雛と魔女
そんなこんなしてる内に舩の時間になってしまった。
「雛、そろそろ時間よ」
「んー」
食パンをくわえながらこれもまた黒い靴を
履き、黒い鞄を抱え家を出る。
おっとっと、いけないわすれてた。
黒く細長い袋を肩に担いでわたしは
再び家を出る。
いってきますは言わない。
魔女の標的になるので魔女日の日には
結界外では大声をだしてはいけないからだ。
家を出て一歩。
はい、到着。
いやー、これだけが魔女日のメリットだね。
空を見上げると舩の灯りが見えてきた。
ん?何かがおかしい…
そして、舩が落ちてきた。
は?いやいや、そういう風に見えただけかもしれない。
いつもは、器具をおろしてくれるんだけどおかしいな?
舩は傾き、逆さまになっている。
こんなことが起こるはずがない。
そして、舩は真っ逆さまに家に向かって
落ちる。
「お母さん!逃げて!」
ダメだ。
聞こえてない。
逃げるしかない!
そう思った瞬間舩が加速して家を押し潰した
その衝撃で吹き飛ばされる。
お母さんの声は聞こえない。
そして、地面に叩きつけられた。
痛む体を起こして前を向くと舩から
乗客達が出てきていた。
家があった場所に舩があって、その上に乗客が立っている。
「いやーよかったな」
「ほんとうだよ。中は結界だらけだからね」
なんで…なんでなんだよ!
あいつらは、ケガもしてない。
あたしはお母さんが死んだ!
下にある家には気づいていない。
なんであいつらは呑気に生きているんだ?
死ねばいい。
そうだ、死ねばいい。
「殺さなきゃ…」
立ち上がると、そこに魔女がいた…。