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12.クエストクリア

 剣を抜き、地面を蹴り上げ走り出す。


「おっりぁぁああ!」


 大きくカーブした斬撃。

 スライムの中心部分に直撃したものの、HPは半分も減少していない。


「ふっ……スライム、お前もなかなかやるな」


 スライムに背を向け定位置に戻ろうとすると、シェルプが声を上げる。


「はたのん、気づいてますか?」

「えっ、あ、ああ、もちろん」


 何のことだか、さっぱりだ。だがしかし、気づいている、ということにしよう。

 それに、俺ともあろう男が些細な事に驚くはずも無い。


「このスライム、さっきよりもレベルが50も高いです!」

「マジか!! ……いや、今のは違う、そう、大丈夫だ、怯むな!」


 驚いた。まさか50も上のレベルだったとは。

 

「次は私ですね」


 シェルプが回ったり跳ねたりしながら、足元か固定されていない事を確認する。



「おお、期待の星。やってしまえ!」

「任せて下さい!」


 シェルプの攻撃。いつみても、それには人の目を引く華やかさがある。

 光がスライムの周りで弾ける。すると、見事急所を付いたのかスライムのHPをかなり減らす事が出来た。


「ナイスだ!」

「バトンタッチですよ、ゆずかん」


 シェルプに言われて柚香がおずおずと前に出る。


「うぅぅ、HP減らせなくても怒らないでよ?」


 柚香は空に向かって弓を引き、短い悲鳴と共にそれを放った。

 空に放たれた事で、スピードは落ちているが威力は増したように思える。


「なに、あれ?」


 霧乃が空を指差し、唖然とした。

 目を向けるとそこには大きく『スキル発動』の文字が掲げられていた。


「スキル!?」


 思わず叫ぶ。

 きたよ、きた!


「柚香、いけーっ!」

天時雨(そらしぐれ)! ――って、あれ、私何を……」


 柚香が勢いで叫んだ言葉と同時にスキルが発動したようだ。

 一気に空から数十本もの矢が振る。それは二体のスライムのHPを徐々に減らしていた。


「もう、少し」


 祈るように霧乃が呟く。


「あっ! やりましたぁ!!」


 スライムのHPはゼロとなり、二体のスライムは消失した。

 そして再び、空に文字が浮かぶ。


『魔法石獲得 クエストクリア』


「「や、やったぁー!」」


 声が重なる。

 この達成感と言ったら他に無い。

 俺達は顔を真っ赤にし、子供の様にクエストクリアにはしゃいだ。


 ***


「いやぁ、楽しかったー」


 家に帰ってきた俺達は、お茶をすすりながら一息。


「うん。私も楽しかったなぁー」

「そうね、こんなにはしゃいだの久しぶりかも」


 霧乃と柚香が笑い合う。


「そっか……、そうだよな!」


 笑みを浮かべ立ち上がると、三人が驚いた様にこちらを見た。


「どうしたんですか?」

「俺が楽しめる世界を作る。それは変わらない。けど、やっぱ皆が楽しんで思いっきり笑う世界が良いよな! 皆で楽しんだら、俺の楽しさも倍増だっ」

「つまり?」


 腕を組み、ため息混じりに笑う霧乃。


「つまり、次の世界はお前らが決めてくれ!」

「えっ!? あの、畠野君が……」

「そうだが? なんだ、なんだ、俺を見直したのか! そっか〜、いやぁ、照れるな」

「って、そんな事言ってないわよ! むしろ逆でしょ?」


 俺と柚香のやり取りに、シェルプが笑いをこぼす。


「はたのんはやっぱり面白いですね」

「シェルプは分かってるな〜」


 シャキッと指を顎に添えて見せ、俺は歯を光らせた。

 

 世界を変えるというよりも、まずはこの世界をベースの世界に戻すのが先なのだが、それはこの世界で一日を楽しんでからだ。


「学校行くぞ?」


 唐突な俺の提案に三人は驚きの声を上げた。


「ちょ、何急に」

 と霧乃。


「もう夕方よ? 今からって、何しに行くのよ」

 と柚香。


「流石はたのん! 私の上をいきます……」

 とシェルプ。


「おうおう、それぞれ言いたい事があるのは分かる。が、授業受けに行こうってんじゃないんだ。屋上、そこでRPG世界の星をみよう!」


 三人を落ち着かせ、真意を説明するとまた彼女らは驚いたような顔をする。

 

「ハルにしては良い考えだよ~! たまにはやるねっ」

「たまにじゃない。俺はいつも最高だろ?」

「うん。でも良いかも、星」

「暖かい飲み物でも持って、行きましょう! 屋上」


 そして俺たちは軽く、買い物をしてから学校の屋上へと向かった。

 色々してるうちに日は暮れていて、空を淡紫が覆っている。


「なんか、こういうの楽しいよな」


 誰もいない校舎に入り込み、俺たちの声だけが廊下に響く。


「どうする? 月が出てから上に行くか?」

「そだね。ハルの教室で少し時間潰そうか」


 教室に着くと、すぐさまシェルプが黒板を使って遊び始めた。それに付き合うようにして柚香も隣に並ぶ。

 後ろから見ていても、あの無邪気さには微笑ましさを感じる。


 俺は自分の席に座り、ぼんやりと教室内を眺めた。


「そういえば、ハルが初めて力を使ったのもここだったね」

「学校改革、だったけ? 何かもう懐かしいな」


 あのときは、柚香もシェルプもいなかったっけ。


「俺なんだかんだ、造った世界じゃなくて世界を造り変えていく日常を楽しんでたのかもなぁ」


 頭の上で手を組み、懐かしむように笑う。


「なにを言ってるんだか。まだまだ、造るんでしょ世界。それで変えてくれるんでしょ、セルフィッシュ様とか色々!」

「当たり前だ」


 それから少しして、俺たちは屋上へと向かった。

 階段を上りきるとそこには屋上に出る為の分厚い扉。


「あけるぞ」


 そう言ってから俺は、ドアノブに力を込めた。



「……あぁ、流石俺の造った世界だけあるな。綺麗だ」


 外に出た途端迎えてきた開放的な夜空には、輝く星屑が無限に散りばめられていて、少し斜めから、すべてを照らすように丸い月が顔を見せる。


「広いなぁ……世界って」


 呟くような声で柚香が空に手を伸ばす。


 風の音も、微かに震える心臓も、満天の星空も全部――全部、最高だ。


「星……いつも見てたはずなんですよ、私。でも、どうしてこんなに……この星は心を掴むんでしょうか?」

「それはきっと、俺と霧乃と柚香と……皆で見てるからだよ」

「そうですね! きっと、そうですよ」


 はあぁ。息をつき、っふ、と笑みを浮かべる。

 両手を空へ伸ばし、俺は叫んだ。


「よし!! 頑張るかー!」


 俺に不可能は存在しない、そうだろう?

 なら、やってやろう。俺にしか出来ない事を。

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