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15.新たなる世界、新世界!

「私知ってるんですよ! セルフィッシュ様がハルや私に色々する理由! それはあなたが構って欲しいからですよ!! そう言えば良いじゃないですか!? 何ですか? 無駄に遠回りな事するからいつも嫌われるんです! 神の癖に、そういうところだけ堂々としてないで、セルフィッシュ様は飛んだ阿呆ですよ!! 私があなたに神を辞めて欲しいのは、一緒にいたいからですよ。はっきり言います! あなたに神は向いてない!! 存在感だけ極めて馬鹿みたいです!」


 またも沈黙。

 感情的になり過ぎたのか、霧乃は涙を落とす。

 何されても、言われても霧乃はセルフィッシュ様の事が大切なんだな、というのが伝わってくる。嫌いなやつに、ここまで本気でぶつかるやつはいない。


「馬鹿……阿呆……向いてない……」


 生気の無い声で単語を並べる。

 セルフィッシュ様もそれなりにダメージは受けているのだろうか。

 俺は静かに成り行きを見守る。


「……っ、うわぁぁぁん!! 霧乃の馬鹿ぁぁぁ!」


 どんな事が起ころうと、セルフィッシュ様が何を言おうと動じない心持ちで構えていたのだが、流石のこれは驚かずにはいられなかった。

 セルフィッシュ様まで変なスイッチが……。


「何よ、何よ、えーん!! 皆で私を悪者みたいにして! 辞められるものならもう神様辞めてるわよぉ……、でも、無理よ、そんなの出来るわけ無いわよ!!」


 もうこればかりは唖然するしか無かった。気がつくと


「ハル君! 霧乃がいじめるぅぅ!」


 と泣きながら抱きつかれていて俺は身動きの出来ない状態。


「ちょ、セルフィッシュ様、言いたい事は色々あるけど、良いんじゃないか? 神、辞めても」


 離れてもらうことを諦め、俺はそのまま言う。


「でも、そしたら、神の仕事は誰がやるのよ?」

「み、皆で?」


 セルフィッシュ様が俺から離れる。涙を瞳に浮かべたまま、「私、」と言葉を紡ぐ。


「私、神様辞める」

「セルフィッシュ様!!」


 霧乃が歓喜に満ちた声を挙げた。


「これからは、神がいない世界だ。新世界の幕開けだ。そんなかで俺が一番良いと思う世界を作ってやるよ!」

「セルフィッシュ様、一緒に行きましょう、下界へ」


 控えめに頷き、セルフィッシュ様は小さく「ありがとう」と言った。

 残念ながら、俺にはしっかりと聞こえてしまったわけだが。


 こうして、セルフィッシュ様は神様を辞め、下界で暮らすことになった。その事で、確実に世界は変わったのだ。


「セルフィッシュ様の事、二人にも伝えた方が良いよね?」


 下界に戻って第一声がそれとは、霧乃もつまらないやつだ。だが、他を先にするわけにもいかないので了承する。


「二人って、シェルプと弓影柚香の事?」

「そうですよ。……どうかしました?」


 表情を曇らせたセルフィッシュ様に霧乃が小首をかしげた。


「弓影柚香には、少し私の力を加えさせてもらってたのよ。解いてあげるべき、よね」


 心なしか、いつものセルフィッシュ様にはいつもの威圧感も最初に会った時の様な神々しいオーラはもうないような気がした。


「力って……?」


 霧乃が問う。


「弓影柚香には、世界構築の際に記憶を維持出来る様にしておいてあるの。逆に世界の人たちには、記憶を残さないようにしてるわ」

「そっち、だ。世界の人たちの記憶も残してあげろよ。セルフィッシュ様、もう大丈夫だろ? あんたは一人じゃないんだから」

「……うぅぅっ、ハル君!! 泣かせないでよぉ」


 全く、感情豊かな神様だ。

 俺と霧乃は顔を見合わせて笑った。

 セルフィッシュ様は、二人に会う前に、この問題を解決したいと言ったので、記憶の事は一先ず任せる事にした。その為には一度、天界に戻る必要があるらしく、今、俺は霧乃と二人で待機中だ。


「ハル、その、ありがとうね」

「いやぁ、セルフィッシュ様の事ばっかりは、俺は何も出来てないぞ?」

「それでも! 一緒にいてくれて、セルフィッシュ様を受け入れてくれて、だから、この結果に辿りついた。だから、ありがとう」


 まさか改まって礼を言われるとは思っていなかったので、面食らう。

 何だかむず痒い気もするが、そうか『ありがとう』か。悪くない。


「だっろ! 今ごろ俺の優しさに気がついて感謝か」

「はぁ。君ってやつは、これだから」

「霧乃! おまっ、今、溜息!」

「はいはい、細かいことは気にしない!」


 言いくるめられた気がするのは気のせいだろうか。不服だ。


「……まぁ、でも、約束守ってくれたね」


 約束? ああ――。

 俺の中に一つの記憶が蘇る。


『……ハル。うん、お願い。セルフィッシュ様を助けて! 世界を変えて!』

『任せとけ』


「約束……か。そうだな、守れたな」

「もしかして、あの日(・・・)の事?」


 霧乃が言ったあの日、というのはきっと俺が思い浮かべたあの日と同じなのだろう。セルフィッシュ様と霧乃は俺の過去を知っている。


「まぁな。俺は――、いや、やっぱ辞めた! セルフィッシュ様もそろそろ戻ってくるだろ」


 俺は本当は弱い人間だ。こうして今も、逃げた。話題をわざとずらして、霧乃に踏み込ませないようにした。


「そう、だね!」


 思った通り、もうその話題には戻らなかった。

 そして程なくして、セルフィッシュ様が戻ってきた。


「お待たせ、霧乃、ハル君」

「おかえりなさい。じゃあ……行きましょうか。二人の所に」


 少し、空気に重さを残して俺達は柚香とシェルプの元へと足を向けた。

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