2 贈り物
連続投稿三話目です。前の話を読んでいない方は注意してください。
目を閉じると辺りは光に満ちていた。
見慣れた光景にクグルは、自分は夢の中にいるのだと理解した。前方に光が集まり人の形になる。クグルは臆することなく声を掛けた。
「お久しぶりですね」
――ええ。出会ったときはあんなに小さかった貴方が、もうこんなに大きくなったのね
慈愛が込められた彼女のその言葉にクグルは胸が温かくなるのを感じる。
クグルが幼い頃は毎夜彼女と話していたものだが、最近は会う頻度が減っていた。なので、子供の自分が作った幻だったのだろうかと思ったこともあった。
だが、こうして、再び会った彼女は確かに実在しているのだと確信することが出来た。
――大きくなった貴方に贈り物があるの。どう扱えばいいのかは、あの子が教えてくれるわ
「贈り物? 何故、私に?」
クグルの疑問に声の女性は頷くだけで何も答えなかった。顔は見えないが、いたずらな笑みをしているのがわかる。
常に優しくて寛容な彼女には、子供のような無邪気な一面があることを知っているので、深くは追及せず礼を言った。
「ありがとうございます。大切にしますね」
――受け取ったら、忙しくなると思うわ
その言葉に首を傾げていると彼女の姿が揺らめき、ぼやけてきた。目が覚める前兆だ。
――頑張ってね。落ち着いたら、また会いましょうね
閉じていた目を開くと太陽の眩しい光が窓から入ってくる。もう、朝なのだと背を伸ばす。
すると、自分の首に何かが掛かっているのが目に映った。それは、大きな貝殻と真珠で出来た美しい首飾りだ。
この国を作った女神は海からやって来たとされることから、貝殻や真珠は女神の祝福だと言われている。恋人などの大切な人にそれらを使った装飾品を贈るのが、ティーダの伝統であり、この国に住む全ての女性はいつか愛する男性から贈られたいと願っているといっても過言ではなく、クグルもその一人だ。
だが、彼女にはそれを誰かから受け取った覚えはない。ましてや、身に着けたまま寝るなどあり得ない。
それにこの首飾りには普通の物ではない不思議な雰囲気がある。まるで、あの声の女性のような清らかでどこか懐かしい感じがする。
そこで、ふっと夢の中での会話を思い出した。
「もしかして、贈り物ってこれのことなの」
首飾りを触っていると家の外が騒がしくなっているのに気が付いた。贈り物は外さずに素早く身支度を整え、声がする方に向かうと両親と城の兵士、そして神女と呼ばれる白い着物の女性が立っているのが見えた。
何故彼らがここに来たのだろうとクグルが疑問に思っていると、神女の女性がこちらの方へと顔を向けた。
目が合ってしまったので軽く会釈をすると、彼女がゆっくりと歩いてきた。戸惑うクグルの側まで来ると彼女は微笑み、手を差し出した。
「お迎えに上がりました。共に行きましょう、クグル様」
初めましての方、いつも私の別の作品を応援してくれている方もここまで読んでいただけてありがとうございます。明日からは12時に1話投稿で頑張りますのでお願いします。
あらすじの方にも書きましたが、この話は『自由になりたい冒険家は世界を見たい』という作品に出てきたクグルが主役になります。読んでなくともこの作品だけでわかるようにしていますが、興味のある方はこちらも是非読んでいただければと思います。
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