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お前かぁ

作者: しゅうきち
掲載日:2026/11/03

還暦過ぎの純三は、夕飯のカレーを作り終えそうになっていた。

なにか小説を書くネタないかな、と思いつつカレーのトロミが出るように

かき混ぜていると、家の電話が鳴った。


ナンバーディスプレイに表示されている番号は、携帯らしい。

見覚えない番号だが、とにかく受話器をとる純三だ。


「もしもし」そう言うが、近頃、物騒なので名乗らずにいると、

「もしもし、私です」こもった女の声がする。

「あの〜、どなたですか」 

純三は、変な女がかけてきたのか、と警戒する。

「もしもし、私です」と繰り返す女。

この声、聞いた事ある様な気もしたが、特定は出来ない。


「誰よ。◯◯さんか」

予測不能な行動をする、親戚の従姉妹の名を言ってみる。

「もしもし、皆さんお元気ですか。久しぶりに電話しました」

「なんとかやってます。◯◯さんもお変わりないですか」

「もしもし、私です」


怪しい女だ。純三は、いっそ切ってしまおうか、と思っていると、

「もしもし、私です」と同じ事を言う。

ーー誰よ。純三は、こいつ誰なんだ、と頭の中でぐるぐる思い巡らせ、

「お前かぁ!」思わず、怒った様な声をあげる。


「そうです。私です。たまには電話しろってラインされたんで」

「元気か」

「なんとかやってます」

「そっか。年末、帰ってこれそうか」

「できたら」


電話をかけてきたのは、東京で暮らす一人娘だった。

読んで頂きありがとうございます

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― 新着の感想 ―
 しゅうきちさん、こんにちは。 「お前かぁ」拝読致しました。  ネタ探し、大事。  どこに落ちているのか分かりませんし、急に降ってくる場合もありますので。  知らない番号。怪しさしかないけど、出…
見知らぬ番号と「私です」の連発に、すっかり特殊詐欺か変な勧誘かと身構えてしまいました! 「お前かぁ!」と分かった瞬間の脱力感と、そこから続くぶっきらぼうだけど温かい親子の会話に、思わずクスッと笑ってし…
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