最終話.この世界に幸福あれ!
街の中心、俺はそこにとある施設を創った。施設、と呼んでいい程立派なものじゃないが、扉を一つ置いたのだ。その前に立ち、自分が行きたい世界を思い浮かべ扉を開けると、異世界へ行ける。行き来は自由だ。
今まで異世界は、いくら望んでも向こうの神に選ばれなければ行くことが不可能だった。それを可能にしたのが俺が創ったこの世界、というわけだ。
「この扉があれば、いつでもどんな世界をも行き来出来る!」
「えっ、じゃあもしかして、ハルに私の行った異世界を見せてあげることも?」
「もちろん出来る」
自分の望む世界は、自分で選ぶべきだ。
「じゃあ、なぁんだ。いつでも来れるのか。今日は帰るよ! 実は私、世界から脱出してきちゃったから」
「あはは」と笑う。
脱出て……。
「違う世界に行っても良いんだぞ?」
「ハルに見せるまではそこにいるよ」
陽菜はにっこり笑って、俺の背中を押す。
「ハルの帰るべき所に帰りなさい!」
「陽菜――?」
「私はこの扉で帰るから」
悲しい表情では無かった。スッキリした、ずっと昔から知る力のこもった瞳。
もう陽菜は自分で歩けるのか。
「またな、陽菜」
俺には待ってる人がいる。帰るべき場所がある。俺が俺らしくいる理由がある。
だから、笑って言った。
「俺から会いに行ってやるからな! 超絶楽しみにして待ってろ!!」
格好良いセリフで最後を締め、陽菜に背を向けて歩き出す。
「……ハル、好きだよ!」
急に愛の告白とは、全く……。
「好きじゃなくて、大好き、だろ!!」
振り返らずに叫ぶ。
後ろから陽菜の可笑しそうな笑い声が聞こえた。
笑うとは失礼なやつだ。
そこから家まではそんなに距離は無い。けれど俺はゆっくりと世界を見ながら家へ向かった。
この世界が最終地点か。
変な話だが、もう世界を創り変える事も無いのかと思うと少し寂しいような。
角を曲がった所で、一直線上に家を捉えた。
「あれ? 何か家の前に人が……」
おいおい、次から次へと出てくるじゃないか。
何事だ、と思い小走りに近づく。
霧乃に柚香、シェルプにセルフィッシュ様もいる。
「せーの」
「「――!」」
ばらばら具合が凄い。ただ、せーの、の後に続いたのが俺の名前だと言うことは分かった。
「ハル君」だの「畠野君」だの「ハル」だの……やるんなら、揃えろよ。でも、何だろう。俺の帰る場所を示してくれたような、嬉しい感じだ。
皆の目の前で足を止める。
「お前ら、俺のこと大好きすぎだろ」
「いつもの……いつものハルだ!」
安心したように霧乃が涙ぐむ。
大げさな。
「ただいま、皆」
「「おかえりなさい!」」
今度は綺麗に揃った。
俺が楽しむのはここからだ。まだまだこれはスタートに過ぎない。とことん、楽しんでやるさ。誰よりもこの俺が!
住宅街には俺達の笑い声が小玉する。
これからも先も、きっと、俺達は、俺の創った世界の奴らは笑っている。
この世界に幸福あれ!




