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「行くのか?」

 背後から声がかかる。

 男が振り返ると、そこには『人間』がいた。男にも見え、女にも見え、子供にも見え、大人にも見え、善人にも見え、悪人にも見える。それ故に『人間』。そうとしか形容できない珍妙な存在。

「俺を止めに来たのか?」

「止める? どうして? 理由が見当たらないが?」

 それを聞き、男は顔をしかめた。

「本気――いや、正気か?」

「奇怪な事を。私が正気を失うはずないだろう?」

 対し、『人間』は自然体という形容が極めて適当だろう調子で言った。

「だが、一応努力しているところを見せねばな」

『人間』はそう言って、一度咳払いしてから続ける。

「――お前の覚悟は買い、だからこそ予め言っておく。お前がやろうとしている事は、私の戦場に立ち、私の目的を阻む事だ。故にお前が行動する場合、私はこれまでもそうしてきた様に、全身全霊を以ってお前の好きな様にさせない。お前だからとは言え、加減もしなければ、手心も加えず、事前に策も講じてある。これらを知ってもらった上で、改めて言おう」

『人間』は一度区切り、そして言う。

「止める気は無いのだな?」

「答えるまでも無い」

 最後通牒――誰がどう聞いても、自然体極まりない『人間』の口調で言ったとしてもそう聞こえる問いかけに、男は即座に返答した。

 そんな男を見て、『人間』は右手で前方を示した。

「では、精々精進してみる事だ。さすれば、この身を傷つけられるかもしれん」

「傷つけてやるさ。それも行動原理の一つだからな」

「ほう。それは非常に興味深い」

 それを聞いて、『人間』は至極楽しげに言い、手を振った。

「ならば、期待して待つとしよう。ではな、親友」

 それに対し、男は振り返らず、しかし手は振って答える。

「じゃあな、親友。眠って果報を待っているんだな」

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