呟いたのと同時に紙が燃え始めた。
「あれま…、つれないねぇ…。
あ、そうそう言い忘れてた…お前の高校の新任が…って…もういねぇか…」
一瞬で紙は灰になりただ一文字を残してこの世から消えた。
【殺人鬼】
「…まぁ、べつに良いんだがね…」
やれやれと言った風に肩を竦めて男は少年と反対に歩き出す。
………




