雛という少女
日の本国、東北地方、山形区域内、上山市にて…。
外は白く濁った霧につつまれている。
ピピピと時計が音をたてる。
あぁ、うるさい…朝から最悪の気分だ。
しかも、今日の天気は魔女霧。
凄く濃いやつだし…。
「よっこらせっと」
ベッドから立ち上がって洗面所に向かう。
春だというのにこうろぎが忙しなく鳴き
犬も騒がしく吠えている。
そう、今日はなんたって魔女日なのだから。
ぼさぼさの長い黒髪を後ろでまとめる。
「ひなー!起きなさーい!」
「もう、起きてるー!」
まったく、いつまでも子供扱いしないで欲しい。
襟もとと袖が黒いセーラー服を着て、これもまた黒い
スカートを履き黒いソックスを履き下に降りる。
「おはよー」
「おはよう、あら今日は早いのねぇ」
「霧のせいで早く起きた」
「へぇー」
まったく、一人娘が珍しく早起きしたんだから、
少しは褒めてくれてもいいんじゃない?
ふとテレビに目をやると天気予報が始まっていた。
「今日の山形区域内の霧の濃度は米沢0,3%
山形89%…」
うわ…マジかよ…。
「なお、上山市は90%を超えたため、外出のさいは
舩をお使いください…」
あぁ、もうサイアク…
舩?ウソでしょ?
「雛、今日は舩なんだから、早く食べちゃいなさい」
「あーい」