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5 ユナの街を離れて

 家族に神女(かみんちゅ)になることを伝えると最初は困惑していたが、すぐにクグルが決めたことならと賛成してくれた。家の手伝いや弟妹の面倒を見られないことに申し訳なく思っていると母は、クグルは今までよくやってくれていたので、今度は自分のために頑張りなさいと抱きしめてくれた。


 零れそうになる涙を抑え、抱きしめ返すと絶対に時間を作って帰って来るようにするとクグルは心に誓った。




 クグルはスイムイ城の近くにある神女(かみんちゅ)たちの住居へと移ったのだが、そこでは皆、困惑の瞳で彼女を見ていた。

 神女(かみんちゅ)というのは決まった家からのみ受け継がれる役職である。クグルのように一般家庭から選ばれることもあるのだが、大変稀なことだ。彼女が好奇の目にさらされるのは当然のことだろう。


 チヌユも一般家庭出身だが、彼女は幼い頃から女神と意思疎通が出来ていたと言われており、それもあってすぐに両親と離されて神女(かみんちゅ)となったことは皆が知るところである。


 対して成人間近の年齢であるクグルが同じ能力を持っているため選ばれたと言われたところで、何故チヌユのように幼い頃に発現しなかったのか、突然力を得るなどあり得るのだろうかと彼女たち、神女(かみんちゅ)が戸惑うのは当たり前だ。


 また、神女(かみんちゅ)は位が高く、女性ならば誰もが憧れる職業である。

 なので、神女(かみんちゅ)になりたくて嘘を言っているのではないかと言う者もいた。


 そして神女(かみんちゅ)たちが尊敬するチヌユの教えをクグルだけが直接受けているとしての妬みもあった。チヌユの指導が、彼女たちが考えるものと違って厳しいものだったのだが、それを知るのもクグルただ一人だ。


 慣れない環境に訝しむ周りの目など大変なことばかりだった。

 だが、クグルは決して諦めなかった。

 色々言われることはわかっていたことだ。それでも自分を見守ってくれた女神に仕えたいと神女(かみんちゅ)なると決めたのは自分自身であり、それを投げ出したくないとクグルは必死に学び続けた。数年もすれば他の神女(かみんちゅ)たちと比べても遜色ないほどのものを身に着けるまでになり、今では国の重要な神事にも参加するまでになった。




 ティーダ王国には御嶽(うたき)と呼ばれる聖域がある。村を作り守護神となった祖霊神が祀られる場所をなどいうこともあるが、神女(かみんちゅ)のいう御嶽(うたき)とは神が鎮座する聖なる場所のことをいう。そこは、神女(かみんちゅ)以外立ち入ることが許されず、神事の際に祈りを捧げるために訪れる必要あるのだ。


 クグルたち神女(かみんちゅ)は神事のためにスイムイ城のあるユナの街を離れ、遠くになる御嶽(うたき)へと向かっていた。神事を執り行っているのだと民に知らせるために徒歩でだ。

 ティーダに現れる魔物は弱いとはいえ、戦闘能力を持たない彼女たちが襲われでもしたら大変なことになることはわかっているので、城の兵士も護衛として同行している。


 チヌユは年齢による体のこともあり、地方で行う神事には参加していない。少し心細いが、気持ちを切り替えてクグルは前を向いて歩く。









明日も12時投稿予定です。

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