13 妹の恋人
ハリユンの告白から数日が経ったある日、クグルの元に妹であるカムンの手紙が届いた。その中には恋人が出来たので時間があるときにぜひ会ってほしいというものだった。
クグルが神女となったときには小さかった妹が、もうそんなに大きくなったのかと時の流れを感じる。
「…恋人」
思わず呟くと、不意にハリユンのことを思い出した。
自分が彼をどう思っているのかがハッキリとわからないクグルは今だ、返事が出来ていない。
あれからも彼は神社で二人っきりで会うこともあったが、彼はクグルを急かすようなことはせず、いつも通りの態度でいてくれた。
何もなかったかのような彼の振る舞いに、あれは夢だったのではと思うこともあるが、あの時、手から感じた熱が、クグルを見つめる瞳が忘れられず、現実だったのだと自覚させられる。
「私は、ハリユン様のこと、どう思ってるんだろう」
自分の気持ちなのによくわからず、もどかしい。
部屋の窓から見える空からは眩しいほどの太陽が見えているのに、クグルの心には暗く、重い雲がかかっているかのようだ。
休みを確認して妹に手紙を送るとすぐに会う日程が決まった。
忙しいクグルに気を使ってか、スイムイ城があるユナの街の茶屋で会うことになった。妹に久しぶりに会えるということもあり、彼女は軽い足取りで待ち合わせ場所へと向かう。
店に入ると妹はもう来ていたようで、クグルを見つけるとそっと手を振る。
カムンは一番下ということもあって引っ込み思案で控えめな性格だが、他人を思いやれる優しい子だった。クグルへと手を振る姿はクグルの記憶よりも成長しているのに小さい頃と変わらない仕草に懐かしさがこみ上げる。
「久しぶり、カムン。元気だった?」
クグルが声を掛けるとカムンは花が咲いたような笑みを見せた。
「うん、お姉ちゃんも元気そうでよかった」
微笑み返し、クグルは妹の向かいに座りながら、彼女の隣に座る男をちらっと見る。姉に会えたことで嬉しそうにしている彼女と違い、男はクグルを見てニヤニヤしている。
その人を嘗め回すかのような視線は不愉快極まりないが、カムンの手前なので我慢をした。
「紹介するね、彼が手紙にあった私の恋人の」
「いやぁ、お前の姉さんがクグル様って本当だったんだな」
男はカムンの言葉を遮り、下卑た笑いを抑えることなくクグルに話しかけてきた。
「遠目で見た時に美人だなと思ってたけど、間近で見るとより一層綺麗だな。お前と違って」
カムンを指さし、彼女を見下したように男はゲラゲラと笑う。その言葉はカムンにとっても衝撃的だったのか、目を丸くして男を見ている。
可愛い妹をバカにした態度にクグルは冷たい目をするだが、男は気づくことなく続けた。
「クグル様、今付き合ってる男っています?
あ、いるわけないか。神女って女ばっかりで出会いなんかないですもんね」
クグルは返事をせず口を閉じている。彼はそのクグルの姿に男に免疫がないので照れて何も言えないのだと都合のいい勘違いをした。




