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7 女神の力

 神女(かみんちゅ)たちは逃げようとしたが、皆あまりのことに腰が抜けてその場から動くことができない。彼女たちを守るように兵士たちが前に出るが、初めて対峙する魔物を前に剣を持つ手が震える。

 怯える体を叱咤し、近づいてくる魔物に剣を振り上げた時、彼らの前にクグルが出てきた。


「っ!! お逃げください、神女(かみんちゅ)様」


 剣を振るのを止めて兵士が必死に叫ぶが、クグルは動こうとしない。魔物が迫る中、彼女は目を閉じてチヌユの教えを思い出した。




『いい、クグル。女神様の力は誰かを傷つけるためのものじゃない。守るための力なの』


 チヌユは初めて指導する際に自らの首飾りを触りながら、クグルに言った。


『平和なティーダでは使う機会はないかもしれないけれどね。それでも誰かを守るためにいつでも扱えるようになりなさい』




 兵士の前に出たクグルは彼女を攻撃しようと角を振る魔物に向かって手をかざした。

 すると、彼女の首飾りが光り、兵士や神女(かみんちゅ)たちを包んだ。牛の魔物は構うことなく突撃したが、光に阻まれて大きく空を舞った。


 その光景を見て驚愕するが、急に立ち止まれない魔物は同じように光に当たると、一匹、また一匹と弾き飛ばされた。地面に打ち付けられた魔物は痛みでなかなか立ち上がれないようで転がり込んだままだ。

 魔物を追いかけてきた兵士が呆けた顔をしたが、すぐに自分のすべきことを思い出し、止めを刺していく。


 しばらくすると、全ての魔物が兵士によって倒された。周りに他の敵がいないことを確認したクグルは光を収める。


 女神の力とは、盾の役割を持つ光を出して自分を、そして誰かを守るものだった。

 首飾りを受け賜わったからといってすぐに出来るようになったわけではなく、習得するまで数年かかった。


 魔物が出現した時点で力を使うべきだったかと思ったが、まだチヌユのように自在に使いこなせず、また未熟なクグルではどれだけ力を保つことが出来るのかわからなかったために危険を確認してからでないと使えなかったのだ。

 怪我をした兵士には申し訳ないが、他は守ることが出来てよかったとクグルは胸を撫で下ろした。




 光を発現させたクグルが、彼らの尊敬するチヌユと重なる。

 女神の力を受け賜わったというのは本当のことだったのだとその場にいた者は思った。彼女のことを疑っていたわけではないのだが、いざ自らの目でその力を目の当たりにしたことで訝しんでいた過去の自分を各々が恥じた。


 そして、自分たちを守るために魔物を前にしても恐れずに立つクグルの堂々とした姿に、女神が彼女を選んだ理由を正しく理解した。




 この出来事はあの場にいた者たちによって伝わっていき、すぐに皆が知るところとなり、いつしか、チヌユの跡を継ぐのはクグルだと言われるようになっていった。

 だが、本人だけがそれを頑なに否定したのだった。


 そんな謙虚な姿を見て、やはり彼女こそが相応しいと噂は益々広がっていき、やがて王の耳にも入ることになった。








次の話は8月25日の12時に投稿予定なので注意してください。

楽しんでいただけたならば、幸いです。

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