表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
限界OL、前世で私を殺した最強の大魔法使いに執着されてます。~生き残るためと言い張って毎晩溺愛してくるお陰で完全復活~  作者: カクナノゾミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/95

第67話:「あの日の真実を、聞いてくれるか」(第67話2章完結)

 日曜の午後。


 エリオットが真相の断片を語った後、二人はしばらく無言で座っていた。

 六畳一間の窓から、池袋の空が見えている。雲一つない、澄んだ青空。


 私は、自分の手のひらを見つめていた。


 前世の全てが、書き換わっていく。

 あの処刑台の記憶。恐怖と裏切りの記憶。それが、全く違う意味を帯びていく。


 殺されたのではなかった。

 守られていた。ずっと。この男に。


「……ねえ」


「何だ」


「あんたさ、その……永い間、ずっと一人だったんでしょ」


 エリオットが、微かに目を伏せた。


「私を殺した……いや、送り出した後。ずっと一人で、私の魂を探してたんでしょ」


「……そうだ」


「途方もない時間、ずっと?」


「ずっと、だ」


 私の胸が、きゅっと痛んだ。


 永い永い、途方もない時間を、たった一人で。誰にも真相を語れず、「カレンシュを殺した男」として。

 魂を追い続け、次元の壁を越え、魔力も体力もゼロの状態で現代に飛び込んで。

 そしてここに、辿り着いた。


「あんたってさ」


「何だ」


「本当に、バカだよね」


「……よく言われる」


「誰に」


「るんすけに」


 足元で、るんすけが同意するように電子音を鳴らした。


 § § §


 夕方。

 エリオットは回復のために横になり、私は台所で夕食を作っていた。


 鍋の残りの出汁でうどんを煮ている。エリオットの真似をして、ネギを丁寧に刻んでみた。不揃いだけど、前の自分よりはマシだ。


 その時、スマホが鳴った。


 着信。知らない番号ではない。プロジェクトの緊急連絡用回線。


 出た。


「小松さん。朝倉です。休日に申し訳ない」


「座長、お疲れ様です」


「白峰さんの件で、緊急の動きがありました。詳細は月曜日にお伝えしますが、あなたの潔白は正式に確定しました。公安からの重要参考人指定も解除されます」


 肩の力が、すとんと抜けた。


「……ありがとうございます」


「お礼を言うのは私の方です。プロジェクトをあなたが守ってくれた。月曜日、改めてチーム全体で今後の方針を議論します。……小松さん、あなたには物流セクションの主任を正式にお任せしたいと考えています」


 主任。WAGEプロジェクトの主任。


「……はい。全力で務めます」


 電話を切った。

 台所に立ったまま、しばらく動けなかった。


 無実が証明された。白峰さんの罠は完全に解体された。

 そして、新しい役職。新しい責任。


 うどんが噴きこぼれそうになって、慌てて火を弱めた。


 § § §


 夕食後。

 エリオットが起き上がり、テーブルについた。うどんを食べている。


「……このうどん、君が作ったのか」


「そうだよ。出汁は鍋の残り。文句ある?」


「ない。美味しい」


「嘘つけ。ネギの切り方が不揃いだってバレてるよ」


「不揃いなネギにも味がある」


 何言ってんの。


 食べ終わって、食器を片付けた。

 ソファに並んで座って、テレビをぼんやり見ている。いつもの夜。


 ふと、エリオットが口を開いた。


「奈々」


「ん?」


「いつか、全てを話す。あの日の全てを。……聖女の呪縛が完全に解ける日が来たら」


「うん。知ってる。待ってるよ」


「逃げないでくれ」


 私は、エリオットの方を見た。

 蒼い目が、珍しく不安そうに揺れていた。


 ——あの男が、不安そうな顔をすることがあるなんて。


「逃げないよ」


 真っ直ぐに、言った。


「あんたが全部話してくれる日まで、ここにいる。ていうか、あんたの方こそ逃げないでね」


「逃げるわけがないだろう。永い時間をかけて辿り着いた場所から」


「……重い」


「重くて結構だ」


 ソファの上で、二人の距離がいつもより少しだけ近かった。


 スマホの画面が光った。着信ではない。プロジェクトの共有チャットに、月曜日の会議案内が届いている。


 新しい一週間が始まる。

 白峰さんはいなくなった。呪縛はまだ完全に解けていない。前世の真実も、まだ半分しか明かされていない。


 でも今は、隣にこの男がいる。

 命を削る代わりに、不揃いなネギのうどんを食べてくれる男。


「帰ったら、ちゃんと聞くから。逃げないでね」


 どちらが先に言ったかわからない。

 同じ言葉を、同時に口にしていた。


 二人とも、少しだけ笑った。


 全ての謎が明かされる最終章。その扉は、まだ閉じている。

 でも、鍵はもう二人の手の中にある。


 § § §


 To Be Continued……Act 3


 § § §


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

第67話で第2章、ここで完結です。


限界OLは、前世の因果と現代の陰謀を自力でひっくり返し、自分の価値を取り戻しました。そしてエリオットとの関係は、「恐怖と妥協」から「信頼と感謝」へ。


あの日の真実はまだ半分しか明かされていない。聖女の呪縛が完全に解ける日に、全てが語られる。


第67話3章、そして最終章へ。全ての謎の答えは、まだその先に。


フォロー・応援(♡)・★での評価が、次のページを開く力になります!

感想・コメントは全件お返事します。「第67話2章お疲れ様!」「続きが気になりすぎる」「不揃いなネギのうどんで泣いた」なんでも嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
少しずつ明かされている、過去の謎。 お弁当を作れる大魔法使いが、昔も今も変わらずに、カレンシュを、奈々を愛していることにほっとします。 続きも楽しみにしております!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ